0011
キィーッ……。
「どうぞ」
「お邪魔します」
バタンッ……。
なんだろうね? 普段男しか居ない部屋に女性が居ると空気変わるよね。なんか落ち着かない感じ。
ダナさんは麻のシャツの上に革のジャケットを着て、革のホットパンツを履いている。足には革のショートブーツ。
初めてギルドで会った時と同じ格好なのに今日は違って見える。というかダナさんって、額の目や耳以外の容姿は、想像上のダークエルフにそっくりだ。
そんな美人と一緒の部屋に居る……。空気が変わるのも当然か。
ダナさんが革のジャケットを脱ぐと、胸の大きさが分かる様になった。たぶんEに近いDのロケット型だ。プロポーションのバランスが凄いな。
均整が取れているってこういう事を言うんだろうな。足長いし。
「なんだかこの部屋、妙に空気が綺麗というか荘厳じゃないかい?」
「【浄化】の権能を使って毎日綺麗にしているからじゃないですか?」
「なんだい? その大神殿長でも王族でも不可能な贅沢は」
「贅沢……? 誰でも汚い部屋で寝泊りしたくないでしょう?」
「それはそうだけどねぇ……。まぁいいや、とりあえず防音の魔道具を使うよ」
「その魔道具は名前からして、音や声が漏れない様にする物ですか?」
「そうだよ。密談とかでよく使われる、近くの音が広がらない様にする魔道具さ。離れすぎると効果が無くなるから注意しなよ。まぁ、この部屋の広さぐらいなら問題はないけど」
防音の魔道具の形は、上に球体が乗ってるタジン鍋だ。スイッチを入れると球体が仄かに青く光る。
「これ、何を使って動いてるんです? おそらく魔石だと思うんですが」
「そうだよ。ココを開けば……ほら魔石が入ってるだろ?」
まんまタジン鍋だ。蓋を上にあげたら中に魔石を入れる所があった。殆ど空洞で、内側の底と蓋の内側に魔法陣が書き込まれている。特に難しい物ではなく複製は簡単にできそうだ。
魔道具は物理魔法陣の延長で、魔神に叩き込まれた身としては簡単な物なら5分で作れる。
いままで作ったりしなかったのは、作って良い物と悪い物の判断がつかなかったからだ。念神からも技術革新などは止めてほしいと言われている。
魔神からじゃない所が、こう……なんというか………もういいや。
「この防音の魔道具は、ダンジョンで見つかった物を複製したものだよ」
「ダンジョンで見つかった物……。つまり魔神を含めた神々が作った物ですか。下界に必要な物や適当に作った物を、ダンジョンに放り込んだとか言ってたような?」
「あぁ……うん。それアタシ以外の前で言うんじゃないよ?」
「さすがに言いませんよ」
「とにかくアルドには早急に常識を学んでもらわないといけないね」
その後【光魔法】の【光球】を何度か使い直しながら色々常識を教えてもらった。感覚的な部分も多く、覚えるのが大変だ。
色々教えてもらっている時に、ついでに聞いておいたのだが、ダナさんは最初から俺を警戒してたらしい。
何でもダナさんの【神眼】は、相手の肉体や精神や魂の強さやら、相手の現在の感情やら色々なものをオーラとして見れるそうだ。
まさか鑑定スキルか魔眼スキル!? と、ちょっとテンションが上がったのは秘密だ。
とにかく神眼で俺が凄い力を持つ奴だと分かっていたが、まさか神様と同じ肉体を持つ異世界人だとは想像の埒外だったらしい。
ただ分かったら色々と腑に落ちて、ついでに伴侶になろうと考えたそうだ。”良い男”なのも最初から見えていたという。
さっき大神殿長と言っていたが、この世界には神を祭る神殿が村や町や都市にあるのは知っている。だが、そこでお布施を払うと【浄化魔法】で浄化してもらえる事は知らなかった。
子供でも知っている事だと呆れられてしまったが、俺には【浄化】の権能がある事を思い出したのか言葉に詰まったようだ。
普通の傭兵は狩りの後、神殿に行きお布施を払って浄化して貰う。お金が中々貯まらない筈だ。
勉強が一段落するとダナさんがソワソワしだす。落ち着かせてから【光球】を消し、大人の時間の始まりだ。子供は早く寝なさい。
……ダナさんの400年の夜の技は大した事がなかった。これはダナさんが大した事がないのか、文化的な事なのか……。
そんな事よりも、ダナさんはベッドの上ではとても尽くす女性だった。コッチの破壊力が高すぎる!!!。
年上の姉御肌でスーパーモデル体型のダークエルフ風の美女が、夜は尽くす事を悦ぶ女性とか。ちょっとキャラが強すぎませんかね?。
満足そうに俺の腕枕で眠るダナさんを見ながら、お互いの体と服と部屋を浄化した後に眠りについた。
<異世界5日目>
おはようございます。起きたら隣に女性がいる、大変潤いのある生活です。まだ5日目なんだがなぁ。日本で生きてた頃と違いすぎる。異世界に来てよかった。
