1113
目の前に武田信玄こと晴信が居るが、そもそも女性なので風林火山的な重厚感は無い。動きやすいように袴を履いているものの、強そうには見えないし普通の女の子に見える。それでも普通の武士よりは強いんだろう。
「あの武田殿、強いと聞いたとはどういう事でしょうか? 私は強さを誇った事などありませんし、誰かに伝えた事も殆ど無い筈なのですが……」
「我が武田の使者がこちらに来たところ、私より強い方がおり、その方は松平家の当主であると言われたそうですよ? 確か……使者は大久保とか本多とかいう者から聞いたとか……」
「お前等かぁーーーっ!!!」
おお、広忠が怒ったぞ。これは珍しい事もあるもんだ。とはいえ、怒って当然としか思えないけどな。それにしても馬鹿どもはどうしてこう、碌な事をしないんだろう。自分が責任を負わないで済むとでも思っているんだろうか。
「アルド殿、この田分けどもの毒を治してもらえませんか? 私がこの阿呆どもの性根を叩き直します!」
「ああ、分かった。それにしても大変だな、広忠も。勝手な事をする阿呆など家臣としてすら必要無いっていうのに、こいつらはそんな事も理解せず勝手な事をしている。譜代じゃなく、新しい家臣を探した方がマシかもな」
俺が【神聖八重浄化】を使いながら【浄化】の権能で治していると、他の武士達の顔色が明らかに悪くなっていた。今の今まで、自分達の勝手が許されるとでも思っていたのだろうか?。
そもそも大久保と本多って松平や徳川でも有名な奴等だけど、ここまでポンコツだったか? 何か違うような気がするんだけど……そもそもこいつら何で勝手な事をしたんだろう。ちょっと気になる。
「忠俊! 忠高! お前達は何故勝手な事をした。そもそも私が誰と婚姻するかは皆で話し合う事……もしくは私が決める事だ。何故お前達が勝手に口を挟む。お前達は私を裏切る気か?」
「滅相もございませぬ。我等は清康様と変わらず殿に尽くす所存。我等の忠義をお疑いとは……この大久保忠俊、納得出来ませぬ!!」
「勝手をしておいて忠義とは、三河の武士は獣以下だな。忠義という言葉の意味すら知らんらしい。忠義と感じるかどうかは主が決める事であり、お前達が決める事ではない。主が勝手だと言えば、それは勝手なんだよ」
「「………」」
「家臣が忠義だと言うて好き勝手をするなど、父上と共に山ほど見てきたわ。今の足利には、そんな家臣ではない家臣しかおらぬ。まあ、自業自得とも言えるがな」
「我が越後も似た様なものですので、何とも言い辛いですね。ヤシマの国の多くがそんなものなのかもしれません。強いて違うとすれば尾張ぐらいでしょうか? あそこは愚か者が戦で随分死んだようですから」
「まあ……そうじゃの。風通しは随分良うなった。誰かさんが戦の折、役に立たぬ者や邪魔者のみを始末してくれた御蔭で、いちいち五月蝿い者は殆ど居なくなったわい」
「それは羨ましい。我が国からも消えてくれんかと思う者は多いのですよ。そういう者に限って戦に出ても前に出ず、後ろでいつでも逃げられるようにしている者ばかり」
「そして戦が終われば、また好き勝手を言い出す。本当に碌でもない連中はどこにでも居るようだ。武士とは戦う者であり、口先だけなら獣を置いておいた方がマシだ」
「その話は横に置いておくとして、大久保と本多とか言ったな。木刀を持って向こうへ行け。広忠はこっちだ、俺が「始め」と言ったら試合の開始だ。全力で戦っていいが、殺すなよ広忠」
「分かってます。幾ら腹立たしくとも、私はこの者どもを使わねばならぬ立場。ただ、使う前に”躾”をせねばならなかったのを忘れていただけです」
おやおや、広忠はどうやら本気で怒っていたようだな。その事に遅まきながら大久保忠俊と本多忠高は気付いたらしく、顔色が悪い。自分達の勝手を忠義だと押し付けたんだ、徹底的に叩かれるといい。
清康の頃も似たような事をしていたのかもしれんが、広忠の代では通用しない。その事を身に沁みるまで教えてやれ。………それはいいんだが、何で阿呆2人は俺に対して怯えてるんだ? もしかしてヒュドラーの毒ナイフの所為か?。
