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朝食を食べていると、何故かヴェルが宿に入ってきた。もしかして厄介事を持ってきたんじゃないだろうな? そう思いながらも大銅貨1枚を女将さんに支払い、ヴェルの分も注文する。
ヴェルはこちらに来たが、蓮を見て少々固まった。蓮は全く気にしていないのか、朝食を頑張って食べているだけだ。近くにあった椅子を持って来て座り、開口1番、訳の分からない事を言い出した。
「皆さんが昨日帰ってきていたのは知っているんですが、東の方に行ってたんですよね? 聖王国の方に行っていた訳ではないと思うのですが……。一応聞いておきたいんで、聞かせてもらって良いですか?」
「俺達は東から真っ直ぐルーデル村に帰ってきたが、それがどうかしたか? 特に何も無かったが、強いて言えばエルダ海洋国で兵士と王女と揉めたぐらいかな? それ以外には無いと思う」
「兵士はともかく王女って何ですか? 普通は王女と揉め事を起こしたりなんてしないでしょう。何で毎回、訳の分からない事をするんですか?」
「こっちじゃないっての。王女が来たから横へズレたら、兵士が無理矢理メルを押し退けようとしたんだよ。それを襲われていると勘違いした蓮が、兵士の股間にアッパーを喰らわせたんだ」
「………ああ、その小さな女の子がですか。まあ、皆さんが鍛えているなら唯の女の子じゃないんでしょうし、それは考えないとして……。それよりも、聖王国の方でアルドの偽物が出てるようですよ?」
「ふーん……。両目が金色か、それとも登録証を見れば分かるだろうに。もしかして確認すらしていないのか? 俺の登録証にはホラ、ギルドの総長と副長のサインが入っているぞ? 不老長寿と認めるヤツだ」
「いつの間に総長と副長の署名を……。まあ、これなら周知すれば済みますね。どうもソイツは皆さんが居ない間に出てきたらしく、聖王国を中心に居るらしいんですが、ヴェスティオンと関わりがあるんじゃないかと言われてますね」
「伯爵家か公爵家の関わりか? 片方は諜報のまとめ役、もう片方は暗部のまとめ役だったしな。そこの奴等が逆恨みでやっている可能性は無い訳じゃないと思うが……。必要となったら殺しに行くか」
「そういう事をサラっと言うの、止めてもらえませんか? それと、ソイツはとっくに怪しまれていて監視されているそうです。アルドを騙っている割には、ダナさんやシュラさんの偽物は居ないようですので」
「ああ、アタシ達の偽物が居ないから怪しいって事になってるのか。まあ、そりゃそうだね。アタシ達がアルドと一緒に居ないっていうのは滅多にない事だからさ。それよりヴェル、アンタの好みの男の方はどうなったんだい?」
「それは…///…あの……///」
「どうやら上手くいっているようね。でも、変な男に騙されてなければ良いんだけど……」
「大丈夫ですよ! 皆さんが言っている男は、私に取り入ろうとしていただけだったのでボコりましたけど、その後にイムランがですね……そのー///」
「イムランって……村の農家の若手代表じゃないの! あの純朴そうなイムランと貴女が? ……イムランを騙して食べた訳じゃないわよね?」
「そんな事しませんよ! 何で私がそんな事しなきゃいけないんですか!?」
「ヴェルさんの言っている事は本当だよ。どうもイムランは片思いしてたみたいでね、ヴェルさんが件の男を殴り飛ばした後でイムランが猛アタックしたんだって。その日の内に絆されたうえ、夜にたっぷり愛されて陥落したらしいよ?」
「おやおや……それでヴェルが女の顔をしている訳だ。村の農業を将来背負うのがイムランなんだけど、何だかんだと村に居着く事になってるねえ、ヴェルは。昔はアタシが居なくなったら旅に出るとか言ってたけど」
「それって最初の頃じゃないですか。そんな7年ほど前の事を言われても困りますよ。あの頃は若かっただけです。ちょっと調子に乗って尖ってただけなんですから、そろそろ許して下さい」
「蛇人族は寿命が長めだけど、若くして戦闘狂で調子に乗った誰かさんは、ダナに戦いを挑んで叩き潰されてたわね。懐かしいけれど、あの頃から馬鹿だったのは変わらないのよ」
「ちょっ!? 幾らなんでも酷くないですか!?」
「だったら少しは落ち着きな、それと先を見通して動けるようになりな。それを考えてないから故郷の奴におかしな事をされて、アタシ達にボコボコにされたんだろうに」
