1318
「入り婿は公爵家の闇を表に出した時に、責任を取らせる為の駒でしかなかった。つまり、生贄だ。公爵家は王族であった頃、樹海国にとって大事な魔天族を性的な奴隷にしていた事があるらしい。王城に監禁し、滅茶苦茶な事をしていたそうだ」
「………碌でも無いね。もしかして、この国から魔天族が居なくなったのは、その事実を知ったからなんじゃないかな。あの種族は身内の結束が固いからね」
「都会に出てきた田舎者を騙す様な形で、そんな事をしていたらしい。それの責任を、入り婿とその子供に背負わせようとしたそうだ。嫡流の血が繋がっていない、つまり赤の他人の子供にな」
「最低だね、碌なもんじゃないよ。これだから貴族って奴は嫌いなんだ!」
「入り婿がエリアを盗賊に攫わせたのは、エリアが居なければ自分の子が生まれても責任を押し付けられる事は無いと考えたからだ。その頃にはエリアの祖父は亡くなっていたが、先代の王がエリアそっくりの偽物を用意した」
「それを王族に入れて、嫡流の血は自分達に入ったとアピールする気だった訳ですね。この国は裏での政争が醜すぎませんか? 幾らなんでも、帝国でもここまでの事はありませんよ」
「いや、帝国の事は知らないけどな。それはともかく、エリアの母親は暗部にエリアを捜索させていたらしいが、入り婿が邪魔していたそうだ。そしてそれが発覚したら、エリアの母親を殺害。その後、公爵家を乗っ取った」
「自業自得というか、因果応報といったところかな? とはいえ、かつての王族がやっていた事であって、エリアもエリアの母親も罪を犯していた訳じゃないんだけどね。まあ、元王族だから罰は避けられないだろうけど」
「入り婿に同情する必要は無いぞ。生贄ではあったものの、その後は公爵家を奪って好き勝手をしている。俺達に手を出してきたのも、甘い汁が吸えなくなるのを怖れてだ」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
まあ、そうだよな。入り婿だって悪なんだよ。何だっけ? <登場人物、全員悪人>っていう映画が昔あったな。今回の事は何かそんな感じだ。誰も彼もが悪で、好き勝手していたという話。そういうオチだな。
「結局蓋を開けてみれば、盗賊団の方がある意味では真っ当だったと言える。盗賊ではあるんだがな。ちなみにエリアの居た盗賊団を軍が攻めたのは、入り婿の実家である侯爵家が言い出した事らしい。身代わりが居るから、本物は邪魔だと」
「だが、その後にエリアの偽物は殺されたんじゃなかったか? 亡き者としようとするのは、ちょっとおかしいと思うが……?」
「首謀者が違う。さっきも言った通り、エリアを殺そうと最初に言い出したのは入り婿の実家の侯爵家。そして偽物を殺したのは王太子の側近だ。側近はエリアが逃げ切ったのを知ったらしく、偽者を殺して先代の王と侯爵家と公爵家の封じ込めを謀ったらしい」
「「「「「封じ込め?」」」」」
「本物であるエリアに手を出させない為だ。過去の王と王族が何をやったかは別にして、エリアは紛れも無く本当の王族だからな。しかも一人しか残っていない嫡流の王族だ。手を出させる訳にはいかないんだろう」
「「「「「「「「「あ~……」」」」」」」」」
「その後に暗部を派遣してきたのは、入り婿が生贄に選ばれるくらいの小者だからだ。公爵家を奪い返されるという恐怖から、何としてもエリアを殺そうとしたらしい。現公爵は甘い汁を吸うのに邪魔だと短絡的に考えていたそうだが……聞くのも面倒だから早々に始末した所為で、本人から聞いてないんだよ」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
言いたい事は分かるんだが、本命は入り婿であって現公爵は脇役でしかない。聞いたって碌な事は知らないだろうと思っていたしな。おそらくだが、聞いたところで予想通りだっただろう。
「そういえば、この国の王太子もポンコツらしいな。かつての王の様にしない為に厳しく育てたらしいが、清廉潔白を理想とするようになってしまったそうだ。政治なんて、<清濁併せ呑む>ぐらい出来ないと駄目なんだがなぁ……」
「あーあー。たまにそういうの出てくるけど、大抵は碌な事にならないんだよねぇ。綺麗なだけの理想論じゃ誰も救えないっていうのに、それが然も正しいかの様に見えるんだろうさ。そういう奴等には」
