1007
「しっかし……ヴェスティオンの方はどうするんだろうな? 2人の王子が死んで、王女は傭兵ギルド預かりだろう? 王太子は本国に残ってるらしいけど、この戦争をどうやって終わらせる気なんだろうな」
「さあ? ……とはいえ、裏で話し合いとかしてるんじゃねえかと思う。都合良く王子が2人死んだり、王女が傭兵ギルドに捕まったりしたんだぜ? 王太子に都合が良すぎるだろうよ」
「あー、成る程。上では既に決まってて、王子2人の死亡待ちだったって事か。怖ええよなー、貴族とか王族って奴はさ。兄弟を敵に殺させるんだぜ? 心の底から平民で良かったと思うよ」
「お前みたいなのが貴族になれる訳が無いだろってのは置いといて、こういう怖い事があると確かに平民で良かったとは思うな。命が助かったのは王女だけか?」
「いや、王女も殺す気だったんじゃねえの? 確か捕らえたのは総長と副長だった筈だ。向こうは総長と副長が王女を捕らえるなんて、考えてもいなかったかもしれないぜ?」
「確かにな。そもそも王女が生きているって事自体、ヴェスティオンは知らない可能性がある。知れば王太子は頭を抱えるんじゃないか?」
「分からないぜ? 確実に始末する為に暗殺者を使ったりすると俺は思う。生きていられたら困るから戦争で殺そうとした……そう考えると、王女に生きていられたら困るだろ?」
「「「………」」」
この傭兵達の言っている事のうち、半分くらいは間違っていない気もする。2人の王子と1人の王女を前線に送り、王と王太子は後方というか本拠地に居る。誰が考えても不自然過ぎるんだよなー。
もし仮に前線に王族を送る場合でも、間違いなく1人だけだ。3人も一度に送るなんて事は無い。だからこそ間違いなく裏に何かある。
なお、王国と帝国の戦争は除く。何故ならあの戦争は、不老長寿である俺達が居たんで、完全に例外だ。
裏にあるものを探るために送られてきたのが俺達な訳だが……前線に行っている訳でも無いので情報が微妙に入り難い。とはいえ聖王国の国民でも無ければ、聖王国で活躍している傭兵でもないし……。
前線に入り込むには弱いんだよな。宰相からの手紙は俺達の立場の保証であって、前線の戦いに参加出来る訳じゃない。もし参加したら、間違いなく邪魔者扱いしかされないだろう。監視され続けるのは簡単に想像がつく。
流石に情報を得る為とはいえ、そんな事は御免被るし、こっちには王女が2人も居る。無理は出来ない以上、傭兵ギルドの本部が移転してきている領都での情報収集とした訳だが……。俺の予想が甘かったかな?。
朝食後、皆と別れて俺達は町の外へと出る。今日の練習は【気配察知】だ。戦う事よりも気配を見つけ出す事が重要となる。2人には特にそれを言い聞かせて気配を感じさせよう。最初は上手くいかないだろうが頑張れ。
町の外をウロウロと歩かせながら魔物の気配を探らせていく。俺は【探知】と【空間把握】を使っているので分かっているが、2人はまだ気配そのものが理解出来ないらしい。魔力と闘気を循環させ、何度も気配を探らせる。
最初に気付いたのは母親であるアイネの方だった。傭兵をやっている期間も長いので色々な経験があったからだろう、かなり早めに理解したな。代わりに娘のフィレネは凄く焦っているが……。
焦ったところで上手くなる事など無いので、【心静】を使って落ち着かせる。再度、魔力と闘気を循環させながら気配を探らせるも、なかなか理解まで辿りつかなかった。一旦町へと戻り昼食にしよう。
アイネは初歩の【気配察知】が使えるようになったので、町中でも使い始めた。気配が分かるだけでは、それが人か魔物かの判別は出来ないからだ。魔物だと思って攻撃したら人だった、何て事になったら困るので練習している。
食堂に入り大銅貨5枚を支払って昼食を注文したら、席に座ってゆっくりと2人を休憩させる。火の季節で暑いが、俺達の周りだけ【水魔法】と【風魔法】を組み合わせた【冷風】を使っているので涼しい。
実際にやっている事を正確に言えば、【水魔法】の【冷却】と【風魔法】の【微風】を同時発動しているのが正しい。こういう複合的なものは【魔術】で行使した方が遥かに楽なのだが、人前では使えないので諦めるしかないんだよな。
