1053
「ならば契約をしようではないか、私は正しい身体強化とやらを一語一句洩らしたりはしないと! ダンジョンに関しては構わぬであろう?」
「ん~………まあ、いいか。契約をして教えよう。代わりに神に宣言してもらうがな。その契約で良ければ受けよう」
「私は構わない。神罰が落ちるような事はする気が無いからな。それに正しい身体強化というのも何となくは分かる。極めて難しいとは思うが、動作だけのものではないのだろう?」
「まあ、そうだな。そこは構わないか……。正しい身体強化を言葉で言うなら、自在に強化するという事に尽きる。日常生活を行うように身体強化を行うという事だ」
「剣を振る時だけじゃなく、槍を突く時だけでも無い。傭兵が使っているのは身体強化モドキなのさ。本当の身体強化は歩く、走る、止まる。そんな簡単な事にも使えるものなんだよ」
「つまり身体強化をしながら動き続けるという事です。相手の攻撃をいなしながら、避けながら、反撃しながら使う。言葉で言うなら簡単ですが、修行としては大変なものなのですよ」
「それを使い熟せるのなら、剣と魔法が中途半端な技なんて要らないんだ。剣なら剣、魔法なら魔法を極めた方が良いに決まってる。帝国魔剣流というのは、そういう意味でも中途半端なのさ」
「そのうえ、私達のような者にとっては魔力の高まりや集中で、魔法を使うタイミングがバレバレだしな。手の内が割れている技術に何の意味がある? 上手くいっても最初だけだ」
「え!? ……バレているのかい? 魔法を使うタイミングが? ……彼が欠陥剣術と言っていたのはそれが理由か。つまり魔力を感知出来ない程度の相手にしか通用しないと」
「公爵、これは陛下に奏上せねばちょっとマズい事になりかねませんな。仮に……いや、事実なのでしょう。そうすると、根本的な事から考え直さねばならぬ事になりますぞ」
「剣と魔法を組み合わせた技術というのは、どうしても中途半端に陥りやすい。剣は剣、魔法は魔法で修行し、両方を組み合わせるというなら好きにするといい。そんな感じか」
「でもアルド、結局中途半端になるんでしょ? だったら意味が無いような気がするんだけど……そこのところはどうなの?」
「一応、魔力を感知出来ない相手に対して上手く使えば、初見殺しぐらいは出来るだろう。結局そんなものと言えばそれまでだが。対処されるようになったら、中途半端さが露呈するだけだ」
「今まで暗殺などの裏側でしか本気で使われる事が無かったので、欠陥部分が浮き彫りにならなかったか、もしくは帝国魔剣流の者達は気付いていたかだ。……いったいどちらだ?」
「「「「「………」」」」」
第6騎士団の奴等は顔を逸らしたり、俯いたりしている。おそらくだが、何となく欠陥部分には気付いていたか、おかしいという思いはあったんだろうな。剣と魔法を組み合わせるより、武器強化をして敵を切った方が早いからなぁ。
そう言うと、何とも言えない空気になった。「それを言っちゃあ、お終いよ」、そんな言葉が無言の沈黙から聞こえてくる様だ。その雰囲気に対して、皇女と宰相と公爵が何とも言えない表情をしている。
上の者にとっては優秀で誇りある帝国魔剣流だったんだろうが、現場というか第6騎士団の者にとっては違ってたという事だ。もしかしたらグライバとかいう天才が現れたのも原因なのかもしれない。
その事により、自分達が下手なだけだと錯覚した可能性はある。本当は欠陥剣術が原因なのに、自分達の実力不足が原因だと思い込んだのかもな。上の連中に目を着けられたくないだろうし。
そんな事を語っていると文官の様な者が来て、何かを皇女に渡していた。皇女はそれをそのまま俺のところに持って来て渡す。受け取ったのは金貨3枚だった。どうやら酒の代金を含めた、諸々の依頼報酬らしい。
俺はそれを受け取り、城を後にする事にした。このまま居ても面倒なだけだし、俺には用事なんて無いからな。それにそろそろ夕方になるかという時間だ。夕食を食べる為にも戻りたい。
流石にこれ以上引き止めるのは無理だと判断したのか、皇女と女性騎士は貴族街と平民街の門まで送ってくれた。皇女が居ないと通るのに時間が掛かっただろうから、そこは感謝している。
