1041
何故か皇女を部屋に入れて話しをしていたが、夕方近くになってきたので流石に城に帰る様だ。こっちからすれば「やっとかよ」と言いたい気分だが、とりあえず宿の玄関まで見送る。
その後、部屋に戻って送風機と冷房を回収したら、食堂に行って夕食にしよう。昼食の時と同じ食堂に入り大銅貨10枚を支払って夕食を注文したら、席に座って神水を飲みながらゆっくりと待つ。
あの皇女は何故わざわざ俺達の近くへと来たのか、何故リューを引き抜こうとしたのか……。身の危険でも感じてる? それとも他の奴等が信用出来ないのか? ……分からないな。
「信用出来ないと言うよりは、周りの騎士も側仕えも皇帝陛下の息が掛かっているのは間違いありませんので……。そこに何かしら思うところが有るのでしょう」
「あの皇女はリューに対して思うところは無いみたいだったね。あれが人魚族に対してなのか、リューに対してだけなのか……」
「そもそも皇女殿下とは何度もお会いした事がありますが、挨拶のように自分の下で働かないかと打診されていましたので、おそらく私に対してのみでしょう。皇女殿下が人魚族に対して公式に口にした事は無かった筈です」
「成る程。諜報部隊に居たからでしょうか? それとも何かしら私達には分からない帝国固有の理由からでしょうか? 情報が少ないので判断するのは無理ですね」
「それよりも、皇女様はアルドが<凄腕の斥候>だと分かっていても1度も敵意を出さなかったわね。帝国の中も色々あるのでしょうけど、前線に出ていないとあんなものかしら?」
「戦争は戦争だと割り切れているのか、それとも自分が関わり無かった事に怒る気も無いのか……あの皇女は良くも悪くも普通だと思うよ。切れ者とは思えないし、かといって愚鈍でもない。そんな感じかな」
「それなら十分ではないか? 正直に言って愚鈍でなければ、それで良い気はする。そもそも政治など1人で出来る事でも無し、多くの者を使ってやる事なのだ。有能な者を使えばいいだけで、それは村でも変わらない」
「まあ、そういう意味でリューを欲してたっていうのが1番可能性が高そうだけど、それだけじゃない気もするね。あの女性騎士2人は、あからさまにアルドを見定めようとしてたし。分かる訳ないのに」
「あたし達だからこそ、見たり聞いたりしただけじゃ無理だって分かるけどさ。そういう事を知らない連中だからしょうがないんじゃないの? 勝手に騙されてくれるんだから放っておけばいいと思うよ」
「あの騎士はそうでしょうが、皇女殿下は何か違ってたような気がします。何と言って良いか分かりませんが、何か話したい事があったのかもしれません」
「アルドに、って事かい? 帝国の皇女がアルドに話したい事ねぇ……暗殺依頼でも出したいのかな? なーんて冗談、冗談。と言いたいところなんだけど、権力者なんて血生臭いものだし可能性は無い訳じゃないんだよね」
「ですね。それでも自国の暗部に頼まず、アルドに頼むという事は……皇女の個人的理由からですかね? 暗部に頼めば皇帝には必ずバレますし、余程の理由が無ければ暗殺なんて承認されないでしょう」
国にとって暗殺なんて最後の手段とも言える。割と病死として片付けられる事の多い暗殺だが、あれも暗殺も已む無しとなってからされるもので、そういう状況でもないのに暗殺なんて出来ない。
国だからこそ、建前という名の理由が必要になる。逆に言えばそれさえ整えば暗殺なんてのは普通にある事だ。しかし、乱発すると皇帝であっても引き摺り下ろされかねない諸刃の剣でもある。
娘の頼みであっても迂闊な事はしないだろう。それで俺に頼む……? 何か違うような気がするうえ、どこかが噛み合わない感じがするな。何が違うんだろう……まあ、いいか。分からない事を考えてもしょうがない。
夕食後、宿の部屋に戻って送風機と冷房を再び設置する。起動してからキンキンに冷えた神水をセットし、【冷風】を使って熱気を逃がしつつ部屋を涼しくした。今は室温が下がって快適になっている。
