0110
王城の入り口にある門を出て、貴族街を歩いている。意外にも、誰も気に留めない様だ。ダリアとカエデが遊んでいるのを見ていると、物凄く癒されるなぁ。
「アレで良かったのかい? 作っても良かった気はするけど」
「王太子が良い人物か悪い人物か、判断がつかないからな。あの場は撤退が正しい」
「この国の王太子は優秀だと聞いていますが……」
「噂ほど、当てにならないものは無いよ」
「確かにそうですね。村長をやっていた間、そんな事はよくありました」
「それはいいけど、報酬はどうするんだい?」
「払わなきゃ、ケチだと言い触らすだけだよ」
「醜聞ですね。とはいえ、王女が契約して払わないなら仕方のない事です」
「そういう事。チャチな報酬より、強力な武器を手に入れたと思えば良い」
「支払わないと完全に面目が潰れますね」
「流石に王女もライブルもそこは分かってるだろうから、詰まらない結果になりそうだが……どうなるやら」
「そういえば貴族街は抜けたけど、どこに行くんだい?」
「解体所」
解体所に着いたので、サイクロプス6体、ケンタウロス1体、ミノタウロス1体を出して売る。解体所の職人には物凄く驚かれたが、どうやら3種とも滅多に売却されないらしい。
3種とも1体金貨2枚だったので、全部で金貨16枚になった。ギルドへの道すがら、1人金貨4枚を受け取る。随分儲かったが、あそこまで潜っての値段だと考えるとちょっと……。
苦労に見合ってるのかどうかは難しいところだ。迷宮が変化したら、また1層ずつ調べなきゃいけない。それを考えると微妙だと思ってしまう。
ギルドに入って受付で手続きをする。なぜか受付嬢が上に行き、待っているとギルマスのオッサンが下りてきた。オッサンは真っ直ぐこっちへ来る、なんかあったのか?。
「お前、いったい何をやった!? <死神の手>が壊滅したらしいじゃないか!?」
「何故、それを俺に言うんだ?」
「お前が何かやったんだろう?」
「はぁ? 俺がやった証拠がどこにあるんだ?」
「証拠なんぞ無くとも、お前だろ!?」
「何を言ってるんだお前は? 証拠も無しによく分からんのを壊滅させたとか……お前は俺に濡れ衣を着せるつもりか?」
「そうは言っとらん! だがお前だろう!?」
「意味が分からん。証拠も無しに勝手に決めるな」
「何故認めんのだ? 報酬が出るんだぞ!?」
「だから知らんと言ってるだろう。他の奴に聞け。もしくは証拠を持ってこい。勝手に俺の所為にするんじゃない」
「ぬ……。証拠が無い以上は仕方がないか………」
「あぁ、戻る前に一言。貴族の言いなりだと死ぬぞ?」
ギルマスのオッサンは、怯えた顔をして足早に去って行った。オッサンに報告に行った受付嬢も怯えているが、面白い事に他の傭兵は受付嬢達を睨んでいる。
傭兵にとって自由である事は、とても重要な事だ。しがらみが嫌で傭兵をやってる奴も居るぐらいだからな。その傭兵ギルドが貴族の言いなり……なんて事になったら間違い無くマズい。
暴動が起きるか、焼き討ちに遭うか。結果は碌でもない事にしかならない。実際それぐらい傭兵にとって自由というのは大事なものだ。王都はギルドと傭兵に温度差があるみたいだな。
手続きが終わった帰り道、そんな事を話してみる。
「あのギルマスが腰抜けなだけさ!」
「クソ貴族の言いなりなんて、傭兵ギルドではありませんね!」
「傭兵が権力者のいいなりになるのは、色んな意味で危険な事だわ」
「王都だから絡んでくるバカも多いんだろうけど、その為のギルマスだろうに」
昼が近かった為、食堂に行き大銅貨6枚を支払い昼食にする。食後ゆっくりとしてから宿の部屋に戻ると、3人は早速とばかりに酒を飲み始めた。
それを横目に、俺は武器の改修をする事にした。まずはマナリアの鎖鎌だが、これは素材に戻す。流石に鎖鎌はマナリアの使い道としては勿体ない。別の物に変えてしまおう。
素材に戻した後は一旦置いておき、それぞれの武器の木材部分を硬木に交換していく。この作業に結構な時間が掛かった。ただ流石は硬木と言える物となり、3人も満足している。
振り回している3人は横に置いておき、真っ黒なゴブリンとオークの使い道を考えないといけない。どちらも皮は薄いのに強靭で柔らかく、骨も非常に硬い。有用な素材なだけに困る。
