1184
メルがアンクを使っても制御出来ないと聞いて、皆は唖然としているが、当のメルは高位魔法の中位と言われて納得していた。どうやら高位魔法の練習をした事があるらしい。そして、どれも制御出来なかったそうだ。まあ、当然だろう。
「高位魔法って、そこまで制御が難しいのかい? 私やシュライアだって【神聖八重浄化】が使えるんだよ? 流石にそこまで違うというのは……」
「アルメアは勘違いしているが、【神聖八重浄化】は上級魔法の中位ぐらいの難易度で、そこまで難しい魔法じゃない。浄化魔法でいうなら、【浄封】や【浄命】の方が難易度は高いんだ」
「確か浄化魔法の紙束に書いてあったと思いますけど、どんな魔法なのかは覚えていません。いったいどんな魔法ですか?」
「【浄封】は呪いを封印する浄化魔法だ。ほら、童子切という刀に封印されてたろ? ああいうものを封印しておく為の魔法だ。【浄命】は制御は難しくないが、生命力も使用して対象を封印する魔法だよ」
「それって命を犠牲にするような魔法の気がするんだけど? 何でそんな魔法を浄神様が作ったのかしら?」
「命を犠牲にしてでも封印しなきゃいけないものが、地上に現れかねないからだな。結果として、誰かが命を犠牲にして封印した御蔭で助かったのかもしれない。浄神も、あくまで保険として用意したんだと思う」
「話が聞こえたから来たが、童子切の話なら、源頼光に同行した巫女が命をかけて封じたと伝わっておるな。頼光が持っていた刀で斬りつけたが、それは肉で止まって動かせなくなったそうだ。そこを起点にして【浄術】を使い、刀に封じ込めたと伝わっておる」
「ふーん。そこまでしなきゃいけなかったって事は、倒せなかったんだな。まあ、アレも呪いによって強化されたんだから、人間種の手では倒せなかったのかもしれない。となると、永く封印されていたので弱くなっていたのかもしれん」
「成る程な。書に残っていた話では、人間種が敵うような相手ではなかったという風に書かれていたが、かつては本当にそうだったのかもしれん。結局のところ、古過ぎて何が本当かは分からないのだが……」
「昔に封じられたり、倒されたりした者は多いですからね。我が国や近い国にも、かつての時代に大妖が居たとも言われていますし。本当に居たのか、または本当に倒されたのか疑問なのも多いのですが……」
「まあ、何にせよ、ヤシマの国で最も強い妖と言われる酒呑童子でさえ浄化してしまったのだ。他のは相手にもならぬだろう。おっと、かつての方々は神社で祀っているので問題は無いだろうしな」
……ああ、崇徳天皇と菅原道真か。とはいえ、どちらも微妙な方々なんだよな。崇徳院はそもそも恨んでいたって記録なんか無いし、菅原道真も同じで死後に怨霊扱いされている。
どちらも謀略で失脚しているところは同じだから、怨霊だ祟りだと言われるのだろうが、謀略をした奴の名は殆ど知られていなかったりする。崇徳院は暗殺されたとも言われるし、道真は飢え死にに追い込まれているし。
謀略をした側がクズ過ぎて、崇徳院も菅原道真も同情しか出来ない。幾らなんでも、やって良い事と悪い事の区別も出来んのか、とは思う。これは日本三大怨霊の最後の1人である、平将門に対しても同じだが。
晒し首なんかにするから、いつまでも名前が残るんだよ。<新皇>を名乗った事に怒り狂ったのか知らんが、京の都で晒し首にした所為で、いつまでも将門伝説が残ったままだ。むしろ当時の朝廷の事の方が小さくなってしまっている。
まあ平将門に関しても、名乗ったのは<新王>であって<新皇>ではないという説もあるらしいし、当時の事なんて朝廷の都合良く掛かれた書物しか残ってないだろうから、そもそも眉唾な話なんだけどな。
そんな話は横に置いといて、今やっている昼食作りを真剣にしよう。美味しくない物が出来たら凹むしな。今日の昼は角煮まんと野菜のスープだ。出汁は乾燥椎茸と乾燥松茸になる。どちらも【粉砕】して入れておいた。
角煮を素早く作り、生地作りの手伝いをしていたんだが、そこで下らない思考に逸れたんだ。今は蒸している最中なので、今の方が思考しても良いタイミングなんだが……。
さて、1回目が出来たので皿に乗せて、2回目をセットしてから食べるか。