ダリアはそこら辺に寝転がって遊んでいたが、今は俺の胡坐の中に入って遊んでいる。太腿をペシペシしたり、頭を擦り付けたりしているが好きにさせておく。猫の本能だろうから、満足したら正気に戻るだろう。
皆は酒を飲み始めたので、干し肉と凍らせた果物なんかは渡しておく。特に喜んだのは凍った果物だったが、まだ暑いから当然か。冷たい果物を冷たい酒で流し込んでいるのを見ると、駄目人間にしか見えない。
俺はダリアの相手をしつつディルに【心静】を教えている。【探知】もある程度上達し、これからは長い時間を掛けてゆっくりと上達していく領域に入ったので、新しい【念術】を教える事にしたんだ。
【心静】は自分にも使えるし、他人にも使える割と便利な【念術】だ。心を無理矢理にでも落ち着けないといけない状況というのはある。動じない訓練を受けていても、それは自分だけだ。
仲間がパニックになって滅茶苦茶な行動をとられると、自分も巻き添えを喰って死ぬかもしれない。自分もそうだが、周りの者を強制的に落ち着かせる事が出来る【心静】は優秀だ。
【衝気】と【心静】。どちらを先に教えるか悩んだが、ディルに選ばせたら迷う事無く【心静】を選んだ。こちらの方が失敗した時の被害が小さいから選んだのだが、どちらも相応に被害はあるんだがなぁ……。
なかなか思うように進まない中、気付けば酒に撃沈している皆と胡坐の中で丸まって寝ているダリアが居た。皆をベッドに寝かせていき、終わったらディルを大満足させて寝かせる。
部屋と体を綺麗に【浄化】し、最後に勾玉で吸引したらビックリするぐらいの邪気を吸引した。全て【浄化】するのに20分ほど掛かったが、何とか全て【浄化】する事が出来た。幾らなんでも汚すぎるだろうよ、この街。
それだけ人が多い事の証なのかもしれないが、こんな汚い所に良く住んでいられたものだ。神殿の奴等に命じて綺麗にさせればいいものを。……イライラしても損するだけか。さっさと寝よう。
それじゃあ、おやすみなさい。
<異世界486日目>
おはようございます。今日は特に何も無い日です。観光のために色々見回るぐらいで、それ以外は特にやる事も無い。たまにはこういう日も良いだろう、今まで移動ばっかりだったからな。
昨夜はチラっと確認したら綺麗に出来なかったので、先ほどまでリンデ達の部屋を【浄化】してたんだが、高級宿の割にはそこまで綺麗に掃除はされていなかったな。手抜きなのか、それとも掃除が下手なのか。
高い金を払っている割には、この程度か。そう思わなくも無いが、幾らでも客が入る所ではこんなものなんだろう。殿様商売が成立してしまっているんだなぁ。悪いとは言わないが、発展も進歩も無さそうだ。
「「「「「「「「チュッ! おはよう、皆」」」」」」」」
「おはよう、皆」 「ニャ!」
「今日はどうするんだろうね? あの子達。帝国を見に来るって言っても1番はここ皇都だろうし、逆にココ以外に見る所なんてあったかい?」
「特に無いような気もしますね。わざわざ辺境伯の所まで行くのは面倒ですし、エルダ海洋国まで行くのは今回の旅の目的とは違います。そこまで行く予定はありませんからね」
「流石にあの子達もそこまで行くとは言わないと思うわ。私としても山越えはしたくないから、皇都で終わりとしたいけど……」
「そもそも皇都で何が起きるか分からないし、気を抜くのは良くないよ? 一応は敵の本拠地にいるんだから、そのつもりで警戒しておくべきさ」
「いきなり襲われるという可能性は低いだろうが、何かを仕掛けてくる可能性は十分にある。暗殺の可能性は高くないが、十分にあり得る事を頭に入れておかないとな」
皇都で何がが起きる。楽しみな様な面倒臭い様な、そんな予感がする。あくまでも予感だが……。
▽▽▽▽▽
1041終了時点
大白金貨20枚
白金貨114枚
大金貨851枚
金貨968枚
大銀貨975枚
銀貨1167枚
大銅貨1634枚
銅貨251枚
神木石の浄化槍
神石の浄化剣
神木の浄化棍棒
神木の浄化盾
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




