1005
領主の館でやるべき事を終えた俺達は、さっさと町へと戻り食堂へと行く。大銅貨12枚を支払い朝食を注文したら、席に座って一息吐いた。やれやれ、バカの所為で朝から余計な時間を使う羽目になったな。
途中でアイネとフィレネ親子の態度が挙動不審になったので、今まで通りで構わないし不敬罪に問う事は無いと言って安心させる。そもそもあのバカが来なければ、俺達は身分を明かす気も無かったのだから当然だ。
2人に色々な葛藤があるのは分かるが、グッと堪えて今までの態度に戻してもらう。
喉元過ぎれば熱さを忘れると言うが、ああいうタイプはまた同じ事をしかねないので、次に同じ事をやったら旦那の方を解雇するように頼んでおいた。
自分に何かあっても気にしないかもしれないが、旦那に何かあれば自分の醜聞も含めて潰れるという寸法だ。今回の不敬罪を無かった事にしてやる代わりの罰の様なものだが、上手くいったと思う。
俺が提案したコレは的確にバカの急所に刺さったらしく、物凄く動揺していた。おそらく俺達が居なくなったら、また下らない事をする気だったのだろう。それを見た旦那が呆れ、冷めた目を向けていたのが印象的だった。
近いうちにあの夫婦が離婚するとしてもバカの自業自得でしかないな。どのみち一族の当主になれるのは、直系の血筋で傭兵になっている者だけらしいので、バカが幾ら吠えても意味の無い戯言だ。
今までには女性の当主も居たそうなので、女だから云々という言い訳も通用しない。結局は一族の資産を自分の物にしたかったバカが、下らない事をしただけの出来事だった。ただし、巻き込まれた方にとっては堪ったものではないが……。
そんな話をしながら食事を終えた俺達は、食堂の前で別れ家へと戻る。庭に出て身体強化をしながら闘神直伝の体操をさせていると、誰かが訪ねてきたらしい。2人と一緒に家の前に出たのだが、兵士が手紙を届けに来ただけだった。
辺境伯からだそうだが、宛てた先がリヴィだったので傭兵の仕事で不在である事を説明しておく。兵士から手紙を預かっておき、再び庭で練習を始める。帰ってきてから渡せばいいか、何処行ったか知らないし。
昼になったので食堂へと移動し、大銅貨5枚を支払って昼食を注文する。席に座って神水を飲みながら待っていると、リンデ達が店に入ってきた。お金を払った後で俺達の隣のテーブルに座っている。
話をする前にリヴィに辺境伯からの手紙を渡しておく。リンデも訝しげに見ていたが、どうやら政治的な事ではなく戦争関連の事が書いてあるらしい。俺達にも見せてくれたので読む。
辺境伯の手紙の中身を纏めると、ヴェスティオンへの奇襲が今日行われているらしい。奇襲と言っても深入りせず、伏兵を奇襲するだけの様だ。どうやら挑発自体は毎日あるらしく、それに煽られたフリをするみたいだな。
ゆっくりと進軍する本隊ではなく別働隊が伏兵を奇襲し、本隊は罠を調べる事と解除を行う。罠も使えそうなら回収し、こちらの都合の良い場所に設置すればいい。とはいえ、罠の種類は多くないみたいだが……。
「戦争で使われる罠なんて大掛かりな物は使われないよ。それに、罠を使うのは傭兵であって兵士じゃないし、兵士は罠の設置方法とか碌に知らないからね」
「まあ、魔物の狩りで使われる罠もそんなに良い物じゃありませんけど……。お金が掛かる割には効果が今一つな事が多く、強いて役に立つとすれば<鉄挟み>ぐらいですよ」
<鉄挟み>って何だ? と思って聞いたら直ぐに分かった。いわゆる<トラバサミ>の事だ。踏んだらガッチリ足が挟まれて、場合によっては骨折するとかいう結構危ない物だった筈。
魔物相手にはそこまで通用しないのか……。それなりには役に立つのかもしれないが魔物のパワーじゃ1回で壊れるかもしれないし、相手が高く売れなければ赤字みたいだ。使わなくても当然だとしか思えないな。
「基本的に傭兵の中でも使う者は少ないから、罠に関して知ってる奴って多くないんだよ。その辺りは傭兵国家らしい戦術と言えるのかな?」
「エイルズの言う通り、確かに傭兵国家らしいとは言えますが……。それだけで戦争が有利にはなりませんし、伏兵の存在すらバレています。この状態は不利どころではないと思いますよ?」
