1042
部屋を片付けてから宿の玄関に出てリンデ達を待つ。割と直ぐに出てきたので、そのまま食堂へと移動した。中に入り大銅貨10枚を支払って注文をしたら、席に座って神水を飲む。
雑談をしながら待っていると、横の席に傭兵が来て大きな声で喋り始めた。何処の国でも傭兵の声がデカい事は変わらないんだなぁ。もちろん普通の人も居るんだが。
「昨日、<栄光の剣>が戻ってきたらしい。奴等の言い分じゃ19層に到達したらしいが怪しいもんだ。前にも到達した層を誤魔化してたしな。証拠が無ければ信用されねえっつうの」
「まあ、気にすんな。ああいう奴等は言っても直らねえし、ギルドは公式に認めてねえんだ。なら、そういう事なんだから良いじゃねえか。奴等の言う事に反応するだけ無駄だ」
「しかしな。奴等以外に深層を目指す奴等が出てこないのが腹立たしいじゃねえか。王国に記録を抜かれっちまったんだろ? こういう時こそ帝国魂を持った奴が出てくるべきだろ」
「あのなー……ならお前がやれって言われるのがオチだと思うが、お前やるのか? やるなら1人でやれよ。俺達に迷惑を掛けずにな」
「いや、それは……別にそういう意味で言った訳じゃ、ねえし? 俺はさ……」
「結局、挑戦しない奴は偉そうな口を叩くなってこった。俺達もそうだが、文句を言うなら<栄光の剣>みたいに挑戦しないとな。それに素材ダンジョンで苦戦してるんじゃ駄目なんだろうさ」
皇都の近くにダンジョンがあるのは知っているが、帝国は傭兵に対して隔意があると思っていたがそうでも無いのか? 周りにも割と普通に傭兵が居るし、嫌がられているとか煙たがられているという感じではない。
単に辺境伯が傭兵やギルドを見下していただけなんだろうか? それとも傭兵やギルドを見下している派閥がある? ……まあ、帝国の内部事情に首を突っ込む気は無いので、想像だけして多少の対策をしておけばいいか。
朝食後、食堂を出て皇都の中を歩いて回る。色々な人に話を聞いて周りながら、商店が並ぶ区画にやってきた。武具を売る店や生活雑貨を売る店など、ごちゃ混ぜになったカオス仕様の場所だった。
そんな中を色々見て回ると共通する部分がある。それは鉄製より銅製の方が多いという事だ。皇都だからそこまで鉄不足ではないだろうと思ったが、皇都は中心だからこそ皆が我慢しているらしい。
ある意味では、地方の方が豊富に鉄を使える場合があるらしく、都だからといって楽じゃないと鍛冶師は笑っていた。帝国には豊富な銅鉱山が幾つもあり、鍋やフライパンなどは完全に銅製だった。
熱伝導率を考えたらそっちの方が良い気がするんだが、やっぱり駄目なんだろうか。なんか鉄を求める気持ちが強過ぎる気がするが、無い物ねだりという奴なのかもしれない。
ウロウロしながら見回ったものの、昼前ぐらいには見る物が無くなってしまった。まあ下町ぐらいしか見れないし、そういった部分はそこまで特色がある訳でもなく、同じ文化圏なんだから似通っていてもしょうがない。
俺達は食堂に戻り、大銅貨10枚を支払って昼食を注文する。朝と同じ様に神水を飲みながら待っていると皇女がやってきた。昨日の昼と同じで交代する前の女性騎士2人を連れているが、男性騎士はいない。
何故か皇女は一直線に此方に来て、横のテーブル席に座り話しかけてきた。
「いきなりで済まぬが、申し訳ない。昨日、城に戻ってから陛下の呼び出しがあったのだが、そこでウェルクアの事を喋らざるを得なくなった。そこには兄上方と義母上、並びに宰相を始めとした有力者達がいたのだ。妙な手出しをしてくるかもしれん」
「してくる”かも”じゃなくて、”してくる”の間違いじゃないかい? まあ、手出ししてくるなら返り討ちにするだけなんだけどさ。アタシが<剣の踊り子>と呼ばれた理由を忘れたのかねぇ」
「また殺されたい連中と戦うのですか? 昔もそうでしたが、馬鹿は殺されに来ますから困ったものです。もう少しまともなら、命を永らえる事も出来るのですが……」
