0014
<異世界6日目>
おはようございます。昨日の話をダナが覚えているのか確認しないといけない。酔って覚えてなくて、作っても要らないと言われたら作る意味が無い。
そんな事を考えながら、自分とダナの体と服を浄化した。夜の色々は【浄化】の権能を使い完璧に綺麗にしている。
肉体を完璧に綺麗にすると絶対に妊娠しない。ダナにも説明したが”今はこのまま二人で居たい”と言われた。
この世界では既に安心安全な避妊薬が存在する。300年ぐらい前に魔女族の天才が創ったらしく、今は薬師の所で簡単に買えるそうだ。
ちなみにこの薬、天才魔女が自分の為に創ったらしい。”望まぬ子供を作らない為に”という建前が有名なんだそうだが、当然の如く事実は違う。
天才に多いアレな人物で、”たくさんの男と楽しみたい”という理由で創ったというのが事実らしい。
大往生するまでに喰った男は3万を超えるなんていう逸話がある人物で、<伝説の魔女>と呼ばれてるそうだ。一度会って話を聞いてみたかった気もする。
そんな下らない事を考えていたからか、ダナが起きているのに気付かなかった。
「おはよう、アルド。こんなイイ女を放っておいて、考え事かい?」
「おはよう、ダナ。昨日の夜に話してた武器の事を考えてたんだよ」
「あぁ、あの話かい? アルドの武器は石のもそうだけど、品質が非常に高いんだ。魔鉄じゃないけど、普通の鋼であれほどの物は滅多にお目に掛かれないよ」
「身体強化に耐えられる武器として作ってるからね。……魔鉄なぁ、あれ使う意味があんまりないんだよなぁ……。もちろん優秀なんだけど」
「魔力や闘気に耐えられて優秀なんだけど、それならマナリア製の武器の方が断然いいからねぇ。いちいち目をつけられるから、昔持ってたマナリアのショートソードは売ったけど」
魔力の宿った金属、魔銅、魔鉄、魔銀、魔金。これらは長い年月マナに晒される事によって出来る物だ。この世の物質の多くは魔力や闘気を通す事で強化できる。
修復能力がある細胞、つまり肉体は修復される。ただし無機物などはオドや闘気で強く強化すると、使用後は劣化したままとなる。
その為、オドや闘気に耐性のある物でないと劣化して最後は壊れてしまう。俺もそうなんだが、魔力の多い者とは魔力に対する耐久力と修復能力が高い者を指す。
耐久力や修復能力が低い者が高魔力を持つと、当たり前だが自滅する。
普通の金属武器をオドや闘気で強化すると劣化するものの、切れ味や衝撃への耐久力などは一時的に向上する。とはいえ、品質のいい物なら強化せずに長く使った方がいい。
無理に魔力金属を使わなくても、戦う事は十二分に可能だ。
流石にマナリアやアダマンタイト、ヒヒイロカネやオリハルコンは桁が違う。魔力金属が数打ちのナマクラなら、希少金属は天下五剣と言えるぐらいに違う。
俺の場合【錬金術】で質を、【練成術】で形を強引に変えるという荒業で作り出している。魔力を繊細に扱えないと、当然ながら素材を劣化させてしまう方法だ。
ある意味で鍛冶師への冒涜と言えなくもないが、俺とか身近な人達だけならいいだろう。大量に売ったりしない限り彼らの生活を圧迫しないし。
「昨日見せてもらってた奴は凄かったからね。あれを見たら誰でも欲しくなるよ。だからヴェルの分も作ってやってくれないかい?」
「ヴェルさんって言うサブマスの事、知らないんだよなぁ」
「ヴェルはラミア族さ。ラミアは女しかいない種族でね、似た様な種族は他にも沢山居るよ。他の蛇系種族も合わせて蛇人族とも言われるけど」
「ラミア族? もしかして下半身が蛇の?」
「そうだよ。あの子には事務仕事ばかりさせてるんだ。強いんだけど、暴走する強さだからねぇ……」
「それは種族的な?」
「いーや、あの子の性格だよ。戦闘になるとテンションが異常に上がるタイプでね……まぁいわゆる戦闘狂と言う奴さ。そのせいでサブマス止まりだったんだけど、中央に申請してギルドマスターに上げる許可を待ってるんだよ。問題なく許可は下りるから心配しなくていいさ」
「問題ないのにサブマス止まりだったのか?」
「サブマスになると指揮する側だからね、本人が更に上のギルドマスターになるのを嫌がってアタシに押し付けてたのさ。ただ、アタシも不老長寿だって事で、今までなし崩しに続いていたんだ。それを正しい形にするだけで済む事なんだよ。あの子は武器に目がなくてね、作ってやれば絶対に黙るよ」
「なるほど。ダナと一緒にいる為なら喜んで作るよ」
「////。朝からそういう不意打ちはダメ。やるなら夜にしてくれないと。アタシ、我慢出来なくなっちゃうよ?」