ぼんやりとしながら自分の体と口内を浄化し、ダナさんの体も浄化する。ダナさんを見て朝から喜んでいると目が開いたので起きた様だ。
「チュッ!///。おはようアルド。昨夜は激しく愛してくれたけど、体が疲れてないね? なんかしてくれたのかい?」
「おはよう、ダナさん。流石に女性に負担を掛けるのもアレなんで【闘気術】の一つ、【房中術】を使ってたんです」
「なんだいソレは? ……なんか凄そうだけど。それに、闘神様に関わりがあるのかい?」
ダナさんは【房中術】を知らないらしい。【房中術】は性的な事が主ではなく、本来は体内の気を体の隅々に循環させるものだ。
そうして肉体を活性化させ、自然治癒能力などを強化する。元々自分自身に使う技だが、触れていれば他人にも使える。
そもそも性的な部分は副次効果にしか過ぎない。そんな事を詳細に話す。
「そ、そんな技があったなんて……道理で昨日の夜スゴかった訳だ///。アタシ、死んでもいいと思ったのは初めてだったよ」
「いやいや、流石に死ぬのは困りますよ」
「ふ~ん、困るんだぁ……」
「なんか、昨日から変わってませんか? ダナさん」
「さん付けじゃなくて、呼び捨てにしな」
「分かりま……いや、分かったよ”ダナ”」
「////。……そ、そろそろ服を着て朝食を食べに行こうか」
「ちょっと待って、口を開けて下さい」
「?」
疑問はあるんだろうが素直に口を開けてくれたので、ダナの口内を浄化する。鬼人の血も継いでいるからか犬歯が鋭い気がする。
「神様の【権能】をこんな事に使うんだねぇ……。モゴモゴ……何かとんでもなく綺麗になってるよ!?」
「浄神が教えてくれた使い方ですよ? 何でもこれ以上綺麗にする方法は無いと言ってました」
「か、神様………」
ダナの神様観が壊れそうなので、服を着てさっさと食堂に移動しよう。神様なんてそんなものだと思うんだがなぁ。
利用できるものはなんでも利用しろ! という神様ばっかりだし。神様にとって【権能】も利用できるものの範疇にあるし。
食堂に入ると女将さんがこっちに来て、ダナの顔を見ながら話しかけてきた。物凄くニヤニヤしてる……。
「昨夜は”お楽しみ”でしたね」
なぜ異世界の宿の女将さんが、伝説のセリフを知っているんだろう? 宿屋だからか?。
そんな下らない事を考えていると、ダナと女将さんは二人で楽しそうに会話を始めた。朝食を食べる為、従業員に二人分の注文を出しておく。
カウンター席に座り注文を待っていると、ダナがこっちに来て隣に座った。何やら嬉しそうでニヤニヤしている。
「トーカがね、気兼ねなく部屋に行けばいいってさ。なんならアルドの部屋のマスターキーを渡すからって言われてね」
俺のプライベートが無くなったらしい。そこまでプライベートを重視する性格じゃないが……。
まぁ特に問題はないな。仮に盗まれても、お金はともかく武器はまた作ればいいだけだし防具は持ってない。
俺が防具を着けないのは良い革製の防具は高い事と、攻撃を回避する修行を徹底的にやらされたからだ。あれは地獄だった……。
思わず遠い目をしていると朝食が来た。今日の朝食は大銅貨2枚だ。二人分を支払い食事を始める。
「アルド、アタシの分もありがとう。今日はどうするんだい?」
「今日も森の方へ行って魔物を狩ります。少しでもお金を稼がないといけませんから」
「……まぁ大丈夫だと思うけど気を付けな。あそこは複数の魔物に襲われやすいんだ。弱い魔物でも集団になると簡単に殺される事もある。逃げるのは恥じゃないからね」
「退き際は正しく理解してます。そこを修行中に間違えて何度殺されかけた事か……」
本当にあのクソ爺は容赦がなかった。丁寧に教え容赦がないのが爺クオリティであり、回避と撤退の修行は二度とゴメンだ。
【闘気術】なのに爆発するし雨の様に降ってくる。そんな攻撃から撤退する修行なんて、本当に二度とやりたくない。
「ま……まぁうん、問題ない事はわかったよ。昨日みたいに邪生が出るかもしれないけど……アルドの場合はどちらかと言えばカモか」
「そうですね、狩るのは難しくないです。むしろ後の処理の方が大変ですよ」
「そこはもう慣れるしかないよ、傭兵は誰だって通る道さ。アルドは大分マシだし恵まれてるよ?」
「それは分かっているんですが、面倒なものは面倒なんですよ」
朝食も食べ終わった後、ダナから口の浄化を頼まれた。自分の口を浄化した後、ダナの口を浄化したら突然キスされる。ゆっくりとキスをした後、唇を離したダナは一言。
「こういうのに憧れがあったんだけど、やっぱりいいもんだねぇ。……今までで一番幸せ」
そう言って微笑むダナは、とても綺麗で可愛かった。
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0011終了時点
金貨4枚
大銀貨8枚
銀貨12枚
大銅貨4枚
銅貨1枚
鋼の短刀
鋼の鉈
鋼の槍