1422
夕食を終えて宿の部屋に戻った俺達は、すぐに防音の魔道具を使って音が漏れないようにする。それを確認してから、皆はどっと溜息を吐いた。尾行の連中を含めて鬱陶しかったからだろう。お疲れ様。
「何だったんだい、あの尾行連中は? アレが居る所為でアルドには聞けないし、妙な表情をする訳にもいかなかったんで敢えて聞かなかったけどさー。面倒臭い連中が後ろから来るわ、食堂では近くに座るわ。本っ当に鬱陶しい」
「腹立たしい事このうえ無かったですね。チラチラチラチラと、幾ら何でも下手過ぎるでしょう! ワザとやっているのかと思ったくらいですよ。何故こちらが、わざわざ気付いていないフリをしなければいけないのか。そう思うほど酷かったです」
「本当にね。それはそうと、なぜ主様は奴等に尾行されてたんだい? 気付かないフリをしていたので私達もそれに倣ったけど、わざわざそんな事をしなきゃいけない相手という事かな?」
「いや、全然? ただ、イデアを連れ去ろうとしたバカ貴族が居てな、そいつの手を叩いたら護衛の騎士を嗾けて来たんで首を落としたんだよ。その時に不老長寿だと言ったら一気に逃走してな。その後に兵士が来た」
「あのね、騎士のくびをとばした後にね、【分解】を使って死体を消したんだよ。そのあとで兵士にむかって、したいが無いのにさつじんっておかしいって言ってたの」
「「「「「「「「………」」」」」」」」
「いや、聞いていましたけど……まさか、本当にやるなんて。死体を消して無かった事にして、何食わぬ顔で殺人を否定したんですね。この国では堂々とすると仰っていましたけど、堂々とし過ぎではありませんか?」
「まあ、それがアルドって言えばそれで終わる話でもあるけどさ。相変わらずブッ飛んでるよねー。目の前で首を刎ねておきながら、死体を消して堂々としてるなんて。ある意味で盗賊より凄いよ」
「殺人だとか言うから証拠を出せと言っただけさ。周りの野次馬も魔法を見たって言うから、そんな魔法があるなら是非見せてくれって言ったら、誰も見せられなくてなぁ。見たかったんだけど、残念」
「「「「「「「「………」」」」」」」」
「前にリューが言ってたけど、アルドが知らぬ存ぜぬを貫くと証明出来ないんだよね。アルドしか使えない魔法って多いからさ。まあ、それはいいとして……イデアを連れて行こうとしたって、いったいどういう事?」
「さあ? 豪華な馬車から降りてきて、何も言わずにイデアの背中を押して連れて行こうとしたんだよ。だから手を叩いて止めた訳だ。こっちも訳が分からないさ。言い掛かりも何も無く、無言で連れて行こうとするんだぜ?」
「何だい、ソレ? 意味が分からないね。……ああ! さっきの食堂の話、アレが繋がってくるんだ! 成る程ね。それにしても、昔の僕も何回か連れ去られそうになった事があるけど、何処にでもクズは居るって改めて分かるよ」
「あら? 確か2年前に父親が殺されたとか話してなかった? それってもしかしなくても、その父親を殺したのってアルドじゃないの? 2年前の草原での戦争、貴族を殺したのはアルドだけの筈よ」
「ああ。カイゼル髭のオッサンか、デブのオッサンか。おそらくはどちらかだろう。とはいえ、それと少年を囲う事は何の関係も無いんだがな。更に言えば母娘でやってるらしいし。当主が居なくなって好き勝手を始め、歯止めが効かなくなってるんだろうな」
「歯止めも何も、止められる者が居なさそうだがな。それなりの爵位だからこそ好き勝手出来るのだろうし、上に行くまでの情報を握り潰せるのだろう。もしくは非常に資産が多いかだ。金をバラ撒いて止めているのかもしれない」
「まあ、何でもいいけどね。どうせ下らない手出しをしてきたら、消されるか聖人にされるんだ。アタシ達は何もする必要は無いからね。高みの見物……は違うか。寝てる間に終わってるし」
「ですね。今日の夜に踏み込んでくるかもしれませんが、それも朝になったら終わっているでしょう。私達が考える必要もありません。……おっと、子供達はそろそろ布団に寝かせましょうか」
