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「それにしても、前にも似た様な事はあったけど、また何か良からぬ事に巻き込まれてたのかい? 錫を採りに行っただけの筈なのに妙な事に巻き込まれるって、ちょっと想像がつかないけどさ」
「確かに妙な事に巻き込まれたとは言える。2層で水を汲んだ後、一気に19層の山の地形まで行って錫を探してたんだ。かなりの量があったんで、インゴットにしながら進んでいたんだが、21層で酒呑童子が出た」
「は? 酒呑童子といえば大江山の鬼ではありませんか。その昔、源頼光の一行に退治されたという鬼の筈ですが、それが現世に復活したという事ですか!? それは一大事ですよ!!」
「いや、復活した奴は京の都でさっさと倒した。それはいいんだが、今回ダンジョン内で、それも邪気と呪い塗れで出てくるとは思わなかったんだよ。そのうえ、酒呑童子そのものには一切の殺気も殺意も無かった」
「それは、また……。もしかして邪気と呪いに塗れていながら、それに呑まれていなかったという事でしょうか? 京の都で見た酒呑童子とやらが、そこまでの強さを持つとは思えませんが……」
「とんでもない速さと力だったな。俺でさえ回避に徹しないと駄目だった程だ。結局、銅鏡で吸い込んで【浄化】して弱らせるという方法しかとれなかったしな。【集中】して【浄化】したら、気付いた時には消えていたよ」
「まあ、あの時にも安らかな顔で息絶えていたから、今回も変わらなかったでしょうね。とはいえ消え去ったという事は、やはり作られた者であったという事でしょう。普通なら肉体が残る筈だもの」
「それがなぁ……俺を見つけるなりニヤニヤしてたし、その後は追いかけっこをしていた様なものなんだよな。殺気も殺意も一切無いし。今までの呪い塗れとはちょっと違ってた。まあ、それはいいとして、酒呑童子が消えた後に3枚の紙が残されていたよ」
「……あの、コレは本当の事ですか? 物凄く冗談だと言ってほしいのですが……駄目ですよね。あーー、もう!! あんなに必死に覚えたのに、新たに上が出来るなんて!!」
「アルメアが取り乱すなんて珍しい事が………。うん、コレは無いな。何だこの複雑すぎる魔法陣は? えっと……【神聖世界】? 浄化魔法の、高位魔法だと!? アルド、浄化魔法に高位魔法は無かったんじゃないのか!?」
「そう、今までは無かったんだよ。つまり、浄神が新たに創ったって事だ。正直に言って、俺も驚いたんだぞ? その魔法陣を見ただけで分かる。それは、【肉体浄化】【精神浄化】【物質浄化】の3つの権能に近い魔法だ」
「えぇーーー……冗談でしょ? 神様の権能に近い効果の魔法なの? 難しいかどうかより、それって下界で使っても良いものじゃないと思う。いや、アルドはポンポン使ってるけど、それは浄神様から認められてるしさー」
「そもそも神の権能に近い魔法とか、あまりにも、あまりな魔法だと思います。存在して良いものなのか疑問に思うのも当然で、何故わざわざ神の権能に近いものを作られたのか……その理由を想像すると凄く怖いですね」
「でもさ。アルドに渡したって事は、アルドに任せたって事でしょ? あたし達が考える必要も無いんだから、いちいち驚かなくてもいいと思うけど?」
「今エリアが良い事言った! こういうのはアルドに放り投げて、アタシ達は忘れてしまうのが1番さ! 神様に関わる事なんて、アタシ達には荷が重過ぎるからね」
「少なくとも、シュラとアルメアには教えるからなー。覚悟しておいてくれよ? 高位魔法の中でも、ぶっちぎりで1番難しい魔法だ。俺でも練習なしだと使うのが精一杯な魔法だけど、使い熟せるようにするからな」
「「結構です!!」」
シュラとアルメアが激しく嫌がっているが、叩き込むに決まってるだろう。わざわざ浄神が新たに創り、しかも俺に渡すんだ。俺以外に使える者を育てておけって事だろうしな。それにここまで難易度が高いと、並大抵の奴には無理だ。絶対に届かない。
正直に言って、魔力だけでも制御力だけでも届かない、そんな領域にある魔法だ。使う事さえ至難の業と言われるだろう魔法だからな。せめて2人には教えておかないといけない。間違いなく始祖を超える魔法だし。