「まあ、私なら素直に戦うかな? 流石にこの状況で引き揚げたら国家の威信は地に落ちるからね。ヴェスティオン側もそれだけは絶対に出来ないだろう。一度でもちゃんとぶつかれば撤退出来るんだけど……」
「きちんとした戦闘も無いままに撤退すれば臆病風に吹かれたと言われますからね。それだけは出来ないでしょう。特に現場の将校にとっては、この後の人生を左右しかねません」
「とはいえ、この戦争が起きた事自体が既にダメダメ何だけどなぁ。もう1つ傷が増えたところで……と、俺は思うけどね」
「「「「まあ……それは……」」」」
やっぱり普通はそう思うよな。そもそも傭兵ギルドを手中に収めようとした事が間違いなんだよ。つまり最初から間違っている訳で、この戦争が起きた時点でヴェスティオンの名は落ちている。後はどこまで落ちるかだけだ。
ヴェスティオンとしてはこうなる前に止めるのが1番良かったんだが、それは出来なかったんだろう。元々は傭兵の後ろ支えをする国で、やがて分裂し国とギルドに分かれた。この時点で、傭兵の国は普通の国になってしまった訳だ。
「国の方は確かに普通の国と言わざるを得ませんね。もちろんヴェスティオン側には色々言いたい事はあるんでしょうが、他国から見れば普通の国です。もはや傭兵は関係ありません」
まあリンデが言った事が全てだろう。ヴェスティオンと傭兵ギルドはもう同じじゃない。何をどう言おうと分かれた以上は、1つには戻らないし戻れないんだ。分かれていた期間が長ければ長いほど、両者の溝は深まってしまう。
珍しくそんなお堅い話をした昼食も終わり、家に戻って庭での練習を再開する。リンデ達は部屋に戻って昼寝をするらしい。朝の事もあって、傭兵の仕事にイマイチ身が入らないそうだ。それならしょうがない。
何と言うか、無駄に面倒な事だったからなー。中途半端に家が良いと言うか、血筋が良いと面倒な奴が生まれるんだろう。貴族とか王族にも多そうだな。その家や血筋に生まれた事は、凄い事でも何でも無いと理解出来ないヤツ。
よく言われる事だが、何をやったかが大事であり、何処に生まれたかはどうでもいい事でしかない。特に傭兵や冒険者が居るこの世界では、強さだけで讃えられる事もあるくらいだ。貧民からでも英雄は生まれる。
そう考えると、元の世界より命の危険はあるが、元の世界より成り上がりやすい世界なんだなと気が付いた。俺自身には欠片も成り上がりたいという気が無いが、成り上がりたい奴にとっては夢のある世界だと思う。
大体の奴が道半ばで死ぬだろうけど、そこは言ってはいけない。言われなくても理解する奴しか生き残れない世界だから。
夕方になったが、どうやら2人は今日1日で闘神の体操を覚えられた様だ。この体操の動きが完璧に出来れば1人前だが、そんな事はウチの女性陣でも出来ない。自分で修正しながら上手くなるしかないので、後は自分で頑張ってほしい。
【気配察知】をどうするか悩むが、闘気や魔力を感じられる以上はそこまで難しくはない。ただ、それだと大きさすら分からない初歩の初歩でしかないんだよなー。どうしようかね……2人を死なせない為にも、そこまでは教えるか。
この2人もそうだが、俺が教えた奴等がバタバタ死ぬのは勘弁してほしい。なので、出来得る限り生存率が上がるように色々教えておこう。2人は嫌がるだろうが追加サービスだ。
綺麗に【浄化】して家に戻ると、丁度近くに皆を感知した。どうやら帰って来ている様なのでリンデ達を起こし、皆で食堂に行く。大銅貨12枚を支払って夕食を注文し、席に座って神水を飲む。
そろそろ神水を作らないとなー……と考えていると、皆がこっちを見ていた。……どうかしたのか?。
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1005終了時点
大白金貨17枚
白金貨72枚
大金貨771枚
金貨876枚
大銀貨931枚
銀貨1121枚
大銅貨1286枚
銅貨291枚
神木石の浄化槍
神石の浄化剣
神木の浄化棍棒
神木の浄化盾
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




