1440
あまりに固まっているので村長に声を掛けたら、何とか復帰しておずおずと話し掛けてきた。
「申し訳ありません。貴方様はシャディアン様の子孫の方だったのですね。重ね重ね大変ご無礼を致しました。この通りでございます。平に御容赦を」
「は? ………すまない村長、シャディアンっていったい誰なんだ? 俺は聞いた事が無いんだが。それと、内臓類が要るかどうか分からなかったんで解体はしていない。解体して内蔵類を取り出すなら、早くした方が良い」
それを聞いた周りの村人は動き出し、グリーンベアの解体を始めた。どうやら内臓類も食べたり薬に使うらしく、あった方が良いそうだ。それよりも村長が横から五月蝿いので聞くと、古い時代にシャディアンという大英雄が居たらしい。
何でも体に紋様のあった人物で、手を触れる事無く相手を持ち上げたり、逆さまに叩き落としたりした話が残っているそうだ。それってどう考えても<幽人族>だし、それなら俺じゃなくてディルだっての。俺達がその説明をすると、村長は仰天した。
「何と!? 体に紋様のある方はそちらで、その力を【念術】と言うとは……。長く生きてきましたが初めて知りました。しかも、古の大英雄であるシャディアン様と同じ種族の方が居られるとは……」
「そんなに有名な英雄なのかい? 私達の大陸で言うところのデフィルみたいなものだね。古の英雄デフィルと、この大陸の大英雄シャディアン。同じ時代なのかは気になるところさ」
「………大陸、と今仰いましたかな? ……もしかして貴方がたは海を越えて来られたのですか? 何という滅茶苦茶な事をされるのです。真に信じられません。まさか、海を越えてこられる方が居るとは……」
その後、村長と話しながら様々な事を聞いていく。グリーンベアの肉は腐りやすいので、昼に一気に焼いて食べる事に決まった。俺達の取り分だと言われたが、俺達はそもそも食べる物は沢山持っているので必要が無い。
それを証明する意味でも、焼き場を作ったらチャパティを作っていく。俺がアイテムバッグから様々な物を取り出した事で、初めて俺達の持っているのがアイテムバッグだと分かったらしい。周りの村人も随分驚いている。1部に悪意を持った奴は居るけど。
それは横に置いておき、様々な事を村人から聞いていく。皆も色々な人から情報収集をしてくれているみたいだ。俺は主に魔戦士ギルドの事を聞いている。殴りかかってきたオッサンも今は縮こまっているので、非常に聞きやすくなった。
若い頃に村を飛び出して魔戦士ギルドに登録したが、大して強くもなれずに生活するのがやっとだったらしい。これじゃ村を出た意味が無いと、命を賭けて戦争に参加したが、人を殺した時点で戦えなくなったそうだ。それで村に帰ってきたという事だった。
人を殺して駄目になる奴なんて、兵士にも居るし騎士にも居る。当たり前の事であり、駄目になるのは仕方がない事だ。魔物相手なら戦えなくもないのだが、どうしても戦争の時の事を思い出してしまうらしい。そうすると上手く動けなくなるんだそうだ。
そんな話を聞きながら、シレっと【浄化】の権能を使って強力に【浄化】しておく。これでトラウマ関係は回復する筈だが、時間が経っている相手に使うのは初めてなので何処まで回復するかは分からない。とはいえ、マシになるだけでも違うだろう。
昼食代わりの熊肉パーティーも終わり、俺達は西へと出発する。オッサンが教えてくれたが、魔戦士ギルドは町に行かなきゃないそうだ。獲物は村でも買ってもらえるが、登録は町まで行く必要がある。少々面倒だが、登録しておいた方が良いらしい。
そんな話を聞きながら村の入り口に行き、別れの挨拶をしてから西へと出発する。木像に乗るか聞いたが、今は木像を見せずに行動する事に決まった。簡単には元の大陸に戻れないし、こちらでも浄化していかなきゃならない。なので目立つ事は避けよう。
西へと走り1つ目の村であるコシの村を通過する。更に走り2つ目のサウェの村も通過して進んで行く。無理に村を浄化していく必要は無いし、勾玉で吸引しているので問題無いだろう。実際、邪気は全て吸い込んでいるしな。
そこまで遠くはなかったようで、夕方になる前にアジュの町に到着した。門番に1人大銅貨1枚、合計11枚を支払って中に入る。ダリアとフヨウの分を聞くと妙な顔をされたので、ペットの分は支払わなくてもいいらしい。
町の中に入った俺達は、まずは宿に行って部屋を確保する。雑魚寝部屋が空いていた宿があったので、5日間の大銅貨50枚を支払い部屋をとった。宿の従業員に魔戦士ギルドの場所を聞くと、町の中心にあるそうなので早速行こう。
