1145
吉法師と帰蝶が美味しそうに食事をしているのは何も問題無い。問題無いんだが……急に横に現れた女性は何なんだ? 何となく小見の方だとは思うんだが、俺には分からん。
「私は斉藤美濃介利政様の正妻で小見と申します。先ほど戦の音がしなくなったので帰蝶を見に来たのですが、まさか食事中とは思いませんでした。帰蝶の体を強くして頂いたとの事、感謝致します」
「別に構わないさ。子供が咳こんで苦しんでいるんだ、見ていられなかったしな。ただ、誰に対してでも助ける訳では無い。それは覚えておいてくれ」
「ええ、分かっております。……ところで帰蝶が食しておるコレは、いったい何でしょうか? 何やら大変、美味しそうな香りが致しますが」
「あー……。しょうがないな、食べたいなら好きにするといい。ただ、吉法師や帰蝶の食事だという事を忘れないでくれ」
「ええ! 存じておりますとも」
大喜びで箸や椀を受け取ったなー。まあ、好きにしてくれ。頑強になった吉法師や帰蝶が十分に満足する量を作ってある。何より、俺の夕食でもあるからな。周りでジーッとこっちを見ていた連中も、小見の方が食べている以上は何も言えなくなったようだ。
その為に来てくれたのならありがたいんだが、絶対に違うよな? 何だったら吉法師や帰蝶以上に喜んで食べてるし。肉も摂らなきゃ体に良くないから、これを機会に食べるようになれば良いがな。とはいえ、血抜きなどの処理はちゃんと出来るのかねぇ。
そんな事を考えながら食事をしていると、マムシさんが戻ってきた。小見の方が居る事に驚いているが、直ぐに諦めたのかこっちに話しかけてきた。
「敵兵に止めを刺したのは此方だが、大半の兵を倒したのはそなたと子供達なのだが……。本当に敵兵の武具をワシらが受け取って良いのか? アレも売ればそれなりの値になるぞ?」
「大白金貨とか大金貨を大量に持っている奴が、敵兵の鎧兜を売って儲けようとすると思う? そんな事は無いよ。わざわざ売る面倒臭さを天秤に掛ければ、面倒でない方を選ぶのは当然だ。ほかに儲ける方法は幾らでもある」
「儲ける方法が大量にあるのは羨ましいが……まあ、それはいいじゃろう。それはともかく、ワシにも食事をくれんか?」
「奥さんも既に食べてるし、今さらか。箸や椀はあるから直ぐに出すよ。っと、そうなると足りないな。仕方ない、追加で揚げるか。吉法師も帰蝶も、まだまだ食べそうだしな」
俺はマムシさんに箸や椀を渡し、御飯や味噌汁を入れてやったら追加でシルバーチキンを揚げていく。周りの連中は鶏肉に全粒粉を塗している事に驚き、脂で揚げるという調理法にも驚いている。最も驚かれたのは竜の脂の香りだったけど。
再び周りに暴力的な香りを撒き散らしながら肉を揚げていると、4人が待っている事を【空間把握】で理解した。もう食い終わったのかよ。味噌汁も美味しかったのだろう、とっくに無くなっていた。
「よく食うもんだ。味噌汁も飲み干したのか、鍋が空っぽだとは思わなかった。乾燥椎茸を使っていたから美味しかったのかね? まあ、ヤシマの国で気に入られる味だったんだろう」
「椎茸!? あの味噌汁には椎茸が入っていたのか! そんな高価な物を惜しげもなく使うとは……何という贅沢な事をするのだ」
「すまんが、俺達にとっては普通の事だ。<穢門>。つまりダンジョンの事なんだが、そのダンジョンの中には様々な物がある。その中に椎茸もあって、ダンジョンの中に生えているんだよ」
「尾張者は穢門に入って穢れておる、などと美濃の神殿の者は言うておる。言うておるが、穢門……いや、ダンジョンか。そのダンジョンの中には食べる物があるという事なのだな?」
俺はシルバーチキンを揚げながらダンジョンの事を説明していく。揚げたての唐揚げの熱さに悪戦苦闘しているので、聞いているのかは知らないが。とはいえ、マムシさんは流石に聞いていたらしい。
「ふうむ。ダンジョンとやらが儲かる場所であり、だからこそ神殿の者どもが必死に阻止しようとしておるとは。しかし美濃に穢門ことダンジョンがあったかのう? もしかしたら美濃には無いかもしれん」