「ゴメンゴメン、とりあえず服を着て食堂へ行こう」
ベッドを降りて二人の体の隅々まで浄化し服を着る。食堂へ行こうと部屋のドアを開けるとダナが腕を組んできた。
左腕にダナの胸の感触という幸せを感じながら食堂へ入ると、昨日と同じでニヤニヤした女将さんが居た。
「二人とも、おはよう。ダナさんは凄く満足そうね?」
「おはようございます」
「おはようトーカ、昨日も大満足だったよ。トーカも旦那さんに満足させて貰えばいいんじゃないかい?」
「ダナさん……。私も旦那も、それなりの歳なんですよ? 子供も町の宿で修行中ですし、旦那も若い頃の体力はありませんし」
昨日と同じく男が加われない会話を始めるダナと女将さん。俺は昨日と同じくそそくさとカウンター席に行き、従業員に二人分の注文をし大銅貨2枚を払っておく。
女性同士の明け透けな会話が、朝の宿の雰囲気をぶち壊しにしている事に気付いていないんだろうか?。
そう思っていても言えない俺。”君子危うきに近寄らず”という言葉もあるし、関わらないのが一番だ。水を出してもらい飲んでいるとダナがこっちにやってきた。
「ゴメンゴメン、つい話しが弾んでね。武器の話なんだけどさ、アタシのは昨日言った通りの物を頼める?」
「それは全く問題ないよ。ただ鉄をどこで買うか……」
「鉄かい? 鉄はガルドルの所へ行けばいいさ。アタシの名前を出せば売ってくれるよ。鉄の仕入先も分からないで、あの武器どうやって作ったんだい?」
「ここだけの話にして欲しいんだけど、武具屋で斧と鉈を買って鉄を分離して作ったんだよ」
「それは……ガルドルが聞いたら激怒するね。うん、アタシは何も聞かなかった」
「ヴェルさんの武器はどうする?」
「ヴェルのは、アタシのが出来てからだね。アタシの武器を見せれば喰いついてくるよ」
「なんか魚釣りみたいだな」
「簡単に釣れる魚だよ。簡単過ぎてつまらないくらいさ」
そんな話をしながら食事を終え、口内を浄化し昨日と同じ様にキスをする。なんか日課とか習慣にされそうだ。人前だと多少のダメージがあるんだが、ダナが嬉しそうなので……まぁいいか。
ギルド前で別れて鍛冶屋へ行く。朝の日差しを浴びながら散歩の気分で歩くと、村の中を歩く事を女将さんに勧められた事を思い出した。今頃か! と内心苦笑していたら鍛冶屋の前に到着だ。
「おはようございまーす、ガルドルさん居ますかー?」
「なんじゃい? ……ぬっ? お前さんか! 丸太はどこだ!?」
「いえ、今日は丸太じゃなくて鉄を売ってもらいに来たんですよ」
「鉄じゃと……なぜ鉄が要る?」
「傭兵ギルドのギルマスやってるダナさんから、武器を作ってほしいと頼まれまして」
「ほぅ、ダナの奴がな。……まぁよかろう中に入れ」
「お邪魔します」
鍛冶屋の中に入るとテーブルと椅子がある部屋があり、女性が一人と女の子が一人いたので挨拶するが、そのままズンズン歩いていくガルドルさんを追いかけて奥へ行く。
庭に出て倉庫の様な建物に入ると、すぐに話しかけられた。
「それで、どれくらい鉄が要るんじゃ?」
「ショ-トソード2本と短剣1本、それとバトルアックス1本分です」
「えらい多いのぅ……。売るのは構わぬが代わりに丸太を作ってくれんか?」
「なんでそこまで丸太が要るんです?」
「前にも言うたが炭を作る為だ。良い炭で良い鉄を作るのが鍛冶師の仕事だ」
「純度の高い鉄が欲しいなら、俺が作りましょうか?」
「なに!? ……そうか! 【錬金魔法】か!? 劣化させずに作れるのか!? 頼む良い鉄を作ってくれ、報酬は多めに払う!」
「報酬の代わりに、さっき言った鉄を俺にくれませんか?」
「それぐらいなら喜んでやるわ!」
言質は取ったので早速はじめる。【錬金魔法】の魔法陣を出すだけで発動させず誤魔化す。
【錬金術】の【融合】と【抽出】、そして【練成術】の【分離】や【圧縮】や【変形】を使い、鉄を5キロのインゴットにしていく。
ゴミが結構出たが、その中には錫や鉛にニッケルも有ったので、それも小分けにする。
「いやー、感謝する! これで打つ仕事に専念できる。そのインゴット4本もっていけ」
「ありがとうございます、頂いていきます」
ガルドルさんの家を後にし、雑貨屋へ行って薪と炭を大銅貨2枚分買いギルドへ向かう。今日は1日、村の中だろうな。
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0014終了時点
金貨4枚
大銀貨9枚
銀貨10枚
大銅貨12枚
銅貨3枚
鋼の短刀
鋼の鉈
鋼の槍
オーク革の鎧
革と鉄の肘防具
革と鉄の膝防具
革と鉄のブーツ