「それでは両者構えて………始め!」
最初から全力で木刀を振るう広忠に対し、大久保も木刀で応戦する。広忠は身体強化を使ってないな? いや、少しずつギアを上げるように使い始めた。当初、余裕を持って受けていた大久保も今は必死だ。
それでも少しずつギアを上げていく広忠に対応出来ず、肩や腕や腹に木刀を受けて最後は鳩尾に喰らった。今は蹲って悶絶している。それに対して広忠は汗1つ掻いていない。
次は本多との戦いだが、悶絶している大久保が邪魔だな。俺は右手で大久保の足首を持ち、引き摺って遠くに持っていく。次の本多に試合場所まで行くように言い、最後に大久保を放り投げた。
試合の開始位置まで来た本多は既に顔色が悪いが、そんな事は誰も気にしない。
「それでは両者構えて………始め!」
先程の試合を見ていたからだろう、最初から本気で戦っている。ただ、そんな本多の気合い虚しく、広忠は全てを綺麗に捌いていく。どうやら練習は怠ってなかったようだな。
本多は自分が勝てないのは理解したんだろう。それでも必死に木刀を振り下ろすが、最後に大久保と同じく鳩尾に喰らって終了だ。さて、コイツも向こうに捨ててくるか。次は<甲斐の虎姫>だしな。
武田の姫が出てきて慌てる広忠だが、そんな事はお構いなしなのか晴信のテンションが高い。おそらく本気で戦える相手だと理解したんだろう。まあ、もともと予定通りの試合だ。広忠、頑張れよ。
「それでは両者構えて………始め!」
2度の戦いを見ていたにも関わらず踏み込んで行く晴信。何か理由があるのかと思ったら、一気に近付いて接近戦を挑んでいた。正しくは木刀を防御に使い、殴る蹴るの接近戦だ。当然、剣しか使ってはいけないなどという決まりはない。
それでも広忠に逸らされ、流され、いなされている。あの程度なら反応が遅れても、身体強化を使えば間に合う。だからこそ余裕を持って対処出来ているのだろう。逆に言えば、身体強化が使えない相手にしか優位ではないという事だ。
まあ、広忠のやるべき事は纏める事であり、前に出て戦う事じゃないからなぁ。これで十分と言えば十分だ。上の立場になればなるほど、事務仕事などになるのはしょうがない。後は戦とか交渉かね。
散々攻め続けたが、最後に広忠の木刀が晴信の右腕を叩いて決着となった。甲斐から来た武田家の家臣は驚いているが、俺からすれば身体強化も無しによく頑張ったと思う。それぐらい、使えるかどうかで差が出るからな。
晴信は負けたが笑顔だ。自分の全力を出せて嬉しいのだろう。ただ、婚姻の話は無かった事にしてほしいと言いだした。アレは自分が他国の事を調べに行く為の方便であり、もともと結婚する気は無いとの事。
何だそりゃ……と皆が呆れてしまったが、広忠はこれを了承した。代わりに自分が負けた事にしてくれと言って。
この事に対して晴信は相当渋ったが、結局受け入れざるを得ないとして納得した。
ちなみに広忠が負けた事になると聞いて阿呆2人がギャーギャー言ったので、ヒュドラーの毒ナイフをチラつかせて説得すると直ぐに納得してくれた。周りからはジト目を喰らったが……。
気付いたら夕日が出てきていたので、もう夕方らしい。バカの所為で無駄に時間が掛かったり、試合をしたりで予想以上に時間を使っていたようだ。広忠が岡崎城に泊まっていってほしいと言うので、お言葉に甘える事にした。
と言っても、自分達の夕食は自分達で用意する事を先に言っておく。何故なら今日の夕食はグレイトシープだからだ。それを言うとウチの女性陣全員と藤達が納得した。
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1113終了時点
大白金貨44枚
白金貨208枚
大金貨598枚
金貨457枚
大銀貨431枚
銀貨461枚
大銅貨1181枚
銅貨408枚
ヒュドラーの毒ナイフ
山羊角の杭
キマイラの短剣
神石の直刀
神木の浄化棍棒
神木の浄化盾
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




