1380
「違うだろう? 何か妙な雰囲気になってるし、何よりアタシの【神眼】を騙せると思っているのかい? ハッキリ言わないと……アルドに白い枷を借りようかね」
「は? 白い枷? ……いや、よく分からないですけど、別に変わってませんよ。……何ですか、何でにじり寄って来るんです!?」
シュラが来たので白い枷を1つ渡してやると、すぐにウェリアの腕に着けた。いつも通り穏やかな顔になり、質問すると何でも答える状態になる。ただ、着けられた本人の精神はむしろ回復しているという……。まあ、いいか。
「で、貴女は何故ルーデル町に来たのですか? その目的と、何が狙いなのか詳しく言いなさい」
「狙いはありません。目的は、母の所から逃げたかっただけです。久しぶりに母の元に帰ると不老長寿の方々から聞いたと言われ、辺境伯の娘としての教育をさせらせそうになったので逃げました」
「「「「………」」」」
「概ね予想通りですね。とはいえ、まだあるでしょう。私達に何かを伝えようとしていた筈です。ですが何度も言い淀んでいましたね? アレはいったい何を言おうとしていたんです?」
「エルダ海洋国で、不老長寿が姫を襲ったという噂が流されています。おそらく貴族か近衛辺りから出た情報でしょうが、結構な者がアルドを探し回っているのを見ました。言うと殺されかねないので、言うかどうかを迷っています」
「「「「「「「「………」」」」」」」」
ウチの女性陣がブチギレかけているので、慌てて【心静】を使って落ち着かせる。どうどう……どうせ阿呆が下らない事をやっているだけだ。そもそも俺達を囲んできたのが先だし、それよりも先は股間を殴られた事だ。
シュラが白い枷を外し、俺に返してきたので収納する。ウェリアは正気を取り戻したが、女性陣が静かに怒っているのでパニックになっているらしい。気が付いたら急にだからな、気持ちは良く分かる。
「さっきの白い枷はな、着けられると心が安らかになって質問に全て答えるようになるんだ。というか母親の所から逃げるって、辺境伯の教育ってそんなに厳しいのか?」
「……それを知ってるって事は、本当に自分で喋ったんですね。……はぁ。厳しいと言うより、自分と同じように出来て当たり前って感じなんですよ。オレは早々に才能が無いって分かってたので、無理だって言ったんですけどね」
「あの辺境伯は諦めなかったと……。普通の貴族のマナーとか、そういった事は一通り出来るんだろ? ……なら、何の問題も無いじゃないか。ようするに辺境伯が高望みし過ぎなだけかよ。バカバカしい」
「まあ、そうなんですけど。それで、さっさと逃げましてね。その後、エルダ海洋国の方へ行ったんですけど……」
「ああ、言わなくてもいい。さっき白い枷を着けられて既に言ってるから。それにしても、あそこの王女も下らん喧嘩を売ってきたのかね? よほど殺されたいのか、それとも周りが騒いでいるのか。いったいどっちだ?」
「聞いた限りでは、貴族か近衛騎士辺りから流されてるっぽい感じでしたね。普通は上層部が決めて噂を流すものですけど、王様は根も葉も無い噂だと笑っている。そういう噂も流れてるんですよ」
「という事は、上層部は火消しをしている。じゃあ、流しているのは勝手な事をする連中という事になるな。それが貴族なのは分かるが、近衛は何故だ? その情報だけだと近衛は関係無いだろ」
「エルダ海洋国の王都では、近衛騎士が子供に股間を殴り飛ばされたっていう話が有名になってましたよ。何でも不老長寿と一緒に居た子供に、股間を殴り飛ばされて悶絶していたと……。だから近衛の逆恨みだろうという噂もあったんですよ」
「まあ、あいつらなら下らない噂も流しかねんな。蓮に股間を殴り飛ばされて恥を掻いた挙句、俺とメルを襲ってきたんでボコボコにしてやったし。しかも大通りの真ん中で叩き潰してやったからなぁ、恨み骨髄かね?」
「……そんな事をやったのなら、恨まれて当然でしょう? 近衛騎士って言ったら、国の最高峰の騎士です。それが大通りでボコボコにされるって、意地でも負けてない事にするでしょうよ」
