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0010




 「そういえば邪生の件の報告中だったね。色々あって飛んでたよ」


 「他に報告する事は有りませんよ?」


 「うん……確かに。話は変わるけど、アルドは宿に泊まってるのかい?」


 「村に宿は一軒しかないんですから、当然宿に泊まってますよ?」


 「……普通の傭兵や低ランクは、ギルドが提供する安い宿泊所に泊まるんだよ。一泊銅貨2枚で安くて安全だから、そこを拠点にお金を稼いでいくのさ。特に新人は寝るしか出来ない、狭い部屋の洗礼を受けるもんなんだけどねぇ」


 「また常識が無い事が明らかに……。ダナさん、時間があれば常識を教えてもらえませんか?」


 「夜に宿に行くから、そこで”たっぷり”教えてあげるよ。とりあえずミュウの所へこの木札を持って行くんだ、それでランク2になる」


 「ランク2……。早すぎて妬まれませんか?」


 「嫉妬する奴なんて放っておきな。そんなヤツはどうせ大した実力も無い奴らだ。それにオークの邪生をソロ討伐した奴を、少なくともランク4以下に置いておく方が問題さ」


 「なるほど……実力に合ったランクになれと」


 「ギルドとしちゃ当然の事さ。取り合えずここで喋ってないで、カウンターに行って手続きしておいで」


 「了解です」



 手続きを済ませる為に一階に下りると、多くの人がこちらをじっと見てきた。その視線を無視しながらミュウさんの所へ行き、買い取り証明の木札とランクアップの木札と登録証を渡す。



 「えっ!? これは……ランクアップ? もうランク2ですか!?」


 「そういう事らしいです。オークの邪生を倒したので、その結果だそうで」


 「凄いですね! おめでとう御座います! 登録してまだ4日、このギルドでも相当早いランクアップですよ!!」


 「ありがとう。そろそろ手続きを頼みます」


 「申し訳御座いません、直ぐに始めます」



 ミュウさんは急いで手続きをしてくれた。そこまで急いでる訳じゃないが早い方がありがたい。そう思って待っていると、妙な奴がヘラヘラしながら近づいてきた。



 「よーう! 新人。後でちょっとツラ貸せや」



 今頃テンプレが来るのかよ。もっと早く来いよ! タイミングがおかしいだろう! 邪生をソロで狩った後だぞ!。


 余りにズレたテンプレに怒りが込み上げてきて、思わず【闘気】を込めた威圧をしてしまう。



 「オッサン死にたいらしいな?」



 30歳ぐらいのオッサンは、威圧を受けたら白目を剥いて泡を吹いて気絶した。ちょっとやりすぎたかと内心焦っていると、横から他の傭兵が近づいて来た。



 「放っとけ放っとけ。そのオッサンがアホなだけだ」


 「相手の実力も見極められんとは、話しにもならんな!」


 「そのオッサン、確か30過ぎてもランク3のオッサンじゃん」


 「30でランク3かよ、クソ雑魚じゃねえか」



 なんかボロクソに言われてるな。ある意味では気の毒だが、オッサンは気絶してるので覚えてないのが救いか。


 放っておいていいみたいなので放っておく。受付を見回しても誰も気にしていないし、傭兵は自己責任だ。


 そういえば傭兵登録は15歳の成人から可能だった筈だ。つまりこのオッサンは最長で15年ほど傭兵やっててランク3ってことか。そりゃ馬鹿にされるワケだ。


 登録の時の説明では、邪生を狩れずとも普通の狩りや依頼でランク6までは上がると聞いている。つまりこのオッサンは狩りや依頼を熟してもランク4にすら上がれてないワケだ。


