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「まあ、晴信を殺そうとした奴等がどうなろうと構わないが、現実問題としてこれからどうする? 甲斐の国に戻るのか、それとも何処かに力を借りに行くのか。色々な方法があるとは思うが……」
「私は甲斐の国に戻る気はありませんし、紅衆として甲斐を纏める気もありません。正直に言えば、父上がどれだけ苦労をしてきたかも知っていますし、私が同じ苦労をする気もありません。だからこそ弟が当主になる事に納得していたのです」
「成る程ねぇ。好き勝手にさせろという馬鹿どもを、なんとか1つに纏めたのが父親だった訳だ。そりゃ再び纏めろなんて言われても、やる気になる訳が無い。どれだけ面倒で厄介な連中か聞いてる訳だしね」
そもそも甲斐の国だって滅茶苦茶だもんな。この時代は何処の国もそうだけど、一部の優秀な人物が必死に馬鹿どもを押さえつけてただけだし、隙を見せれば好き勝手する奴ばかりなんだ。
藤みたいに嫌気が差す奴も多いだろうさ。1番上に立った事が無いから立ちたいと思うんだろうが、1番上なんて厄介極まりない仕事だ。西部さんも信秀さんも必死に熟しているぐらいだしな。
「それじゃあ、今後はどうするんです? 一介の武士として生きると言ったところで、貴女が武田家の者だという事に変わりはありませんよ? 今川とかいう連中は、必ず貴女を殺そうとするでしょう」
「分かっています。なので、我が家に伝わるこの鎧をお渡ししますので、私を鍛えて下さい。父が我が家に伝わる<大量鞄>を戦の前に貸して下さったので、<楯無>は私が持ったままなのです」
「た! 楯無!?」
「何ですか、千代女。いきなり大きな声を出して」
「えっ!? い、いや! だって楯無ですよ!? あの<源氏八領>の1つ、楯無ですよ!?」
「「「「「「「「???」」」」」」」」
源氏八領って言えば、源氏の家に伝わる8つの鎧の事だな。俺も詳しくは知らないが、甲斐武田家に伝わる楯無だけ現存しているという事は知っている。ただ、伝説とかが色々入り混じっていて、本当かどうか怪しい物もあるそうだが……。
「清和源氏の御家には、<源氏八領>という有名な8つの鎧があるのです。<源太産衣><八龍><楯無><薄金><膝丸><沢瀉><月数><日数>とそれぞれあるのですが、今は我が武田家に伝わる<楯無>しか残っていないそうです」
「へぇー、古くから伝わる由緒正しい鎧って事だね。まあ、歴史的な価値はあるんだろうけど、武田家の宝みたいなものだろう? それを渡していいのかい?」
「私しか生き残っていないのならば、私が武田家の当主と言えるでしょう。ならば私の好きにしていい筈です。それに、私には差し出せる物がこれぐらいしかありません」
「いや、別に要らんが? 長恵に教えているんだし、その横で習うなら好きにすればいいと思うぞ? そもそも長恵は何かを差し出した訳でも無いしな」
「えぇっ!? 何か必要でした? 私もダンジョンに行きはじめましたから、多少お金はありますが……」
「いや、だから寄越せとは言ってないだろう? そもそも居座るようにして残り、皆に教えてもらっているじゃないか。今さらゴチャゴチャ言ったりしないが、最初はビックリするほど図々しい奴だと思ったよ」
「…………。も、申し訳ございませんでしたーーーーっ!!!」
今さらながらに自分が何をしたのか理解したらしい。千代女も晴信も呆れた顔を向けている。それよりも、その有名な鎧は大事に仕舞ってなさい。別に欲しくないし、妙な事に巻き込まれるのも嫌だしな。
何より俺達の鎧の方が価値が上なんで、本当に要らないんだよ、ソレ。あくまでも<源氏八領>という歴史的な価値はあるけど、実戦に有効な鎧かと言うと疑問がある。
<楯無>は名前の通り、盾が要らない程の鎧として名付けられている。しかし、あくまでも当時の戦において盾が要らないという意味であり、現代と比べると本当に優秀かは疑問符が付いてしまう。
