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ヴェルが言うには、傭兵の中でも若者は特に文字が読めない者や書けない者が多いらしい。ただ、そういう者は生活の為に狩りに行かなければいけないので、読み書きを覚える暇が無いのが現実だ。
なので新人から抜け出した辺りの者が来るだろうとの事。もしくは魔銅の運搬をしている者。この連中は、狩りに行かなければならない連中とは違い金を持っているので、学びに来る可能性はあるようだ。
どちらにせよ、ギルドの訓練場か建物の中で、文字を教える勉強会らしきものをしてほしいらしい。まあ、俺としては構わないが、喧嘩を売ってくる連中は叩き潰すからな?。
「それは当然でしょう。それに……<ナッツクラッシャー>は、かなり怖れられているみたいですから、おそらく手を出すバカは殆ど居ないかと。本当に潰さなければ、こちらとしては見て見ぬフリをします」
「それなら、いいか。そこまで言ってくるって事は、周囲に勉強してる事を見せ付けてほしいんだろうしな。4歳の子供でも勉強してるんだぞって事をさ」
「ええ。ですが、もしかしたら村の子供達も来るかもしれません。その場合はどうしましょう? インクとか紙とか用意するにも限度がありますし……」
「1番面倒が無くて簡単なのは黒板とチョークなんだが……コレは作った方が早いのかね? どうやら俺しか分からないみたいだし、作った方が早そうだ。食事も終わってるし、ちょっと行ってくる」
そう言って俺は宿を出ると、そのまま町も出た。外に出て少し移動し、木を何本か切って黒板用の板と背の高さに合わせる足の部分も作る。【変形】や【融合】や【分離】を駆使してサクサク作り、終わったら収納する。
次にチョークだが、これは町に戻って町長に聞いた方が早いな。なので町長の家に行く。幸い町長は直ぐに出て来てくれたので町長に話し、丸鳥の卵の殻はどうしているかを聞いた。すると、砕いて畑の肥料にしているらしい。まあ、予想通りだな。
俺は町長にチョークの作り方と、それが卵の殻で出来る事を説明する。町長は理解していないので、アイテムバッグから貝を取り出して貝殻でも同じ事が出来る事を実演する事にした。簡単に言えば、綺麗にして焼けばいいだけだ。
中身を取り出したら、貝殻に【清潔】を使い綺麗にする。中身はピッピにあげた。その後、暖炉を借りて【加熱】で燃やし、白くなるまで焼く。【冷却】してから【念動】で取り出したら、【粉砕】して水を混ぜていき練って固める。
最後にチョークの形にしたら【乾燥】させて出来上がり。俺は黒板を取り出して墨を塗って黒くし、【乾燥】してから上に柿渋を塗って【乾燥】させる。初期の黒板は本当に黒かったというのを知っていたので、ムダ知識が役に立ったな。
町長は早速チョークで黒板に文字を書いている。楽しそうに書いているが、適当な端切れを取り出して拭いて消す。町長は怒ったものの、俺はこうやって消す事で繰り返し使える事を説明した。すると、町長はようやくチョークと黒板の意味を理解する。
「コレ、便利ですね! 書いた物を消せるのも凄いですけど、こんな物で作れるなんて。でも卵の殻は肥料に使われてるんですよ。それが無くなるのは……」
「卵の殻を砕いて撒くのは知ってるが、あれは骨でも代用できるぞ? 魔物の骨を砕いて撒いたらどうだ? 骨がチョークに使えるとは聞いた事が無いが、使えるのかもしれない。その辺りはちょっと分からないな」
「へー、あれって魔物の骨でも良いんですか。それなら沢山ありますから、もっと早く使えば良かったです。ただ、どちらにしても粉にするのが大変ですね」
「水車で壊すか、最悪は魔道具を作ってもいいけど? かなり適当な物になるが、物を壊す程度なら簡単だしな」
「んー……じゃあ、試しにお願いします」
「あいよ」
俺は再び町を出て、今度は川を遡る道を進み石をゲットして戻る。町長の家に戻ったら超魔鉄の板を4枚作り、床の部分の板に【粉砕】の魔法陣を刻む。残りの3枚の端を【融合】して箱の様にくっつける。
上と前が空いているが、そこは気にしなくていい。最後に石を表面に被覆すれば完成。前の部分には木の板が嵌められる様になっていて、中に入れた物が零れないように出来る。この板を外せば、細かくした物を直ぐに出せる様にした。