「それで、昼食が始まったから改めて聞くんだけど、ダンジョン内でいったい何があったんだい? 途中で気付いたら居なくなっててビックリしたんだよ。そこの説明はしてもらわないとね」
「簡単に言うと、ダリアとフヨウが何かを見つけたんで、その方向を調べたら石板が落ちていたんだ。それを拾って確認したら、【錬成魔法】の新魔法で【分解】という魔法だった」
「【分解】……ですか。言葉の響きから嫌な予感がヒシヒシと感じられますね」
「【分解】の魔法は読んで字の如く、対象を最小の粒子にまで小さくする魔法だ。完全に解されて、見えないぐらいにまで小さな物にされる。そう言えば伝わるとは思う。当然、生きていないものにしか使えない」
「それで安心……とはならないわね。アルドが死体を処理するには便利なのかしら? ただ、高位魔法の中位に匹敵するほど難しいのよね? アルド以外には誰も使えないから問題は無いのでしょうけど」
「その後、ちょっと放心状態になって、気付いたら転移紋に乗って19層に行ってたんだ。新魔法に驚きすぎてたんだろう。19層は砂漠の地形で大きな虎が出てきたんだが、コイツが邪気と呪い塗れの奴だった。【浄化】して木像をゲットしたんで、さっさと脱出紋に乗って皆と合流した訳だ」
「という事は、これで皆が木像に乗れるようになったんだね。これで全員が速く移動出来るけど耐えられなさそうなのも居るし、そう簡単には使えないね。まあ、あたし達だけで使えば問題ないけどさ」
「そうですね。それに、早く移動しなければいけないという事も今は無いですし、このままゆっくりしていれば良いと思いますよ。そう言っていたら、また妙な事に巻き込まれたりしそうですけど」
「それはねぇ、どうしようもないさ。アルドも言ってたけど、面倒事は向こうから突っ込んでくるんだよ。こっちが避けてもぶつかって来るから、どうにもならないのさ」
そんな事を話していると誰かがやってきた。声からすると千代女か……。嫌な予感しかしないし、何かを伝えに来たんだろうが聞きたくないな。とはいえ、聞かないという選択肢は無い。諦めよう。
「何といいますか、私を睨まれても困るんですけど……。伝える事があるから来たんですよ? 皆さんが何を思われようと、話すのが私の仕事ですから!」
「まあ、そうだけどね。毎回、食事の時に来るのは何故なんだろうね? ……どうして君は横を向くんだい? 私の方をしっかり見てみなよ、さっきみたいに」
必死になって千代女は目を逸らしているが、アルメアは目の前まで近付いて千代女に圧を掛けている。必死に目を逸らしているのに、ほんのり顔が赤いのはどういう事だ? あっ、アルメアが圧を掛けるのを止めた。
「ゴホンッ! えーっと……私がお伝えする事ですけど。あれ? 何だったかな……ああ、そうだ。越前が加賀から攻められました。それでですね、加賀は相当の勢いで一気に来たらしく、越前は押し込まれているそうです」
「ふむ、朝倉教景が亡くなったからか。とはいえ、一気に脆くなったようだな。所詮は1人の男に支えられていただけか、朝倉も情けないものよ。あそこも斯波から奪ったまでは良かったのだろうが、それで終わりか」
「それで、加賀の者達の攻勢に降伏している者が国境には出ているみたいなんですが、加賀の者達は根切りにしながら進んでいるそうです。何でも、攻めてきている連中が奪い合いをしていると聞きました」
「それこそ本当の地獄絵図じゃないか。攻めている連中の中で殺し合いでもしてるんだろうよ、金品の奪い合いでな。正に地獄絵図としか言えないぞ。加賀の連中って神殿の連中だろ? 本当に碌な事をしない奴等だな」
「それはいいけど、アルドはどうするんだい? 介入して神殿の奴等を叩くか、それとも無視するか……」
どうしようかな……でもなー、越前って雪深いんだよ。この時季にあんまり行きたくないなぁ。
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ヒュドラーの毒ナイフ
山羊角の杭
キマイラの短剣
神金のヴァジュラ
神石の直刀
神木の浄化棍棒
神木の杵
神木石の錫杖
神木の浄化盾
氷擲竜の棒手裏剣
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




