1495
「この馬鹿どもは横に置いといて、俺達の夕食を持って来てくれないか? とっくに出来てる筈だろ。いつまで待たせる気だ?」
そう言うと、妖艶な女将は慌てて厨房に取りに行った。どうも俺達の喧嘩を見ていただけで、それ以外の事はしていなかったらしい。威圧を放った辺りからこちらに釘付け状態だったって事か。
意外と言っては何だが、妖艶な見た目とは裏腹に度胸は持ち合わせていないみたいだ。こういう人物って過去に色々あって、ちょっとの事では動じないというイメージがあったんだが……。どうやらイメージだけのようだ。
運ばれてきた夕食を見ながら、アディアムとかいう奴も近くに座らせる。少しコイツに聞いておかなきゃいけない事があるし。
「別に取って喰おうって訳でもないんだから緊張しなくていい。それより幽人族として随分念力が強いようだが、それは努力の結果か? それとも血筋か? ……多分だけどお前さん、シャディアンの子孫だろ」
「あ、ああ……。俺は大英雄シャディアン様の子孫で、王家三男のアディアム。それよりも、アンタはいったい何者なんだ? 俺は1度たりとも【念術】で負けた事なんて無い。にも関わらず、アンタには手も足も出なかった……」
「俺が何者かは横に置いとくとして、俺の念力の2割ぐらいはあるんだから自信持っていいぞ? 最初に会った頃のディルなんて1割も無かったしな。それに比べれば余程強いと言えるんだから胸を張ると良い」
「………いや、ディルという奴が誰かは知らないが、アンタの2割程度の念力しかないのか俺は。そりゃどうやったって勝てないじゃないか。それに……随分手加減されてたんだな、さっきのは」
「まあな。素人相手に本気でやるのもどうかと思うし。それに、さっきも言ったが俺の2割なんだから誇っていいぞ? 不老長寿であり、散々鍛えられた俺の2割なんだからな」
「は!? ……ふろ…う……長寿!! 不老長寿って本当か!? アンタがシャディアン様と同じ不老長寿だったとはな!! どうりで手も足も出ない筈だ!」
「別に不老長寿かどうかと、俺とお前の強さは関係無いと思うがな。まあ、それはともかくとして、王家の三男とか面倒臭い立場の奴だったとは。とはいえ、コイツが俺達を面倒臭い事に巻き込む訳じゃないか。こんなトコに居るくらいだし」
「こんなトコって……ああ、治安の悪い所に王族の俺が居るって事か。ウチの国じゃ、王太子殿下以外は全員外に出されるんだよ。そして王太子に選ばれるのは最初に生まれた幽人族の男子だ。これはシャディアン様が男性だったからだな」
「ふーん。それはそうと、お前さんも食事ぐらいしたらどうだ? 夕食を食べたようには見えないし、まだ何だろ?」
そう言うと、アディアムという奴は女将さんに大銅貨2枚を渡して注文していた。どうやら沢山食べる奴らしいが、食べ過ぎてもよくないぞ? まあ体格はかなり良いので、それだけ栄養が要るのかね?。
「さっきの話の続きだが、俺は三男だから外に出る事が決まってたんで必死に修行したんだよ。シャディアン様への憧れもあったしな。その結果、顔から上半身に紋様が移動したんだ。親父達も喜んでくれたんだが、それで居辛くなってな」
「ああ。王太子より相応しいってなったら、内戦になりかねないからなぁ。ディルの里と違って、ちゃんとした修行法が残っていたら紋様が移動するような奴も現れるか。それでも相当才能に恵まれてないと、移動しないとは思うけど」
「そうだな。私もアルドに習ってある程度経ってからだった。紋様が上半身に移動したのは。それまでは【念術】の使い方も知らなかったのだから、仕方ないとは言えるのだが……」
「アンタがディルと呼ばれている人か? まさか俺と同じように、上半身に紋様が移動した奴が他にも居るなんてな。こんな事はシャディアン様以来という事で、城じゃ大層驚かれてな。それもあって居辛くなったんだよ」
「しかし大英雄シャディアンっていうのが、幽人族の不老長寿だったとは知らなかった。しかも王族って事は、ここで国を興したって事だよな? ムルヴァントといい、何が不老長寿を駆り立てるんだろうねえ。不思議で仕方がない」
