1559
「待たせたな! 少々手間取ったが、これからお前に戦いというものを教えてやる。戦いは個人の技も重要だが、それ以上に装備が重要だ。事前の準備に勝るものは無い!!」
「言っている事は間違ってないんだが、プレートアーマー程度でそれを言うのはどうなんだ? それと、ちゃんと剣を振れるんだろうな。ヘッピリ腰の相手なんてしたくもないぞ」
「何だと、キサマ!! 武人の家系であるヴォンデオ侯爵家の者として、毎日体を動かしておるわ!! キサマみたいな血に穢れる狩人どもとは違うのだ!!」
成る程、コイツそもそも狩人を見下しているタイプか。自分が食べている肉を狩っているのは誰だと思っているのやら。それに肉を食うという事は、その血に塗れた物を食べているって事なんだがな。
ヤシマの国の公卿や公家といい、どうしてこういう下らない考えを持つんだか。俺には意味が分からないが、血を穢れとする風習は割とあるから困る。どうしてかは知らないが、碌なもんじゃない。
「それでは両者構えて………最終試合、始め!!」
「ウォォォォォォーーーーッ!!!」
ロングソードを持って上段に振りかぶり、走って接近してくる。どうやら戦場の剣のようだが、悪い事ではない。大声をあげて相手を驚かせるのも立派な技だ。役に立たないと言う奴も居るが、それは間違いである。
ほんの僅かであっても相手の動きが鈍るのであれば、それだけで生存確率は上がるのだ。戦場に卑怯もクソも無い。生き残らなければ死ぬ場所で、お上品に技を使う阿呆などいない。そんな奴はあっさり死ぬ。
だからこそ間違ってはいないのだが、それは実力が伴っていればだ。走るのは遅いし、プレートアーマーな所為かは知らないが体の動かし方も悪い。総じて見れば、素人に毛の生えた奴という程度だ。
相手の攻撃を盾で捌きながらも、そんな詰まらない事を考えられるほど余裕がある。正直に言ってお手本を習いました、という剣筋でしかない。しかも、体の動かし方が非常に悪いので、それっぽいだけだ。
現在までそれっぽいのを続けてきたんだろう、そう考えると涙ぐましい努力ではある。意味は無いが。………さて、そろそろ飽きてきたんで、隙を見て一撃を加えておくか。振りかぶったな、今だ!。
「ガハッ!?」
今まで盾で防いだり流したりだけをしていたんだが、振りかぶった瞬間に脇腹を強打してやったら、必死に離れて悶絶してるよ。多少凹んだので思っているより衝撃があったんだろう、プルプル震えて我慢している。
「戦闘中であれば押し倒されて、隙間から短剣を突き入れられるぞ。さっさと向かってこい、近衛騎士団長なんだろ? まさか事務仕事しか出来ませんとは言わないよな」
「おのれ! 絶対に許さんぞ、キサマッ!! 死ねぇーーーっ!!!」
キレて勝てるなら誰も苦労しないっての。相手は突っ込んできたので盾で往なし、流れた体に棍棒を叩き込む。今度は逆の脇腹だったが、倒れた後に鎧の上から脇腹を押さえて悶絶している。アホかコイツは?。
脇腹を押さえて呻いている奴の頭を軽く殴りつけ、強制的に戦闘中だと自覚させる。慌てて転がり距離を取ってから起き上がるものの、脇腹が痛いのか元気が無い。先ほどまでは喚いていた癖に、直ぐコレかよ。
俺が無造作に接近すると相手は慌てて突いてくるが、そんなものは盾で逸らして終わりだ。突いた姿のまま逸れていく相手の体を見つつ、頭を殴りつけて再び衝撃を与える。
いい加減、そろそろ気づけよな。雑な攻撃は流されたりして終わるってな。
そう思っていたら持っている剣を捨て、腰に着けていた短い方の剣を抜いた。どうやらロングソードだから逸らされるという事に気付いたようだ。やっとかよ、バカバカしい。
とはいえ、正解でもあり間違いでもある。簡単に言うと、ロングソードに体が流されているから簡単に往なされてしまう。だからショートソードに変えるのは正しい。当たり前だ、使い熟せない武器を持つなんて論外だからな。
では何が間違いなのか? その答えは、何を持ったところでコイツの技量では意味が無いという事だ。体は鍛えているらしく、それなりに筋力はある。ただ絶望的なまでにスタミナが無い。既に息が上がっているぐらいだ。