「あー……アレは……何と言いますかー。あっ!? そういえば、あの男を処刑したという手紙が故郷から来ていました。こちらの報告が先に届いていて、故郷に戻ったら即座に捕まって処刑されたそうです。故郷からは、始末したので許してほしいと書かれていました」
「まあ許すと言うか、何と言うか。そもそもヴェルの故郷に興味無いしな。こっちとしては何とも思ってないのが本音だ。お前達の相手をするほど暇じゃないってところか。それにしても、今の今まで忘れてたんだな? まあ、俺達も忘れてたけど……」
「すみません。それにしても、物凄い本音ですね。言いたい事は分かりますけど。私も故郷の者の相手なんて、もうしたくありませんよ。離れてから初めてしっかり考えましたけど、あんな面倒な仕来りなんか守る意味がありませんしね」
「仕来りって言うより、上の者にとって都合が良いだけのルールでしょ? それも種族のみのローカルなルール。そんなものを持ち出されても困るし、多くの者にとったら迷惑でしかないよ」
「結局、ヴェルが来たのは俺の偽物が居るっていう話をする為だけか? ああ、いや。それと惚気もあったか」
「そっちは関係ありません! とにかく、偽物の話は登録証の情報を王都のギルドに送っておきます。そこから王国中のギルドに送られるでしょう。流石に総長と副長の署名は偽造できませんからね」
「俺とリューの登録証のみ、総長と副長のサインが入ってるからなぁ。頼めば皆の登録証にも入れてくれるだろうけど、ダナとシュラに関しては必要なのか疑問だけどな」
ダナとシュラに関しては有名過ぎて偽者が出ても簡単にバレるだろうし、ファンから袋叩きにされかねない。おそらくだけど、そういう可能性が高くて偽物が用意できないのだろう。その点、俺なら問題ないとでも思ったのかね。
どのみち強さが違い過ぎて、すぐにボロが出るだろうけど。ヴェスティオン以外の各国は、上層部と俺の面通しが出来ているので騙される事は無い。そして、ヴェスティオンはどうでもいいので興味無し。
仮に俺の偽物に騙されたとしても、それは間抜けが悪いというだけで終わる。俺も暇人じゃないし、これは放っておいた方が楽しくなりそうなので放っておこう。既に朝食は終わっているので、今はゆっくりしている。
リンデ達とアルエル達は先ほど起き上がり、お金を払った後でゆっくりと朝食を食べているが、未だに頭は覚醒していないらしい。ボーッとしながらモソモソと食事をしている様子は色々駄目すぎる。大丈夫か、コイツ等?。
ヴェルは既にギルドに行ったし、女将さんも仕事に戻った。蓮はいつも通りの書き取りをしている。暇なのかエリアとシュラも書き取りをしているが、アルメアのシュラへの指導は厳しい。
食事の終わったリンデ達とアルエル達は、頭が覚醒したのか蓮の書き取りを覗き見てビックリしている。手本のアルメアの字と、それを正確に写している蓮に驚いているんだろう。アレは誰が見ても驚くからなー。
「それにしても驚き過ぎな気がするんだが? アルエル達は分かるが、王女組は必要な事として徹底的にやらされるんじゃないのか? 汚い字だと王族として困るから、厳しく叩き込まれるイメージがあるが……」
「それは、そうです。ですが、お手本の教師もそこまで上手くはありません。あまりに綺麗過ぎて何と言っていいか……。そして、この子もそれを正確に写していますし」
「ここまでの字を書かれると、王族といってもどうにもならないよ。正直に言って比べられたくないね。流石としか言えないけど、各国の王も勘弁してくれって言うよ」
「ですね。我がマールの陛下も、これと比べられたくは無いでしょう。自分の書く字を考えると、恥ずかしくなってきます」
「そうだな。恥ずかしいというか、虚しいというか。アレだけ幼少の頃に叩き込まれたのに、その程度でしかないからな。まあ、御二人よりはマシだが……」
「別に気にしないよ。あたしは盗賊の親父に育てられたからね。盗賊団じゃ、字が書けない奴の方が多かったくらいさ」
「………」
シュラは蓮より下手なんだから、反省しような。
▽▽▽▽▽
1260終了時点
大白金貨51枚
白金貨305枚
大金貨1154枚
金貨1252枚
大銀貨1322枚
銀貨1642枚
大銅貨2156枚
銅貨50枚
ヒュドラーの毒ナイフ
山羊角の杭
キマイラの短剣
神金のヴァジュラ
神石の直刀
神木の浄化棍棒
神木の杵
神木石の錫杖
神木の浄化盾
氷擲竜の棒手裏剣
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




