0105
「すまぬが、ちょっとよいかな?」
「なんでしょう?」
「先程の【神聖八重浄化】なんじゃが、神殿に来て教えて頂けぬかな?」
「申し訳ありませんが、お断りします。教えたところで使えるとは思いませんので」
「「「なっ!?」」」
「事実でしょう? 使えるなら、こんな怪しい奴に教えてもらわずとも、とっくに使える筈だ」
「「「………」」」
「こりゃ一本取られたのぅ。確かに申される通りじゃ。申し訳ない、お邪魔したようじゃな」
「いえ、お気になさらず」
分かってるだろ、爺さん? 神殿に関わる気は無いんだから、とっとと失せろ。神殿の連中が碌に浄化魔法を使えないのは単に修行が足りないからだ。修行をさせろ、修行を。
浄神が怒ってるんだぞ? 浄化魔法の使い方やコツを占有しておきながら碌に修行もしない。神殿のバカどもは下界に必要ないとまで言い切ってたからな?。
神殿の関係者なのに、神を怒らせている。そんな連中だから関わりたく無いんだよ。
俺に神の怒りは落ちないだろうが、とばっちりを受けるのは御免被る。あ、ありがとう。俺のナイフ届けてくれて。
「凄いですね! マナリアの鎧ですか!? それほどの物があったなんて……」
「他の物は希少金属ではありませんが、高品質な魔鉄や魔銀で御座います!」
「しかし、魔力金属ですか……。期待した物ではないにしても、陛下も頭を悩ませましょうな」
「かつて迷宮の16層に捨てたという強力な呪物は、いったいどれほどの物であったのだろうな?」
「分からぬな。ただ希少金属の可能性は高いと思うが……」
まぁ、希少金属だろうね。神の金属では無いと思う……というか思いたい。流石の神様達も、神の金属を下界や迷宮に下ろすというバカな事はやっていないだろう。……やってないよな?。
ちなみに神の金属とは、神銅、神鉄、神銀、神金の4つの事だ。下界でも作る事は可能だが、希少金属が全て必要で配合もそれぞれ違う。非常に面倒だが、劣化しないという特性を持つ。
魔力や闘気を自然に通し、あらゆる意味で劣化しない最高の金属。神の金属とはそういう物なんだが、下界にあるなら必ず壊しておかないといけない。
悪用されると面倒な事にしかならないからな。神の金属は奇跡のバランスで出来ている為、そのバランスを崩せば唯の金属塊にしてしまえる。使えなくするのは、難しくは無い。
「すみません。皆さんに少しお願いがありまして……」
「アタシ達に危険な呪物を取ってこいって事かい?」
「危険な呪物だと分かっていて、取ってこいと?」
「別に構わないよ。ただし報酬次第だ。俺達は傭兵だからな」
「いいのかしら? 相当の危険物よ?」
「俺のアイテムバッグなら良いだろ? どのみち迷宮攻略をしてるんだ。ついでに取ってくるぐらいは問題ないよ」
「まぁ、アルドがそう言うなら良いけどね」
「ありがとう御座います。今回の報酬はこちらになります」
そう言って王女が持ってきたのは、大金貨が3枚乗ったお盆だった。俺からすれば簡単な浄化で大金貨3枚か……儲かったが、これからの事を考えたら微妙なトコかな?。
「へー、大金貨かい? 意外だね。もっとケチると思ってたけど」
「殿下が、”正しき対価を支払わねば恥になる”と仰いましてな。その一言に、財務卿も黙らざるを得ませんでした」
「成る程。貴族としては、自分の所為で王族が恥を掻いたとなれば、醜聞どころではありませんからね」
「物理的に、一族郎党の首が飛ぶわね~」
「王族に恥を掻かせるって、国家に恥を掻かせるのと同じだからなー。そりゃ首を落とされて当然だ」
「「………」」
王女とライブルがジト目で俺を見てるな。あいつ等何か勘違いしてないか? あの2人の時は状況が違っていただろうに。
「2人の時は両方自分の失敗だからな? 勘違いするなよ?」
「「???」」
「あのなー。王女は自分から失敗して、ライブルは王族を守れなかっただろう? 2人とも、自分から失敗してるからな?」
「確かにそうでしたね。相手を確かめる事もせず、一方的に侮辱してしまいました」
「私は、そうしておられる殿下を、お諌めする事も無かった……」
「2人の失敗が先であり、その後、俺に威圧されたって事だ」