 クソ雑魚と言われるのも仕方がない、そもそも実力と素行に問題があるという事だ。


 ランク7から上はどんな邪生を狩ったか、お偉いさんの直接依頼をどれだけ達成したかで決まる。


 高ランクになるには貴族とのコネ等も必要になるが、貴族と関わりたくないという理由でランクアップしない者もそれなりに居るらしい。



 「新しい登録証がこちらです。これからも頑張って下さい」


 「ありがとう。それじゃ俺はこれで」


 「新人、お前の御蔭で村に被害が出ずに済んで助かったぜ。ありがとな!」


 「オークの邪生はそこまで強くはないが、被害が出やすいからな」


 「あいつら鼻が良くて走ると結構速いからなぁ。村人や低ランクに被害が出なくて本当によかったぜ。自己責任って言ったところで、同じ傭兵の死体なんぞ見たくもないしな」


 「まあなぁ……。それに浄化魔法を使える奴は今は出払っていて、ここには数人しか居ないからなぁ」



 どうも浄化魔法を使える人が少ない所為で騒ぎになっていたらしい。普通の魔法使いだと魔力が少ないからなぁ。俺みたいに無制限に浄化できる訳じゃないし。


 その事で思い出したが、掲示板を見て狩場を確認しておかないと。掲示板の前に行き色々な情報を読んでいく。


 低ランクの傭兵はやはり北か北東に行くらしい。そちらは平原で見通しも良く奇襲を受け難い。


 低ランクは北か北東で狩りや護衛をし、実力のある者は北から西の森へ行き、森に入って危なくなったら出るという狩り方をする。


 川を遡って行った森で他の傭兵に会わない理由がやっと判った。


 確認が終わったのでギルドを出ると夕焼け空だった。夕日を浴びながら荷車屋に荷車を返す。宿に帰る道すがら屋台が見えたが、今日はスルーして宿に帰ろう。



 「ただいま。女将さん、夕食はいつからだい?」


 「お帰り。まだ出来てないね、また後で来ておくれ。鍵は渡しとくから部屋で休んでるといいよ」


 「分かった。夕食が出来るまで、少し寝るよ」



 部屋に戻り装備を外して一息吐く。体や部屋を浄化してベッドに寝転ぶ。部屋を見て思ったが、なんだか若干神聖な気配がする。


 もしかして毎日浄化してるからか? 嫌な予感がしないでもない。


 ただ、宿の女将さんからは何も言われていないので、このまま見ない振りをしよう。部屋が汚いのは耐えられない。


 この世界というかこの時代は、部屋にノミやシラミが当たり前に居たりする。地球では暗黒時代のヨーロッパが特に酷かっただけで、多かれ少なかれ古い時代にはあった話だ。


 この宿の部屋は最初から綺麗だったが、ダナさんが言う宿泊所に泊まっていたらノミとシラミだらけの部屋だったかもしれない。


 そう考えると宿暮らしという選択は間違ってなかったと言える。


 コンコンコン。



 「お客さん、夕食が出来たよ」


 「分かりましたー」



 食堂に行きカウンター席に座る。他にちらほらと客がいて料理を待っている様だ。俺もゆっくりと待とうと思った矢先に料理が運ばれてきた。


 タイミングが悪いな。テンプレのオッサンといい今日は厄日か?。



 「今日はフォレストベアのシチューとパンそれにサラダだよ。大銅貨2枚ね」


 「お金ここに置くよ。熊肉かぁ……俺が狩ってきた奴かな?」


 「お客さんがかい? このフォレストベアは一昨日狩られたらしいよ」


 「俺も一昨日フォレストベアを狩ったんだよ、だから可能性はあるね。でも一昨日の肉を今日食うのか」


 「お客さん何言ってんだい? 肉は熟成させないと硬くて食べられないよ?」


 「そうなんだ……。解体所に持って行って売るだけなんで知らなかったよ」


 「傭兵なら知らないのも仕方ないのかねぇ……。まぁ、ごゆっくり」



 そういえば肉は熟成させないと硬くて食べられないと、昔バイト先の店長が教えてくれたのをすっかり忘れてた。スーパーで買う生活だと忘れてしまうんだな。


 しかし熟成か……酒を【錬金術】の【熟成】で熟成させれば儲かるかもしれない。


 ん? もしかしてラノベのテンプレか? ……うん、酒は止めとこう。妙な連中に目をつけられても困るし、酒は税が絡む物だ。碌な事にならない。


 それに俺は元々酒を飲まないし、煙草も吸わなくなった。病気が怖かったからだが、この肉体なら問題ないのか……。


 とはいえ、煙草はともかく酒は好きじゃない。結局俺が自分から進んで飲む事は無いだろう。



 「ごちそうさま。熊肉も美味しいもんだ」


 「ちゃんと処理すれば大抵の物は美味しいものさ」


 「確かに、それもそうか」



 そんな話しをした後、部屋に戻ろうと足を出した瞬間、宿にダナさんがやってきた。



 「まさか丁度いるとはね。部屋に案内してくれるかい?」


 「俺が泊まってる部屋はこっちです」



 部屋に案内しようとしていると、女将さんが横に来た。



 「ダナさん、声に気をつけてね。後、あんまり汚さないでよ、掃除が大変だから」


 「トーカ、防音の魔道具は持って来てるから大丈夫さ」


 「そうかい? なら後は頑張ってね。子供の頃の私に言ってた、一緒に居られる人なんだろ?」


 「そう、ずっと一緒に居られる人。逃がす気はないよ」


 「頑張ってね!」



 部屋に行ってナニをするかがバレている件。……って、ラノベのタイトルか! そんな脳内ツッコミを入れつつ落ち着く。


 女将さんだけじゃなく、周りの客までそういう目で見てくるのが若干腹立たしい。


 ダナさんを連れて部屋へ戻る。ちょっと神聖な気配のする部屋へ……。



 ▽▽▽▽▽


 0010終了時点


 金貨4枚

 大銀貨8枚

 銀貨12枚

 大銅貨8枚

 銅貨1枚


 鋼の短刀

 鋼の鉈

 鋼の槍


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