「そう言われてもな。そもそも喧嘩を売ってきたのは向こうだぞ? 姫の護衛だか何だか知らないが、無理矢理に押し退けようとするから股間を殴られるんだよ。最初から下らない事をした挙句、俺達を囲んできたんでな」
「ああ、それは駄目でしょう。囲んだ段階で、完全に喧嘩を売ってるっていう自覚無いんですかね? エルダ海洋国の連中は。不老長寿が相手だと、殺されても文句は言えませんよ」
「どうするかねぇ、この腹立たしさ。わざわざアルドとメルが殺さずに済ませてやったっていうのに……よほど死にたい様だね、エルダ海洋国の連中は」
「皆は怒っているようだが、俺はどうこうする気は無いぞ。少なくとも、もう少し様子見をしなきゃ駄目だろう。それでも俺を探し回っているなら、始末しに行くけどな。とりあえず、今は様子見だ。阿呆の相手をするのは面倒臭いからな」
皆も何となく俺の言いたい事が分かるのか、渋々納得した。とはいえ、宥めるのも大変だよ。ウェリアが言い淀むのも当然と言えば当然だ。そう思える反応だからな、しょうがない。【心静】を使ってもコレだし。
エルダ海洋国の奴等が刺客でも送ってきたら堂々と殺しに行くんだが、刺客が来た事は無い。これから来るのかもしれないが、今のところは来る気配が無いな。国の中で吠えるだけなら、いちいち行く気にはならないし。
聞きたい事は聞けたので解散となったが、ウェリアは早速娼館に行くらしい。そんな事は勝手にしてくれ。単にこの場から逃げたいだけだろうが、そこはツッコまないでおいてやる。
夕食を食べ終わり部屋に戻ったが、皆の怒りはまだ治まらないらしい。いい加減に抑えてくれないかな、子供達に悪い影響が出かねないから。【念話】でそう言うと、表には出さなくなった。まあ、これでもマシな方か。
俺は余計な事は言わず、子供達と遊んでいる。少しでも、あの不機嫌軍団から思考を逸らしたい。あんまり子供の前でブチギレる姿とか良くないんで、自制してもらいたいんだけどね。俺からは言い辛い。
子供達に【心静】を使いながら遊んでいると、直ぐに眠たくなってきたようだ。舟を漕ぎ始めたので布団に入れてやり、3匹も定位置に来たので【昏睡】を使う。子供達が寝たので一息吐こうと思ったら、無言で連れて行かれた。
【極幸】と【至天】を丁寧に使ってキメたら、ベッドに寝かせていく。部屋と体を綺麗にし、<浄化の三道具>を使って邪気を吸引して【浄化】した。【探知】と【空間把握】に異常は無し。なら、そろそろ寝るか。
今日も一日お疲れ様でした。
<異世界692日目>
おはようございます。昨夜は皆がキレて大変でしたが、今日は大丈夫だと思います。子供達に悪い影響を与えかねないから、あんまりキレる姿は見せない方が良いんだが、我慢出来ない事もあるから仕方ない部分はあるんだろう。
朝の日課を終わらせて、食堂に行き麦茶を淹れる。冷やしてからコップに入れたが、季節的には丁度良い感じだな。既に風の季節52日目だしな。季節が過ぎるのは早……くはないか。ウロウロしたりとか、色々して52日目だからなぁ。
そんな事を考えていると、蓮が起きてきた。戻ってきた蓮に聞き、【浄化】してから麦茶を入れる。蓮は黙って飲んでいるが、嫌いではないらしい。ただ、甘くは無いとの事。そりゃそうだとしか思わないが、ハチミツを入れてみるか?。
そう言って出したものの、蓮は断ってきた。入れても美味しくなるとは思えないのが理由らしい。なら仕舞うかと思ったのだが、蓮はハチミツだけで食べるそうだ。好きにしてくれ。
しかし、麦茶を飲みながらハチミツを食べて美味しいのかね? 俺にはよく分からないし、やろうとも思わないが……。
▽▽▽▽▽
1380終了時点
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銅貨242枚
神金のヴァジュラ
神石の直刀
神木の浄化棍棒
神木の杵
神木石の錫杖
神木の浄化盾
氷擲竜の棒手裏剣
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