2人の言葉を聞いた皇女の顔色が悪い。どうやら今頃ダナの二つ名の理由を思い出したらしいが、女性騎士2人など顔色が……何で赤くなって興奮してるんだコイツ等。……え? <剣の踊り子>のファン? マジかよ。
ダナも何と言っていいか分からない顔をしている。当時の出来事は間違いなく帝国の醜聞でしかないが、ある意味で強い女性の証明でもあるからな。ダナいわく【神眼】を上手く使ってした事らしいけど、よくもまあ300人斬りなんてやったもんだ。
当時の相手の兵の鎧が普通の革鎧だった事と、質は悪かろうがマナリアの剣を持ってた事が出来た理由だろうけどさ。今ならもっとあっさり300人斬りは出来るだろうなー。
持ってる武器が神の金属製だし、防具は竜の皮だ。更に正しい身体強化も使える。ダナが負ける理由がどこにも無いんだが、手出しを考えているバカどもは分かってるのかね?。
「宰相は下らぬ事などせぬ筈だし、公爵である叔父上は<凄腕の斥候>は絶対に敵に回さない方が良いと仰られていた。だが、愚か者はどこにでも居るからな。先に伝えておこうと思ったのだ」
「とはいえ、私達を狙っても死ぬだけよね? 【気配察知】が使えるから奇襲は極めて難しいし、数で向かってきたら纏めて焼き殺すだけだもの。久しぶりに火炙りに出来るというぐらいかしら」
「生きたまま焼き殺すのもどうかと思うけど、バカ相手には仕方のない事なんだろうね。それを見て理解すれば良いんだけど、理解しないバカは必ず居ると考えないといけない……か」
「だろうな。皆が理解出来るなら、誰もがバカ相手の苦労をせずに済む。だが、そんな事は無いからな」
「済まぬが、何かあったら私に知らせてほしい。叔父上からは出来る限りそちらと一緒に居て、愚か者を牽制しろと言われている。私が居れば大丈夫だろうが、今度は夜間に暗殺を企むかもしれん」
「それこそ、こっちの狙い通りだよね。今まで何度、朝起きたら暗殺組織が壊滅してたと思ってるんだろう。ついでに、朝起きたら貴族の当主が行方不明になってた事も何度もあるしね」
「「「………」」」
「<凄腕の斥候>には絶対に喧嘩を売るな。公爵であり陛下の右腕とも言われる叔父上が、何度も何度も口にされた言葉だ。やはり叔父上は正しかったのだな」
「嘘を吐いているとは考えないのですか? 言うだけなら幾らでも言えますし、本当かどうかなど分かりません」
「ウェルクア、私とて皇女だ。様々な者に会い、様々な話をしてきた。そのうえで嘘は無いと理解したのだ。あまり私を舐めるなよ」
「申し訳ありません。とはいえ、上に行けば行くほど本質を理解しない方が多かったもので……」
「それは……まあ、そうだな。現場に出ている者の方がまともな感性をしている。当然かもしれぬが、嘆かわしい事だ。少しは現場に出ようと思わんのかと思うが、あの愚か者どもは机の上でばかり物事を考える」
「何処の国も似た様なものですよ。我が国とて褒められたものではありませんしね」
「我が国もそうさ。いい加減に吐き気がしてくる様な者も居るけど、それでも使わなければならない立場だ。それがイヤだから傭兵になったんだけどさ。それでも自由になるまで長かったよ」
お前等はここが宿の部屋だとでも思っているのか? もうちょっと話の中身をマシなものにしろよ。俺が【止音】を使っているから声は漏れて無いが、いちいち無駄な労力を使わせるな。他人に聞かせられない事を堂々と話すんじゃない。
食事も終わっていたので皆を連れて宿に戻ろうとすると、食堂の前に20人くらいの騎士が整列していた。……なんだこの状況? そう思って皇女を見ると、苦虫を噛み潰した顔をしていた。
ハッキリ表情に出すほどイヤな相手って事か。
▽▽▽▽▽
1042終了時点
大白金貨20枚
白金貨114枚
大金貨851枚
金貨968枚
大銀貨975枚
銀貨1167枚
大銅貨1614枚
銅貨251枚
神木石の浄化槍
神石の浄化剣
神木の浄化棍棒
神木の浄化盾
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