最終的に4人分のブーツにする事に決めた。皮を革に加工し、それぞれの足に合わせていく。爪先やソールに骨を被覆して、ブーツの完成だ。革が妙に足にフィットするぞ?。
3人も妙にフィットするらしい。そういう特性の革なんだろう、たぶん。まだ素材は余ってるが、そろそろマナリアに手を付けようか。しかし、何に作り変えようかな……?。
折角硬木があるのでウォーハンマーにする。鎚頭部分をマナリアで作るのだが、先端に円錐の突起を付けた物にしよう。反対側はピック状にして引っ掛ける事が出来るようにする。
柄の長さは1メートルで、片手でも両手でも使える長さにしておく。完成したのだが、早速シュラが持っていって振ってる……。あれは置いといて、こうなるとメイスが要らないな。
アダマンタイトを素材に戻し、全員の十手をアダマンタイトで作る。基本的には護身用の武器なので、質が良い方が良いだろう。こうなるとオリハルコンも分解するか……。
オリハルコンの質は良くなかったので。精錬すると半分近くまで減ってしまった。この量だと……苦無で良いか。長さ15センチ程のいわゆる大苦無と言われる大きさで作って終了だ。
「この妙な物はなんだい?」
「ナイフにしては変な形ですね?」
「それは苦無と言って、色んな事に使われていた物だよ」
「「「色んな事?」」」
「穴を掘ったり、壁に刺して足場にしたり。本当に色んな事に使われてたんだよ」
「この輪っかの所は、どう使うのかしら?」
「そこに紐や縄を括り付けて投げつけたり、どこかに引っ掛ける為の錘に使ったりするんだ」
「本当に色々な事に使われるんだね」
「備えとして持っておく物だからな。ところで、そろそろウォーハンマーを返してほしいんだが?」
「ウォーハンマーですか……確かに戦争用ですね」
「いやいや、シュラは気に入り過ぎでしょう?」
「一旦こうなると手放さないんだよ」
「それ、メイスの代わりとして作ったんだが……しょうがないな」
「片手でも両手でも使えて便利なんですよ!」
「いや、そういう風に作ったんだよ……」
「「シュラ……」」
「ちょっと待って下さい。使ってみたくありませんか?」
「まぁ、分かるけどね」
「分かりますが……持っていくというのは、ちょっと………」
まだ抵抗してるが好きにしてくれ。良さ気な武器があったら使ってみたいという気持ちは、分からなくもない。無いなら無いで、他の武器を使えばいいだけだしな。
さて、ゴミを捨ててくるか。宿の庭に行き、穴を掘ってゴミを【粉砕】して捨てる。……もう、夕方だったのか。
俺は3人に一声掛けて、2匹と一緒に食堂へ行く。大銅貨6枚を支払い待っていると、3人もやってきた。夕食後に酒を飲み始めた3人と2匹に呆れながら、周囲を警戒する。
悪意を持つ奴が何人か居て、こっちを監視している。ただし、監視技術が低過ぎてバレバレだ。【悪意感知】を使ってる俺だけじゃなく、3人も2匹も気が付いていた。
全員、王都に来てからアイテムバッグは肌身離さずに持っている。武器はいつでも出せるので、ゆっくり警戒するだけにしておく。皆は横目で確認したりしているが、もしかして傭兵か?。
傭兵なら、あのクソなギルマスの手下か……それとも受付嬢の関係か。誰を監視して、誰に喧嘩を売ってるのか、傭兵なら理解している筈だがなぁ。ま、そろそろ部屋に戻るか。
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0110終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨10枚
金貨50枚
大銀貨32枚
銀貨14枚
大銅貨74枚
銅貨5枚
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトの小烏丸
剣熊の爪のサバイバルナイフ
オリハルコンの苦無
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
二角の革の帽子
剣熊と銅亀の革鎧
剣熊の骨の半篭手
剣熊の革の指貫グローブ
剣熊の革の剣帯
剣熊の骨の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