「自分から失敗した以上、文句は言えないって事だね」
「失敗しない者なんて居ませんが、許される失敗と許されない失敗がありますからね」
「流石に相手を侮辱してしまったら、笑って許してはもらえないわね」
そんな話の後、再び馬車に乗せられて宿に戻った。昼食を食べに食堂へ行き、大銅貨6枚を支払って昼食を食べる。食後は部屋に戻り、ダラダラと会話しながら2匹と遊ぶ。
部屋を全力で浄化してから2匹も浄化していると、ラーファンさんが来た。
「お部屋の掃除を……って、いつもより綺麗過ぎる気がするのですが?」
「先程アルドが強力に浄化していましたから、こんなものでは?」
「まぁ、ルーデル村の宿はもっと綺麗に浄化してたから、アルドも遠慮してるんじゃないかい?」
「遠慮してコレですか? ……幾ら何でも、滅茶苦茶な気がします」
「そもそもアルドは今日王城で、【神聖八重浄化】を普通に使ってましたからね」
「【神聖八重浄化】!?」
「そうです。あの浄化魔法の最高峰と言われる魔法です! 初めて自分の目で見れたのですよ! アレは凄いものでした」
「う、羨ましい……」
「そんな喜ぶ事か? ……コレが?」
そう言って、俺は【神聖八重浄化】を部屋の中で使った。とはいえ、使ったところで部屋がこれ以上綺麗になる事は無い。当たり前だが【浄化】の権能以上の浄化方法など、この世界に存在しない。
「す、凄い……。あれ? 綺麗になってませんね?」
「元から綺麗にしてましたからね」
「あぁ、そういう事ですか」
「見れば分かりますが、綺麗ですから掃除は要りませんよ」
「分かりました。失礼します」
そもそも【浄化】の権能を使って綺麗にしてるから、洗濯の必要も無いし、風呂に入る必要も無い。歯磨きの必要も無ければ、浄化魔法も必要無い。全て【浄化】の権能で解決できる。
俺が頻繁に浄化するのは、体や服の臭いを消す事と病気の可能性を減らす為だ。昨日使った強引な治癒方法はあるが、回復魔法や治癒魔法が無い世界なんだ。
無い以上は気を付けて生きていかないと、病気になった時に困る。薬の作り方は知っているが、都合良く材料が手元にあるとは限らない。
アイテムバッグが時間停止したりしない以上は、保存期間には限界がある。材料を取ってきて保存し続けても意味が無いので、新鮮な材料をその都度取ってくるしかない。
地球でも同じだが、病気にならないに越した事はないんだよな、魔法のあるこの世界でも。綺麗にしすぎても問題かもしれないが、赤ん坊が居る訳でも無いので大丈夫だろう。
夕食の時間になったので隣の食堂に行こう。食堂で銀貨1枚を支払い、大銅貨14枚を受け取る。座って待っていると、直ぐに夕食が来たので食べ始めた。
食後は昨日と同じ流れになり、3人は酒のツマミを注文して飲み始める。2匹もその横で飲んでいるが、こりゃ早くに撃沈するだろうな。
そう思っていたが、2匹ともがゆっくりと酒を舐めている。もしかして酒の飲み方を覚えたのか? 酒の飲み方を知っているペットってどうなんだろうなー。
2匹は美味そうに舐めているので別に良いか。どのみち酒を飲んだところで、後で綺麗に浄化すれば済む。飲み終わって帰る頃には全員千鳥足だったが……。
何とか全員を部屋に戻したが、俺以外の全員が酒にやられて撃沈した。珍しい事もあるもんだが、今日は久しぶりにゆっくり寝られそうだ、それじゃあ、おやすみなさい。
▽▽▽▽▽
0105終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨10枚
金貨46枚
大銀貨35枚
銀貨13枚
大銅貨24枚
銅貨5枚
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトの小烏丸
剣熊の爪のサバイバルナイフ
オリハルコンの短剣
風鹿の角の十手
二角の角の戦斧
二角の革の帽子
剣熊と銅亀の革鎧
剣熊の骨の半篭手
剣熊の革の指貫グローブ
剣熊の革の剣帯
剣熊の骨の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
剣熊と銅亀のブーツ
大型のアイテムバッグ