いや【神聖八重浄化】で超えてるって言われても、今さら教えないって事は無いからさ。キッチリと使えるまで教え込むから安心していいよ。それは”安心”とは言わないって言われてもねー。
メルとフォルにも手伝ってもらってたので昼食が出来たからさ、そろそろ食べようか? どのみち永い時間がある以上、やらないっていう選択肢は無いんだ。素直に諦めなさい。
昼食後、テンションダダ落ちの吸血鬼姉妹に、別に今すぐ教える訳じゃないと言うと、あからさまにテンションが上がった。ただし、書き取りはさせるけどね。じゃあ、頑張って写してくれ。
俺はアルメアに紙を渡して、悪銭ビタ銭を良銭に変える為の準備をする。まずは錫のインゴットを出し、続いて悪銭とビタ銭を選別していく。手持ちの大銅貨2296枚のうち、1539枚は元々持っていた物だが、キッチリ選別する。
その結果、実に978枚も駄目な貨幣が見つかった。一応使えはするだろうが、とてもじゃないが持っていたくない質だ。ついでに銅貨249枚も混ぜ込んで、良銭に変えていく。
全て一塊にしたら純粋な銅を【抽出】し、次に錫を【抽出】する。雑多な不純物はダンジョンに捨ててくるので、今は適当に置いておく。次に錫のインゴットと錫を1つにしたら、銅と混ぜ合わせて青銅にする。
最後に、良銭と同じ比率になるように不純物を混ぜたら、大銅貨の形に【変形】し【分離】していく。最終的に大銅貨が142枚減ったのと、銅貨は50枚だけ作っておいた。それでも全てが良銭になったから、これで煩わされずに済む。
それにしても、本当に悪銭ビタ銭は無くならないなぁ。サカイが作っているのもあるが、大陸から持ち込まれているのも悪銭だからか、どうしようもない。朝廷も将軍も何もしないけど、出来ないという事情もある。とはいえ、なぁ……。
朝廷が許可を出し、征夷大将軍が命じる形なら尾張で作れるんだけど……。絶対に双方とも「寄越せ」って言ってくるよなー。それなら黙って良銭を作っている今の方が、遥かにマシといえるんだよ。
結局、銭の事に関しては、朝廷も将軍も関わらせちゃいけないんだ。朝廷や将軍が占有するのでは今までと変わらないし、ヤシマの国の経済そのものが良くならない。あいつらは自分達さえ良ければいいからな。
帝はともかく、少なくとも公卿や公家はそうだ。将軍は分からないが、側近は間違いなく騒ぐ。どっちも家臣が碌でもないから、全く信用出来ない。王が立派でも、国という組織だと胡散臭くなるのと一緒だ。
ダラダラとそんな事を考えながら、【神聖世界】の練習をしている。発動だけならそこまで難しくはない。もちろん、俺ならという但し書きがつくが。問題は、通常発動した場合の規模が温泉地の町1つ分ぐらいある事だ。目立ってしょうがない。
馬鹿デカイ魔力と、阿呆みたいな制御力を要求してくるが、使う事そのものに問題は無し。ただ、範囲を狭めると要求される制御力が跳ね上がるな、コレ。流石の俺でも、半分の範囲でさえ発動出来ない。どんだけ難しいんだよ、本当。
これを下界の奴にやらせようとか、下界のレベルを浄神は本当に理解してるんだろうか? それとも、今の内に降ろしておこうという魂胆? ……んー、考えても無駄か。諦めよう。
それより何度も発動していたからか、台所に皆が集まってジト目で見てくる。更には、何故か藤達まで居てジト目で見てくるぞ? ……練習を止めて、そろそろ夕食でも作るか。
料理を始めた俺を見ながら、全員が深く溜息を吐いた。気持ちは分かるんだが、それは【神聖世界】を創った浄神に対してしてくれないか? あんな規模の魔法を創ったのは俺じゃない。
いや、発動したのは俺だけどさ。……あっ、はい。スミマセン。
▽▽▽▽▽
1206終了時点
大白金貨46枚
白金貨234枚
大金貨893枚
金貨933枚
大銀貨944枚
銀貨1128枚
大銅貨2154枚
銅貨50枚
ヒュドラーの毒ナイフ
山羊角の杭
キマイラの短剣
神金のヴァジュラ
神石の直刀
神木の浄化棍棒
神木の杵
神木石の錫杖
神木の浄化盾
氷擲竜の棒手裏剣
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