「殿、確かイノグチの町に向かう道の南に、穢門があると聞いた事があります。あの分かれ道は南への道がありませんので、地元の者ぐらいしか知らぬのではないでしょうか?」
「何と、そのような所に穢門があったとは……。中にある物は穢れておるので、外に出した後で浄化せねばならぬか……。ただ、椎茸のような物があれば、少ない苦労で多くの儲けが出せるのう」
「後は苦労する覚悟があるなら金属類だなぁ。銅や鉄、あるいは銀や金も出る。山の地形があれば、後は探すだけだ。ただしダンジョンモンスターは、侵入者を殺す死兵だという事を忘れないようにな」
「うむ。確かにそれがあったのう。とはいえ、そのダンジョンモンスター? とやらも浄化すれば食えるのであろう? ならば、そこら辺にいる獣と変わるまい。何より、料理によってはこんなに美味い物になるのだからな」
しっかしよく食ったなぁ。途中で御飯が無くなったんだが、その後も納得するまで唐揚げを食ってたぞ。周りのお付きの連中も呆れていたくらいだ。まあ、お付きの連中も後で食事をするんだろうし、気にしなくてもいいか。
夜になってきたので戦は一時終了だ。この世界では余程の事が無ければ<夜討ち朝駆け>などしない。夜に攻めようとすれば、確実に魔物に襲われる。少人数で忍者が調べるのも難しい。魔物が騒ぐから、高確率で居場所がバレる。
騒がれる前に魔物を倒すか、魔物に見つからない技が無いと、夜間に調べるのは無理だと言える。そういう意味では、この世界の暗殺は強引にならざるを得ない。夜中に多人数で押し入り、一気に目標を殺す。
まあ、それをやっていたのが三雲となるんだが、スマートな暗殺はこの世界のヤシマの国では無理だ。特に山城なんかに篭られると無理だと言える。出来るのは内部犯ぐらいで、外部から……あれ? 暗殺すればよくない?。
土岐頼芸を暗殺すれば、内部犯が疑われて勝手に崩壊しない? もしくは山羊角の杭で刺してしまうか? いや、コレは駄目だ。色々なところで見せてしまっている。流石に症状から俺の犯行だとバレてしまう。
となると、やはり暗殺が1番良い。夜中に出て土岐を暗殺してこよう。そもそも吉法師と帰蝶が見つめてきて、その圧力に耐えられなかっただけだしな。俺としては、そこまでして助けたい訳じゃない。さっさと終わらせよう。
考えを纏めた丁度その時、お子様2人はお腹いっぱいでお眠になったらしい。仕方ないので部屋を借り、2人を寝かせ白い毛皮で包む。これで寒くないだろう。2人は【浄化】してあるので綺麗だし、このままゆっくり寝るといい。
何故かマムシさんも近くに居て鬱陶しいんだが、そのうち何処かに行くだろう。そう思っていたら、俺の考えている事がバレていたようだ。
「そなた、頼芸を始末しに行くのだろう? そういう者の顔をしておる。ワシが命じてこの部屋には誰も近付かんようにしておく。ああ、ワシは何も聞かぬし聞きたくもない。何も知らんよ」
そう言ってマムシさんは部屋を出て行った。参ったな。暗殺前にそれを言われると、殺しに行くしかなくなるじゃないか。正直、面倒臭いなーという思いも無い訳じゃなくて、殺しに行くか行かないか悩んでたんだよ。上手く煽るもんだ。
強い力を持ってはいても、こういうところは素人だからなぁ、俺は。歴史の偉人だと思われる人達と争っても仕方ないんだけどさ。さて、土岐を殺すんだけども、殺し方はどうしよう? 恨みで殺したように見せかけるか、それとも突発的な殺人に見せるか……。
杭を刺して放置するのが、1番手っ取り早いんだがな。流石にその手は使えないし……どうしたもんか。
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1145終了時点
大白金貨46枚
白金貨219枚
大金貨694枚
金貨596枚
大銀貨546枚
銀貨598枚
大銅貨1331枚
銅貨469枚
ヒュドラーの毒ナイフ
山羊角の杭
キマイラの短剣
神石の直刀
神木の浄化棍棒
神木の杵
神木石の錫杖
神木の浄化盾
氷擲竜の棒手裏剣
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