それなりに大きな建物に盾のマークの看板が付いている。これが魔戦士ギルドの看板で間違い無い。入り口のドアを開けて中に入り、受付へと進む。中の見た目は、傭兵ギルドとも冒険者ギルドとも変わらない。似た様なものになるんだろう。
周りにジロジロ見てくる奴等が居るのも変わらないな。そう思いながら受付へ行き、魔戦士ギルドに登録しに来た事を話す。1人銀貨1枚だと言われたので、11枚出して様子を見る。すると、受付嬢は受理して後ろに行った。大丈夫……なのか?。
こちらへと戻ってきた受付嬢は紙を11枚持って来ていて、それぞれに記入していくように言ってきた。子供達も登録できるのか聞くと、銀貨1枚払えるなら年齢は不問らしい。……そういう事か、成る程なー。こういうやり方も俺はアリだと思う。
金が用意できるかどうかで弾くシステムというのは初めてだ。俺は少し離れた所にあった椅子を2脚持ってきて、子供達に自分で書かせる。子供達はスラスラと書いていくうえ字が異常に綺麗なので、受付嬢が困惑していて面白い。
書き終わった紙を受付嬢に戻すと、また後ろに行ったのでゆっくりと待つ。それなりに待たされたものの、全員分の木札を持って来て渡してきた。ランクが上がると金属製に変わったりするそうなので、そうすると高ランクだから気を付けろと説明される。
疑問に思ったので聞いてみると、高ランクが必ず品行方正とは限らないそうで、場合によっては身包み剥がされる事もあるらしい。魔戦士ギルドは登録と仕事の斡旋をしているだけなので、喧嘩などには介入しないとの事。
殺されそうになった場合を聞くと、それも自己責任だと言われた。成る程な、やりやすくて助かる。そんな話を聞いていると、それまで黙ってこちらを見ていた奴等が喧嘩を売ってきた。分かりやすい奴等だ。
「普通の平民に手を出すと、兵士や騎士がすっ飛んで来るんだけどよー。魔戦士同士だと誰も助けてくれないんだぜ? 今から新人にその事を教えてやるから、先輩の指導をぶっ!?」
「皆、殺すなよー。殺したら駄目だからな。流石に殺すと兵士や騎士がやってくる筈だ。それに、この先輩方には身包み剥がされるって事を”教えて”もらわないといけないんだが……聞いてるかー?」
まあ、力を見せないとナメられるからボコるのは分かるんだが、皆は一切の容赦をしてないな。身体強化を使ってはいないもののボッコボコにしている。子供達2人と2匹は呆れた感じで見ているぞ? もちろん先輩方をだが……。
皆がボコボコにし終わったんで身包みを全て剥がし、アイテムバッグに収納した。服も何もかもを全て奪ったが、受付嬢はスルーしている。ここまで無視するのはむしろ立派だと思うが、これが日常茶飯事なんだろうか? ……まあ、帰るか。
ここに居た7人全員の身包みを剥いでギルドを後にした俺達は、近くの人に食堂の場所を聞き銅貨5枚を払った。そのまま食堂に入り、大銅貨13枚を支払って夕食を注文する。テーブル席で待っていると、出てきたのはオーソドックスな料理だった。
パン、肉、スープ。基本中の基本みたいに出てくるが、これが1番作りやすいんだろうな。そんな事を考えながら適当に食べていく。味は可も無く不可も無く。普通だけど、それで良い。不味いより遥かにマシだ。
食事を終えて外に出ると、先輩方が徒党を組んで待っていた。近くには兵士の姿もあり、その兵士が近付いてきた。
「君達が魔戦士だと彼等は言っているのだが、登録証を持っているか? ちなみにギルドに問い合わせれば分かるので嘘を吐いても無駄だぞ。……うむ。間違い無く登録証だが、こんな小さな子もか? いや、悪いとは言わないが……」
「そいつらが魔戦士だって分かったろうが! 早くどけ! 兵士!! てめえも殺すぞ!!」
「魔戦士同士の争いには我々兵士は関与できん。一般人に手を出せば我等も介入出来るのだが、すまない」
「皆、戦闘準備だ。どうやら魔戦士同士だと本当に殺していいらしい。ありがたい事に先輩方が沢山いらっしゃるからな、皆殺しにして金品を回収する。では、始めるぞ! ブチ殺せ!!」
「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」
「「了解!」」
「ニャー!!」 「………」
俺達に殺し合いを挑んでおいて勝てると思うとは、あまりに頭が悪過ぎる。それにしても、この大陸の魔戦士ギルドってどうなってんだ? 無法者すぎない?。
▽▽▽▽▽
1440終了時点
大白金貨64枚
白金貨374枚
大金貨1643枚
金貨2424枚
大銀貨1615枚
銀貨2319枚
大銅貨2298枚
銅貨190枚
神金のヴァジュラ
神石の直刀
神木の浄化棍棒
神木の杵
神木石の錫杖
神木の浄化盾
氷擲竜の棒手裏剣
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




