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 黄パンに対して【浄化】の権能を使うも、酸っぱさに対しては何の効果も無かった。この酸っぱさの元は成分的なものであって、やはり毒物とかでは無いらしい。こういうのは体に良いと相場は決まっているのだが、せめて酸っぱさがどうにかできれば……。


 【冷却】して冷たくしても駄目。【加熱】で暖めても駄目。特に温めたのは更に酷い結果になった。どうしたものかと思案するものの、今の所はどうにもならない。【浄化】の権能で駄目だという事は、【清潔】でも【聖潔】でも駄目だという事だ。


 結局、我慢して食べたら店を後にする。ここは向こうの大陸に比べて北方に位置するから仕方ないんだろうけど、あの酸っぱいパンをずっと食べさせられるのは拷問でしかない。あんなに酸っぱいとは思わなかった。あれが<都会のパン>かぁ……。


 どうしたもんかと思うが、何とか出来るのなら、とっくに何とかしているだろう。それが出来てないって事は、やっぱり難しいんだろうなぁ。俺もちょっと思いつかないが、あの酸っぱさを料理に利用するぐらいしか思いつかないな。酢の代わりに使うとか?。


 それは俺が考える事じゃないだろうが、小麦が高い地域に入っていくと必然的に寒い所で育つ麦になる。それで作ったパンや粥が主体になるんだろうが、あの酸っぱさだからな、粥にしたらもっと酷い事になるのは確定だろう。


 宿に戻りながら子供達と話し、どうしたら酸っぱさをマシに出来るか考えている。エリアも割と真剣に悩んでいて、何とかしたいのがよく分かる。それにしても尋常じゃない酸っぱさだったが、あれでもマシってどういう事だと言いたくなるな。


 部屋に戻り【冷風】を使って冷やしながら話を続ける。過去に黄パンを食べてきたフォルやリューから、今までにやって駄目だった事を聞きながら解決法を探っていく。セン麦からなら何とかなるかもしれないが、完成した黄パンに手を加えるのは難しい。


 とはいえ、毎回アレを出されるとダルダン聖国より厳しいと言わざるを得ないんだよ。子供達も厳しいと言っているし、早急に何とかしないとなー。まずは黄パンを買ってくるか。そうしないと始まらない。俺は子供達と共に買い物に出掛ける事にした。


 周囲の人に食料店の場所を聞きながら歩いていき、中に入って色々見て回る。子供達はマンゴーに似たビワであるビレンを買っている。俺も銀貨3枚分買い、後はセン麦を銀貨1枚分に黄パンを大銅貨1枚分買って出た。


 黄パンは1個で銅貨1枚だった。結構な大きさなのだが、これで銅貨1枚は安いと言わざるを得ない。だからこそ都会の庶民が買うんだろうし、飢えるよりはマシだと言って食べるんだろう。同じ大きさのパンは田舎でも買えないな。


 田舎のパンは小麦の全粒粉で出来ているから当然なんだけど、田舎はそれ以外が安いからな。結果的に食事代としては然程変わらない結果になるか、都会の方が高くなる。黄パンがメインなのにも関わらずだ。こりゃあ、厳しい。


 部屋に戻り、子供達がビレンを冷やして食べている横で、黄パンを千切って少し食べる。やはり口の中がキューッとするほど酸っぱい。これをどうにかしなきゃいけない訳だが、とりあえず魔豊蜂のハチミツを付けて食べてみよう。


 ………皆が「勿体ない」という顔をしているが、これを食べなきゃいけない事を考えたら贅沢は言っていられない。とはいえ、やはり酸っぱい事に変わりはないな。これは駄目だ。次はチーズを溶かして付けてみよう。蓮の視線が気になるがスルーして食べる。


 ………これも駄目だな。もしかしたらゴブリン肉よりも手強いかもしれないぞ。本腰を入れて研究しなきゃいけないかもしれない。とりあえず、次は揚げてみよう。ここは思い切って方向転換だ。鍋を取り出して、竜の脂で揚げていく。


 周囲に暴力的な匂いを撒き散らしながら揚げていき、揚げ終わった物を一口食べる。酸っぱさが完全に無くなり、竜の脂の旨味しか感じない。凄く美味しいが、よくよく考えたら食堂でこんな事は出来ないな。よって、これも却下だ。


 他には何が……アイテムバッグの中の物を色々確認しながら試すも、やはり酸っぱさが厳しすぎて上手くいかない。何度も試して失敗し、破れかぶれでアルダ酢を塗って食べたら、酸味が大分少なくなっていて普通に食べられた。