更に俺達の鎧は竜革の鎧だ。重厚な鎧ではなく軽量な物だが、鉄の刀や槍では傷一つ付けられないし、矢など通らない。まあ、そもそも当たる事も無いので保険で着ているだけだが。
「刀も槍も矢も通らぬ革鎧ですか、しかも1000年は保つと……。見て触らなければ笑い飛ばしているところですが、これは滅茶苦茶です。試しに斬らせてもらいましたが、本当に斬れないなんて」
「普通の刀で身体強化も使わないとなると、斬れる訳が無い。そんな事は当たり前の事なのだが、知らなければそんなものだろうな。それ以前に、そこまで堅牢な竜に勝たないと作れない鎧だ」
「………あれ? つまり皆さんは、これほど堅牢な皮を持つ相手に勝てると……?」
「勝てると言うか、なんと言うか……。今までに何度も戦ってきてるし、この前はリューとエリアだけで倒したよ。そもそも正しい身体強化を極めた先は<竜殺し>だからね」
呆然としているが、そろそろ裏庭に出て準備しろ。今日だけは俺がみっちりと教えてやる。長恵と比べて明らかに差があるからな。少しでもついていける様に、今日一日は徹底的に叩き込んでやろう。
そう言って晴信を裏庭に行かせる。外に出た晴信に【集中】を使い、魔力や闘気の感じ方と循環のさせ方から教える。昼まで教え、昼食を食べて後片付けをしたら、再び無理矢理に集中させて教えていく。
するとたった1日で、身体強化を使いながら走る事がギリギリ出来るようになった。いやー、流石は武田晴信。才能が有りますなぁ。本人は倒れて起き上がれないけど。
そんな晴信を放っておき、俺は台所で夕食を作る。今日は麦飯に味噌汁、それとヘビーブルのステーキだ。そう宣言すると、蓮と2匹が物凄く喜んでいる。気持ちは分かるが麦飯が炊けてからだぞ? 肉を焼くのは。
テンションだだ下がりの1人と2匹を置いておき、俺は麦飯を炊きながら味噌汁を作っていく。今日は野菜と魚の味噌汁で、出汁は魚のアラだ。身を外した後、焼いて臭味を取ったら出汁をとって捨てる。
十分出汁が出たら取り上げ、野菜を煮込んでいく。魚の身は少々焼いてから入れるので、現在は炙っている。十分に表面が焼けたら投入し、ゆっくりと煮込む。後は出来上がりを待つだけだ。
相変わらず蓮は料理風景を見ているが、何が楽しいのかは分からない。そうしていると、ようやく晴信が台所に来た。随分長い間休んでたなー。そう言うと「キッ」と睨んできたぞ?。
「何をしたか知りませんが、あそこまで苦しむ事になるとは思いませんでした! もう少し手加減というものをしてもいいでしょう!!」
「そう言われてもなぁ。リンデ、リヴィ、キューレ、カイリにも同じ事をしたぞ? 晴信の鍛え方が足りないんじゃないか?」
「そう言えば、あの王族組も同じ様に無理矢理集中させられてたね。結果として2日ぐらいで身体強化をしながら走れるようになってたから、それに比べれば才能あるんじゃないかい? ただし、あの子達は泣き言は言わなかったけどね」
「文句は多少言ってましたよ。ただ、王女として育てられただけの子でさえ、泣き言は言わなかったのですけどね。貴女は気合いが足りないんじゃないですか?」
「気合いでどうにか出来るのかな? まあ、私達も泣き言など言わなかったけどね。泣き言を言っていたら死ぬという状況もあったし、そこに放り込めば言わなくなるよ」
「………」
何気にアルメアが1番容赦が無いな。体力が足りなかったのと、ここまで長時間集中した事が無かったんだろう。それに関しては経験だからしょうがない。王族組はあれで様々な経験をしてきてるからなぁ。比べるのは若干可哀想だとは思う。
外交相手と胃が痛くなるような付き合いもあっただろうし、迂闊な事を喋れない状況も何度もあっただろう。集中して言葉を選ばなければいけない場面も。少なくとも、ヤシマの国ではそんな立場の女性は殆どいないからな。
武士が領地や権力を持つ以上は、当然と言えば当然か。
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