「我々のような不老長寿の方がおそらく普通なのだと思うが、彼等の場合はそうせざるを得なかったのではないか? ここは食糧事情が厳しそうだし、ムルは前の国が腐敗し切っていたそうだしな」
俺達が話している事が理解できないものの、気になったようなので教えてやる。東の方に別の大陸があるという事に驚き、俺達が不老長寿という事で仰天した。一応面倒なので、蓮に関しては何も言っていない。
不老長寿ではないと否定していないが、肯定もしていないという状態だ。1人だけ仲間外れというのもどうかと思うしな。特に子供相手にはするべきじゃないだろう。蓮も不老長寿なら簡単に説明できるんだが……。
『そういえば伝えていませんでしたね。その白狼族の子供は、既に知神の加護を得て不老長寿になっていますよ。そもそも眼の色を見れば分かるでしょう。分からないなら、貴方の頭が悪いだけです』
急に【念話】をしてきたうえ、何故か罵倒されたんだが? そもそも眼の色だけで不老長寿かどうかが確定する訳じゃないと思うんだけど、俺がおかしいのか? 見たら分かるだろうと言われても………なぁ。
「まさか東にある海というものの向こうに大陸があるとは……。この国じゃあ湖はあるんだが、海なんてものは見た事も無いから分からないな。塩辛い水って言われても、王都の北にある湖は塩辛いし……」
「は? ……それが海なんじゃないのかい? でも湖って言ってるって事は、おそらくはぐるっと回って来れるんだろうけどさ、塩辛い湖なんて聞いた事は無いよ。……アルドは何か知ってそうだね?」
「大昔に海だった所が干上がって大地になり、そこに取り残されたのが岩塩だ。ただ、岩塩が採れる場所が湖になる事もある。それが塩湖と呼ばれる塩の湖だ。おそらく王都の北にあるっていうのも塩湖なんだろう」
「「「「「「「「「へぇ~……」」」」」」」」」
「「そうなんだー……」」
「女性陣や子供達は分かるんだが、何でお前さんまで感心してるんだよ。それぐらい国なんだから解明してるだろ。俺から聞かなくても、子供の頃に聞いたんじゃないのか?」
「いや、塩の湖の出来方なんて誰も知らないし、学者連中だって分かってない筈だぞ。言われれば成る程と思ったが、言われるまでそんな事は考えた事も無かった。塩辛い飲めない水の湖って感じだな。塩は採れるけど」
「まあ、塩が採れるだけで十分だろうけどな。東のフェイマットはともかく、その南西のジューディムは慢性的な塩不足だからさ。そこに比べれば塩湖があるだけマシだ。塩は確保できるし」
「慢性的な塩不足ねえ……。ウチの国じゃ塩不足なんて聞いた事も無いからなー、ちょっと想像がつかない。多分だけど味気ない食事を食ってるんだとは思う。狩王国がそうじゃなくて良かったってぐらいか」
「一応説明しておいてやるが、塩が少なすぎると人間種は死ぬからな。何ていう病気名かまでは忘れたが、塩分不足は死に至るから注意しろよ? ちなみに摂り過ぎても病気になって死ぬぞ」
「どっちも駄目なのかよ……。もうちょっと分かりやすくしてほしいもんだ。どれくらいが良いのか分かんねえよ」
「今まで問題無かったのなら、今までのままで良いって事だ。少なすぎても、多すぎても駄目だと覚えておけば良いだけさ。……さて、食事も終わってるし、俺達は部屋に戻る。何処に泊まってるか知らないが、お前さんも宿に帰れよ」
「俺もここだよ!」
「そうだったのか、そりゃすまん」
そう言って、俺達は2階の部屋に戻った。それにしても幽人族の王族ねえ……獣人や人間よりは長生きするけど、念力と紋様以外には特徴の無い種族だぞ。精神系の【念術】は使えないっぽいし、単なる血筋的なものだけか。
念神もディルの時と違って何も言って来ないし、特に何かする必要は無さそうだ。
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王角竜の脛当
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真っ黒なズボン
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