 何故かは分からないが、アルダの風味は感じるものの酸っぱさは十分耐えられる状態になっている。どういう事? 何で酸っぱいものに酢を合わせると酸味が減るんだよ? ……俺が動かないので皆が声を掛けてきたが、俺はアルダ酢で酸味が減った事を伝える。


 皆は半信半疑だが、蓮が食べたいと言ったので食べさせた。一口目は恐る恐るという感じだったが、一口食べた後は普通に食べている。他の酢は分からないが、少なくともアルダ酢はそれなりに軽減してくれるらしい。これって生地の段階からの方が良いのかね?。


 そんな事を話しながら皆に試させる。すると、皆も問題無いのが分かったんだろう、その後は普通に食べている。実は季節外れのアルダも食料店には売っていた。邪気で多少汚れていたので綺麗にしたが、アレはダンジョン産だろう。


 つまりダンジョンからアルダが手に入るのだから、酸っぱいパンは解消できる筈だ。俺は食料店に行きアルダを銀貨1枚分購入した後、部屋に戻ってメルにパンを焼いてもらう。俺がやってもいいが、メルの方がパンを焼くのは慣れているからな。


 セン麦の全粒粉と小麦の全粒粉を混ぜて、そこにアルダの絞り汁と【粉砕】した果肉部分を入れて練っていく。俺の予想が正しければ、多分酸味を減らしているのはアルダそのもので、アルダ酢では無いと思う。何が作用しているのかは分からないが。


 メルが焼いてくれたパンを最初に俺が食べる。セン麦と小麦の全粒粉の割合は半々だ。つまり、これ以上混ぜたら酸っぱすぎて食べられないギリギリまで入れてある。皆が見ているし、そろそろ食べよう。いざ!。


 ………うん、普通に食える。特に問題無いな。


 驚くほど普通に食べられるというか、酸っぱさが欠片も無い。やはりアルダが作用しているのであって、アルダ”酢”である必要は無かったな。皆にも説明して食べさせる。すると、何の問題も無く食べる事が出来た。



 「アルダの匂いと味がして美味しいね! れんね、このパンの方が好き! 凄く良い匂いがして美味しいけど、ふわふわのパンならもっと美味しいと思う」


 「流石にそれは無理じゃないかな? セン麦っていうのはグルテン? とかいう物が少ないから柔らかくならないってアルドさんが言ってたし。硬くても噛んでるとアルダの味が出てくるから、ボクはこれでいいと思うよ」


 「これが黄パンだなんて……私が子供の頃から、ひいては諜報部隊の頃も食べていたアレはいったい何だったのか……。アルダが無ければ無理だとしても、アルダが採れる風の季節には美味しいパンが食べられた筈」


 「僕も同じだよ。何であの酸っぱい黄パンがこうなるのさ……。いや、おかしいよ。僕達は子供の頃から必死に我慢して食べてきたんだ。なのに、1日であっさり無くすなんて……」


 「言いたい事は分からなくもないんだが、それを俺に言われても困る。どうにか出来ないかと努力しなかったから見つけられなかったんだろ? ゴブリンの事もそうだ。誰かがやってくれるのを待ってちゃ駄目だって事だろうな」


 「「………」」


 「メル~。これを入れてパンを焼いて!」


 「あら、ビレンを入れてパンを焼くの? ……ああ、ビレンを入れてどうなるかを試したいのね。じゃあ、一緒にパンを作りましょうか? イデアも」


 「うん!」 「分かりました」



 俺は再びセン麦と小麦の全粒粉を作り、そこに【粉砕】したビレンを入れる。捏ねて生地を作り、寝かせた後で焼いていく。【熟成】を使っているものの、通常の生地を寝かせる程度にしか熟成していない。


 焼けたビレンパンを食べてみるが、普通に酸っぱくなく食べられた。どうなってるんだ、このセン麦ってヤツは? 果実を混ぜると酸っぱく無いって、訳が分からない。フォルとリューは相変わらず複雑そうな顔で食べているなぁ、仕方ないんだろうけどさ。


 そろそろ諦めてほしい。



 ▽▽▽▽▽


 1450終了時点


 大白金貨64枚

 白金貨374枚

 大金貨1643枚

 金貨2434枚

 大銀貨1608枚

 銀貨2306枚

 大銅貨2209枚

 銅貨165枚


 神金のヴァジュラ

 神石の直刀

 神木の浄化棍棒

 神木の杵

 神木石の錫杖

 神木の浄化盾

 氷擲竜の棒手裏剣

 神石の勾玉

 王角竜の帽子

 王角竜の革鎧

 大海竜の半篭手

 真っ黒な指貫グローブ

 王角竜の剣帯

 王角竜の脛当

 海蛇竜のジャケット

 真っ黒なズボン

 真っ黒なブーツ

 白い大型のアイテムバッグ


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