「頭が悪すぎて救いようが無いですが、そもそも私達が救ってやる必要もありませんしね。そろそろ崩壊しそうな気がしますよ。新しい者に任せた方が良いと思いますし、理想論で地獄に落ちそうですね」
「ウダウダ話を続けてもしょうがない。俺達は王都近くのダンジョンを攻略したら、さっさとこの国を出る。そうしようと思うが、反対は?」
「「「「「「「「「「無し」」」」」」」」」」
「じゃあ、そういう事で。さっさと部屋を片付けて、隣にあるという王都に行こう」
部屋を片付けて、忘れ物が無いかのチェックを済ませた。宿のカウンターに行き、今日出る事と返金は必要無い事を伝え、宿を出たら食堂へ行く。大銅貨13枚を支払って朝食を注文して食べた。
朝食後、クェンタの街を出発して王都コレントへ向かう。ここからは人が多いので、蓮とイデアを背負って走って行く。そこまで時間も掛からず、体感で1時間くらい経った頃には王都に到着した。
王都前の列に並び順番を待つ。こちらに敵意や悪意を向けてくる者は居ないが、エリアと蓮とイデアが目立っている。エリアは背の高さから、蓮とイデアは子供が居るからだろう。悪意や敵意を向けて来ない限りはスルーだな。
俺達の番が来たので、素直にダンジョンに稼ぎに来たと言っておく。子供が居るから多少訝しんだが、冒険者証を見て通してくれた。鬱陶しい監視が付く可能性はあるな。とはいえ、今気にしても始まらないか。
近くの人にオススメの宿を聞き、今回も大きめの宿に行く。5日間で銀貨3枚とボッタクリ価格だったが、他の客を壁に使うんだから仕方なく払った。部屋に行き、まずはエリアに公爵家から奪った金銭を渡す。
エリアは遠慮しようとしたが、俺は受け取らせる。何故ならエリアに関する物は何1つ無かったからだ。一応、エリアの母親を描いた肖像画はあったので盗ってきたが、それ以外には全く無い。何より、その金銭は慰謝料として受け取っておくべきだ。
そう言ってエリアに渡しておいた。そもそも俺が貰うのもおかしい金だから、エリアに受け取ってもらわないと困るんだよな。皆はエリアの母親の肖像画を見ているが、エリアそっくりの人が描かれているので驚いている。
双子か? というレベルでそっくりなんだよ。若い頃の絵なのか分からないが、今のエリアと寸分違わず同じだと言える程だ。つまり邪生の心臓を食べる前のエリアとは違うんだが、この人もどうやって美を保ってたんだろうね?。
「確かにそうね。邪生の心臓を何度も食べてきたエリアと変わらないなんて、本当に凄い事よ。祖母は別格としても、この方も相当の努力をされてたんだと思うわ」
「その肖像画はエリアが大事に仕舞っておくとして。それよりも、母親とここまで似ていると……」
「そうだな。アルメアの危惧通り、エリアを見た者が母親を知っていれば、確実に公爵家の関係者だと気付くだろう。ハッキリ言って余計な事に巻き込まれる可能性が高い。どうするんだ? アルド」
「当然、今日中に一気に攻略するんだよ。ダンジョンに行ってしまえば、俺達に追いつくのは難しい。宿には5日間の金額を払っている。まさか、今日中に出て行くとは思うまい」
「つまり、攻略してすぐに王都から離れるって事だね。目眩ましに銀貨3枚は高いけど、必要経費ってヤツか。まあ、しょうがない」
「それでも眩んでくれるのですから、十分過ぎると思いますよ。今日来て、今日出て行くとは、誰も予想出来ないでしょう。木像に乗って一気に攻略ですね」
「あたしさ、この国に長く居たくないから、さっさとダンジョンに行って出よう。正直に言って、この国には2度と戻りたくないよ」
「それじゃあ、そろそろダンジョン攻略に行こうか」
そう言って、俺達は部屋を出る。それにしても、久しぶりに胸糞悪い話が多いな。ガイアルムの中央神殿くらい腐っている国かー……。
揉め事は要らんぞ。
▽▽▽▽▽
1318終了時点
大白金貨61枚
白金貨330枚
大金貨1183枚
金貨1305枚
大銀貨1355枚
銀貨1703枚
大銅貨2063枚
銅貨50枚
ヒュドラーの毒ナイフ
山羊角の杭
キマイラの短剣
神金のヴァジュラ
神石の直刀
神木の浄化棍棒
神木の杵
神木石の錫杖
神木の浄化盾
氷擲竜の棒手裏剣
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