そんなに重い物でも無いので、町長が試しに余っていた木片を入れて魔力を流すと、あっと言う間に【粉砕】されて粉になった。木の板を外して傾け、【清潔】を使えば勝手に箱から出て行く。
……うん、問題ない。使えれば何だっていいのであって、デザインを俺に期待すんな。そう思っていたら、アッサリ俺が魔道具を作った事に町長が呆然としていた。そもそも魔道具なんて難しい物じゃないのを知らなかったんだろうなー。
俺は町長に魔道具の今後を任せ、作ったチョークと黒板を持って傭兵ギルドへと移動する。結構な貝類を持っていたんだが、全てチョークにしたし中身はピッピに処分してもらった。まあ冷凍していた物なんで、別にいいか。
ギルドに入るとテーブルのある所に人集りが出来ていて、その中心に蓮が居るようだった。俺は蓮の前に黒板を置き、そこにお手本の字を書くようにアルメアに頼む。アルメアは何でもないようにサラサラと書いたが、本当に綺麗な字だな。
頼んだ通りにアルメアが大きく書いてくれたので、非常に分かりやすく蓮には好評だった。俺は小さな黒板を使い文字を練習させれば良いと思っているが、書く為のチョークの原料入手に困っている事を話す。
皆は卵の殻とか貝殻と言われて困っているが、それが事実なのだからしょうがない。とはいえインクはそれなりの値段がするし、インクを使うなら紙が必要だ。それとも木の板を用意して、削りながら練習するか?。
それを提案するも困った顔をされるだけだった。古くから使われている木簡じゃあるまいし、今時そんな物を使う事になってもなー。そう思っていたんだが、俺の考えとは違って削るのに困るという話だった。
なので、残っている木と超魔鉄を取り出して日本式の鉋を作り、木簡を作って渡す。アルメアに字を書いてもらった後に鉋で削ると、綺麗に表面のみを薄く削っていった。成功は成功なんだが、超魔鉄だからか切れすぎるな。
皆は薄く薄く削られているペラペラの木の紙の様な物を摘み、唖然とした顔をしている。とはいえ、本職の職人に比べればそこまでじゃないんだが……。皆が物凄く興奮しているが、どうもこの辺りではここまで薄く削る道具自体が無いらしい。
成る程。皆が驚いている理由は理解したが、木簡で文字の練習は無理だろう。
「いやいや、そんな事は無いよ。コレで十分さ。木が必要なら伐ってくれば良いし、最悪はダンジョンから採ってきたらいいだけさ。それで字の練習が出来るなら十分過ぎるよ。アタシなんて高いお金出して、紙で練習したっていうのに……」
「まあ……木簡でいいなら、それでいいけどさ。それより傭兵の字の練習はどうなったんだ?」
「それなら明日からだそうですよ。今日は蓮が練習している姿を見せて、こういう風に勉強するんだとアピールするだけです。どのみち勉強しない奴は4歳の蓮以下となりますからね」
「まあ、字が読めない訳じゃないのよね。字が汚いだけで……。読めるなら騙されたりしないから、それで問題ないと言えば、確かに問題は無いのよ」
「子供より汚い字というのも受け入れるしかないな。正直に言ってアルメアの字と変わらないとなると、世の大半の者より上手いとなる。それどころかトップクラスだ」
「言葉は悪いですけど、諦めるしかありませんね」
「自分が納得できる字を書けば良いんだよ。あたしだってアルメアと同じ字なんて無理だし。誰が見ても読める字なら、馬鹿にされたりしないさ。せめてそこまでは出来るようにならないとね」
「私は問題ないと思うんですけど……いえ、分かっています。分かっていますから」
シュラが諦めるのは無理だな。だってアルメアが睨んでるし。
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1287終了時点
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氷擲竜の棒手裏剣
神石の勾玉
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王角竜の革鎧
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王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
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