そうやって自分達だけ涼しくしていると、近くのテーブルで話している傭兵の声が聞こえた。本人達にとっては小さい声で話しているつもりなのだろう。
「そうだ。どうやら上の方では既に決まっていたらしい。……しっかし驚いたぜ、まさかヴェスティオンでクーデターが起きるなんてよ。王と王妃や側妃は、既に捕まって幽閉されてるらしい」
「よくそんな事がこんなに早く分かったな。どんな伝手を持ってんだよ、お前は」
「そりゃあ色々とな……。それよりもヴェスティオン国内はこれから荒れそうだし、稼ぎ時だと思わないか? 情報が事実なら俺達がヴェスティオンに行っても問題無い筈だ。稼げる時に稼いでおかないとな」
「うーん、どうすっかなぁ……。行ってもいいし、まだここでも稼げるし……いや、そんな事言ってたら誰かに取られるな。よし! 俺も行こう」
「おお、そうか! なら準備を入念にして明日の朝からヴェスティオンに向けて移動しようぜ」
「おう!」
王と妃が捕まったという情報が事実なら、王は王位を退くのを拒否したって事だ。素直に王位を明け渡せば、もっと穏便な形での交代となった筈だからな。そうではなく幽閉したという事は、最後まで抵抗したという事だろう。
抵抗するのは当然と言えなくもないが、現在の状況を作り出したのは間違いなく王だ。その責任をどうするのかとも言えるが、何となく王子と王女を前線に送り込んだのは王太子だと思える。
つまり現状を作り出したのは王太子でもある訳だ。まあ、ポンコツ王子がこの後も国に居座っては困るという事もあるんだろう。気持ちは分からなくもないが、だったら国内で秘密裏に始末しろよと言いたい。
上の方で話し合いと取引は終わっているんだろうが、聖王国には少なくとも他国の王子を殺害したという風聞は残るんだがな。それが良い形に捉えられると名誉だが、悪い形に捉えられると不名誉になる。
王族殺しって割とジョーカー的なもので、良くもなるし悪くもなる厄介なものだ。何代も後になって風化した頃に悪く言ってくる可能性は否定出来ないからな。聖王国も新王になって間が無いのに受け入れるとは、大丈夫かね?。
新王に妙なイメージが付いてしまう気もするが、聖王国が受け入れたのなら大丈夫なんだろう、多分。それよりも食事も終わったし、そろそろ町を出て午後の訓練を開始しよう。
午前と同じくフィレネは分からない様だが、昼食でリフレッシュ出来たのか焦ってはいないようだ。【気配察知】は【集中】を使っても、そこまで覚えやすくなる訳でもない。なので2人には【集中】を使う気は無く、自分の力で頑張らせている。
アイネがちょこちょこ魔物を倒しているので、血抜きをしてやってアイテムバッグに収納していく。本来なら荷車を牽くのだが、今は俺が居るので入れてやっている。
小さいアイテムバッグ1つぐらいなら渡してやってもいいのだが、そうすると欲に濁った連中が何をするか分からないので渡していない。守ってやれない相手に迂闊に渡すのは、危険すぎるし無責任だからな。
ウロウロとしながら魔物を倒しているアイネを見て、突然フィレネが大きな声をあげた。その直後、地面からネイルラビットが出てきて攻撃してきたが、アイネは素早く盾で防ぎカウンターで槍を突き刺した。
地面近くなら初歩の【気配察知】でも分かるので、どうやらフィレネもようやく【気配察知】が使えるようになったらしい。これで教えるべき事は全て終わった。それなりに時間が掛かったような、でも早かったような……。
まあ、終わったという事は、やっと解放されて自由に動けるって事だ。情報収集の仕事はそろそろ終わりそうだけど……。
▽▽▽▽▽
1007終了時点
大白金貨17枚
白金貨72枚
大金貨771枚
金貨876枚
大銀貨931枚
銀貨1121枚
大銅貨1269枚
銅貨291枚
神木石の浄化槍
神石の浄化剣
神木の浄化棍棒
神木の浄化盾
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