夕日が出てきている中ギルドに行き、さっさと手続きを終わらせた。終わったあと食堂に移動し、大銅貨10枚を支払って夕食を注文したら席に座る。ダラダラと待っていると傭兵達がゾロゾロ入って来て大声で注文をし出す。
席に座った後、注文と同じ大きな声で話す傭兵の話に耳を傾けると、ちょっと気になる内容を話し始めた。
「今日ダンジョンの中で真っ黒な魔物が出たらしいが知ってるか? なんでも大きさはオーガくらいだったそうなんだが……」
「知ってるぞ、何でも6人組のチームの内5人が殺されたらしいな。1人は命からがら逃げたらしいが、怖ろしく速くて強いオーガみたいだ。もしダンジョン内で出会ったら直ぐに逃げろ、だとよ」
「まあ実際、誰も勝てなさそうな程なんだろ? だったら余計な手出しはしない方がいい。浅い層じゃないらしいから、新人どもが殺される事は無えだろうさ」
「そうだな。たまによく分からない魔物が出たりするが、真っ黒な魔物なんて初めて聞くし……何か良くない事でも起こってるんじゃないだろうな。俺はそういうの苦手なんだぜ?」
「知ってるよ。昔からお前は呪いとか苦手にしてるもんな。まあ、真っ黒だっていうだけで呪いとは関係ないだろうから、今から怖がってても仕方ねえさ」
近くのダンジョンに黒いオーガが出たのか。どこの層か分からないが、呪いの武器を持ってるんだろうか? それとも真っ黒なタイプのモンスターが出ただけか? 行ってみない事には分からないな。
とはいえ、行くのは皇女を鍛えてからになるし厄介なものだ。最速の3日で仕上げて、後は軽装状態で連れて行くか。それなら3日の仕上がりでもどうにかなるだろう。皇女は明日の朝、食堂に行くと言っていたしな。
夕食後、宿の部屋に戻って送風機と冷房を設置して起動する。全て終えて座って休んでいると、ダリアがペシペシと足を叩いてきた。何だと思ったら、ミードが欲しいみたいだ。水皿に入れてやると、ダリアは美味しそうに飲み始める。
それを見た女性陣も酒を飲み始めた。その後、酒飲みどもと今日の試合の反省会をする。皆はもうちょっと綺麗に勝ちたかったらしいが、青銅製の武器ではアレが限度だと思う。相手はプレートアーマーだったしな。
殺し合いでは無かったからこそ、泥臭い勝ち方しか出来なかったと思う。向こうも鉄のプレートアーマーを着ていても絶対じゃないと理解できただろうしな。帝国には精鋭部隊もある筈だが、プレートアーマーは廃止するのかね?。
それとも他の部隊を強化するんだろうか? どのみち魔法がある世界ではそこまで優秀な防具じゃないからなぁ。どこかの時代で徐々に廃れていくんだろうが、まさか俺の所為で衰退が始まってる? ……見ないフリをしておこう。
皆と色々な話をしていたが、途中から酒に呑まれたのか呂律が回らなくなり撃沈した。酒に倒れた皆をベッドに寝かせていると、撃沈しなかったシュラとディルしか残っていないようだ。今回シュラは酒量を意図的に抑えていたらしい。
ディルを撃沈して寝かせてから待っていたシュラと話すと、どうやら恋人同士の超甘いのがお好みの様だ。それってアルメアの好みと同じなんだが気付いているのかね? それを言うと唖然としていたが、気を取り直して襲ってきた。
どうも吸血鬼の真祖姉妹は、ラブラブなやり方に物凄く弱い気がする。あっさりとダメになっているのを見るに愛情に弱いんだろうか? まあ、こういうのは考えては駄目だから、考えるのを止めてさっさと寝るか。
部屋と体を綺麗に【浄化】した後で一応確認したが、リンデ達の部屋は手を付けられないのでスルーする。
今日も一日お疲れ様でした。
▽▽▽▽▽
1053終了時点
大白金貨44枚
白金貨177枚
大金貨963枚
金貨1071枚
大銀貨1078枚
銀貨1458枚
大銅貨1988枚
銅貨462枚
神木石の浄化槍
神石の浄化剣
神木の浄化棍棒
神木の浄化盾
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