確かに蓮もイデアも舟を漕いでるな。トランプで遊んでいたんだが、途中で限界になったらしい。手からカードを外し、子供達を布団に寝かせる。カードを集めて無くなっていない事を確認したら収納。その後、子供達と2匹に【昏睡】を使った。
その僅かな時間の間に脱いだのか、裸の皆に連れて行かれたので【房中術】と【鋭覚】で返り討ちにした。皆をベッドや布団に寝かせて綺麗に【浄化】したら、宿の周囲の監視を強める。未だにこっちを見張っているだけで、それ以外に動きが無い。
見張っているのも1人だけで、人数が減っている。元々2人だったのだが、1人減ったのは子供達を寝かせている時だったかな? それ以降はずっと1人でこちらを監視している。何か理由があって監視しているのか、それとも監視しているだけなのか……。
うん? 何か別の奴等が宿の近くに集まってきたな。こいつらは……あーあー、見張ってた奴が殴られて倒れ……おいおい、今度は兵士達が集まり始めたぞ。もしかして、見張ってた奴は何かの合図を出したのか?。
俺達に関係無く兵士と怪しい連中が戦いを始めたんだが、この展開は初めてだな。何とも言えない気分になってくるが、俺達が手を出すとおかしな事になりかねないので黙ってるのが1番良い。何より宿の近くでやってるだけだし。
宿に踏み込んできてる訳でもないので、俺が手を出すのは反撃にならない。あくまでも反撃したという形にしないと。それより、このままだと1番後ろのチンピラは逃げそうだな……よしよし。逃げ出した瞬間、【念動】で転ばせてやった。
さて、周りにこちらを襲ってくる奴は居ないようだし、そろそろ寝よう。今日も一日お疲れ様でした。
<異世界718日目>
おはようございます。あれから襲われる事も無く、朝まで寝られました。昨夜のチンピラはおそらく絡んできた貴族に雇われたんだと思うが、兵士に連れて行かれたんで分かっていない。兵士どもが邪魔しなければ、白い枷を嵌めて聞き出したんだが……。
仕方ないと諦めて、これからの事を考えよう。今日は王都近くにあるというダンジョンの攻略だが、ここのダンジョンがどういうものか分かっていないので、場合によっては今日は情報収集だけで終わるかもしれない。
急ぐ必要も無いのでダンジョン攻略はゆっくりとやればいいんだが、揉め事がやってきそうな気もしている。この国の初代、つまり不老長寿が関わって来そうな気配がなー。どうしても拭えないのが何とも言えないところだ。
「「「「「「「「チュッ! おはよう、皆」」」」」」」」
「おはよう、皆」 「おはよう!」 「おはようございます」
「ニャア」 「………」
「今日はダンジョン攻略だけど、昨日の夜はどうだったんだい? あんまり寝不足そうじゃないけど……」
「実はな、昨夜監視者とは別でチンピラが来たんだが、監視者を殴り倒したんだ。その直後、兵士達が集まり出してチンピラと戦闘を始めたよ。結局、宿までは誰も来なかったから反撃も出来ず仕舞いだ。なのでさっさと寝たよ」
「兵士達とですか……何かの魔道具でも持ってたんですかね? 殴り倒されたら兵士が直ぐに駆けつけるというのもおかしいですし。もしくは監視の監視が居た? いえ、アルドならそれも分かりますね」
「いや、昨日はそこまで詳しく調べてはいないんだ、だから監視の監視が居た可能性はある。こちらから手を出す気は無かったんで、監視者しか調べてなかった」
そんな話をしながら片付けを行い、忘れ物がないか確認したら部屋を出る。何故かベテラン執事のような人物が入り口に居て、こちらに会釈をしてくるんだが……。
嫌な予感しかしないし、皆も諦め顔をしている。初代の建国者が不老長寿で、今も生きているって話はしたからなぁ……。
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1422終了時点
大白金貨64枚
白金貨374枚
大金貨1643枚
金貨2424枚
大銀貨1620枚
銀貨2330枚
大銅貨2450枚
銅貨255枚
神金のヴァジュラ
神石の直刀
神木の浄化棍棒
神木の杵
神木石の錫杖
神木の浄化盾
氷擲竜の棒手裏剣
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