更に言えば素人剣術でしかない為に、足運びも体重移動も重心移動も駄目で素人丸出し。何より全身で剣が振れていないのだから、その時点で話にならない。腕だけで剣を振るなんて防御重視の時ぐらいだぞ、普通は。
腕だけで振っても大したダメージにはならないし、何よりプレートアーマーや盾相手には弾かれて終わりだ。全身で振れない程度なのに、更に軽い剣にして威力を減らす。最早コイツが何をしたいのかよく分からない。
「という訳だ、理解したか? その足りない頭を叩きながら教えてやっているんだから、感謝しろよ?」
「お、おのれ………おのれ、キサマ!! よくも、ここまで私をコケにしたな! 絶対に許さんぞ!!!」
だーかーらー。キレて勝てるなら誰も苦労はしないっての。結局は魔法も使わず突っ込んで来るだけなんで、頭にフルスイングすると同時にコッソリ【衝気】を使って気絶させた。さーて、ここからスタートだ。
俺は直ぐさま試合場に居る審判に勝敗を訪ねると、近衛騎士団長の負けが決まった。俺は身体強化をして自分の席に戻り、白い枷を3つ出して近衛騎士団長の下に走る。その御蔭で、近衛騎士が来る前に嵌める事に成功した。
ガントレットやサバトンを外すのは特に難しくはない。所詮は外すだけだし、【念動】も併用したので直ぐに終わる。俺が白い枷を嵌めた事に対し、王と王妃と王太子に宰相が変な顔をしているけど放っておく。
ちなみに王女一行は遠い目をしているが、こっちも放っておこう。まだ終わっていない。時間が経ったので枷を外し、聖人にしてから離れる。近衛騎士は俺が枷を着けたにも関わらず、すぐに外したので怪訝な顔をしながら近付く。
近衛騎士団長を起こしてプレートアーマーを外していくが、兜を外して出てきた顔は悟りを開いたような顔だった。近衛騎士どもが唖然としているが、近衛騎士団長は王の前に跪くと謝罪を口にした。
自ら近衛騎士団長を辞めると言い出したが、俺が横から「心を入れ替えて国に命を懸けて尽くせ。それが責任の取り方だ」。そう言っておく。当然ウチの女性陣からはジト目を向けられるが、俺は気にしない。
聖人にやらせた方が良いに決まってるし、今のコイツなら絶対に下らない事をしないだろう。なら逃がすより扱き使った方が良いに決まってる。そんな話をすると、ウチの女性陣がこの場の者達に説明を始めた。
聞いている者達は段々と口元が引き攣っていき、最後には顔が青くなっている。問答無用で聖人にする道具。あまつさえ、それは神から与えられた物だ。つまり、反省しない者は聖人に変えてしまえという神からの命。
そんな物が冗談でも何でも無く実在するのだから、恐怖するしかない。いつ自分に使われるかと考えると怖くてしょうがないだろう。ついでに神殿の犯罪者は既に聖人にされたと聞くと、全員が遠い目をし始めた。
聖人になるって事は、品行方正で真面目になるって事だ。後はそれの使いどころを考えるだけでいい。それは上に立つ者が決める事。そう言って俺達は近衛の訓練場を後にする。暇潰しや余興にはなったが、その程度だったな。
そろそろ次の国に行く準備もしなきゃいけないし、王都で少しの間は情報収集するか。国境までなら今日中に集まりそうだが、その辺りは王都に戻ってからだな。そんな話をしながら王都の外壁に沿って歩く。
いちいち戻るのに手間が掛かるが仕方ない。歩いていると新人なのか、装備の乏しい奴等がビッグラビットやビッグラットを追いかけている。ほのぼのとした光景を横目に見ながら俺達は王都に戻った。
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1559終了時点
大白金貨101枚
白金貨498枚
大金貨1704枚
金貨2679枚
大銀貨1649枚
銀貨2439枚
大銅貨1559枚
銅貨50枚
神鉄の刀
神鉄の槍
神金のヴァジュラ
精霊木の浄化棍棒
精霊木石の浄化盾
氷擲竜の棒手裏剣
神金銀の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




