1003
王女の手枷と足枷を外しアイテムバッグに回収した。今までイモ虫の様に這う形でしか動けなかったが、ようやく普通に過ごす事が出来ると喜んでいる。
それはいいんだが、お前さんは傭兵ギルドの総長と副長を暗殺しようとしたんだから、これからも自由は無いぞ? 場合によっては傭兵達から恨みと憎しみを向けられ続けるんだから気を付けろよ。
そう言ってから、俺は屋敷を後にした。王女も意味が理解出来たのかコクコク頷いていたが、本当に分かっているのかは疑問が残る。ヴェスティオンの王女だからと言って殺されないとは限らないんだぞ。
既に自分が罪人であるという自覚は、やはり無いんだろうなぁ……。甘やかされて育てられるとあんなもんかね。俺は家に帰る道を歩きながら、そんな事を考えていた。
夕方には少し早いが家に着いた俺は、誰も居ない部屋に入り少し休む。送風機を出して起動したら早速2匹が前に陣取ったが、去年と変わらない姿に少し笑いが込み上げてきた。変わらないなぁ、2匹は。
そうやって涼んでいると親子が帰ってきたらしく、部屋に来て喋り始めた。どうやら身体強化を使って魔物を倒す事が出来たらしく、今までよりも遥かに戦闘が楽だった事と、儲かった事を興奮しながら伝えてくる。
身振り手振りまで加えて大興奮するのはいいが、横の娘がドン引きしているぞ? ……どうやら多少は冷静になれたらしいな。それにしても母親の方が大興奮なのは、今までの苦労があるからか。
普通の力で傭兵稼業をしていれば大変だからな。身体強化モドキでさえも、それなりの奴等が使えるだけで誰でも使える訳じゃない。それさえ使えない傭兵からすれば、生活費を稼ぐのも大変なんだろう。
生活費に加えて武具のメンテナンス費用と家の維持費を考えると、案外ギリギリの生活だったのかもしれない。家を持っても税が掛からないとはいえ、大きな家の維持費は大変なんだと思う。だから戦争に従軍したんだろうし。
そんな事を考えながら親子の話しを聞いていると、皆が帰ってきた様だ。帰ってきた皆には悪いが、食堂に移動して夕食を食べよう。外に出て家に鍵を掛けて食堂に行く。
大銅貨12枚を支払ったら、席に座って一息吐く。今日も何だかんだと色々あったなと思う。親子の身体強化の練習だった筈が、余計な奴の所為で本当に疲れたよ。そう思った矢先に、その余計な奴が食堂に入ってきた。
嫌な予感がしたが、案の定、俺達の横の席に座り話しかけてきた。メシ時ぐらいゆっくりさせろよ……。
「そこまで露骨に嫌がる事は無いと思うのですけれど?」
「申し訳ないわね。一応殿下はウチで預かる事になったので、それだけは知らせておこうと思って来たのよ。殿下は今まで周りの者に、ある意味で恵まれ無さ過ぎたわ。だから私達の傍で仕事をしてもらう事にしたのよ」
「監視付きではありますが、それは今までの事の所為です。反省されたといっても、それに納得するかは周りの者次第です。ですから行動で示して頂こうと決まりました」
「まあ、それで良いと決めたのなら、それで良いんじゃないか? 部外者がとやかく言う事じゃないし、俺は言う気も無い。ただ、気を付けるようにしろよ」
「それにしても、生かされるとは思いませんでしたね。リズロッテの首は落ちるものとばかりに思っていましたが、王族殺しの悪評を回避したかったのですか?」
「うっ……随分ストレートな意見をありがとう。王族がするならまだしも、傭兵ギルドがそれをやると外聞が悪過ぎるのよ。戦場で死んでくれたなら仕方がないで終わるんだけど、それ以外だとね……」
「そっちの言いたい事も分かるよ。本当に王族というのは厄介だからね、殺すなら秘密裏に殺すのが1番さ。碌でもない奴等の癖に、殺すと何故か悪評が付くという厄介な連中だからね」
「………」
「王族だもの、自分達がどう思われているかなんて知らなかったんでしょうね。でもそれでは駄目よ。貴女のこれから先の人生、そこから目を背けると殺されるわ。貴女を殺す相手が誰になるかは分からないけれどね」
「1番可能性が高いのはヴェスティオン王家かな。次がヴェスティオンの貴族で、その次が恨みのある傭兵ってところじゃないかい? どのみち、今まで自分がやってきた事が返って来るだけさ」
「だな。悪い事をすれば恨まれて憎まれる、とても当たり前の事だ。王族だからといって許される事ではないしな。恨みや憎しみの厄介なところは、やられた側はずっと覚えているという事だ。忘れはしない」
「恨み骨髄って言うけどさ、その恨みは骨の中にまで入り込み、やがてその人の芯になってしまうんだ。そうなると恨みや憎しみでしか生きられなくなる。恨み憎む相手を殺すまで止まらなくなるんだ。そこに例外は無いよ」
「どう考えても恨みや憎しみを与えた者が悪いので、殺されても文句は言えません。逆恨みの可能性もありますけど、そこまでの恨みに発展する以上は余程の事が無いと難しいですからね」
「恨みや憎しみが芯になっちまった奴は邪生になる可能性も高いから、本当に恨みや憎しみをぶつけられたかは何とも言えないけどね。恨みや憎しみのままに盗賊になった奴も知ってるけど、末路は悲惨なもんさ」
「自分の感情が止められるなら復讐者にはならないものよ。そこで止まれるなら誰も苦労しないでしょうね」
総長はそう言って副長を見ていた。そういえば、この副長も復讐者か。やったのは俺だが、恨みや憎しみは晴れたのかね? 今の感じを見ていると晴れた訳じゃないが、自分の中で折り合いはついたんだろうな。
その後も総長と副長は視線を交わらせたままだった。コイツ等はここが食堂だと理解してるのか? そういうのは屋敷に戻ってからやれ。誰かのワザとらしい咳で正気に戻った様だが、お前等は中学生か!。
食事も終わったので、さっさと家に戻る事にした。総長と副長には、俺達がガイアルム王国から情報収集に来た事は伝えてある。だからといって情報をくれる訳じゃないが、戦争に関わる気は無いと明言した。
それを聞いた2人は若干微妙な顔をしたが、もしかしたら俺に暗殺依頼でも出す気だったのかもしれないな。傭兵ギルドとしてもラグナンドに勝ってもらわないと困るので支援をするんだろうが、暗殺なら自前の者達にやらせろ。
俺がわざわざ傭兵ギルドの為に暗殺をしてやる義理は無い。前回のは副長の個人的な思いが強かったから請けただけだ。ギルドとしてやるべき事はギルドでやれ。そう言うと納得した様だ。
食堂を出て家に帰り部屋へと戻る。送風機と冷房を起動して冷えるのを待っていると、皆から王女が大人しくなっている理由を聞かれたので説明するか。
「簡単に言うと、威圧して立場を分からせたうえで、呪いの短剣の事を総長と副長が説明した。それで完全に心が折れたらしい。後は思っていたよりも素直だったんで、直ぐにペラペラ喋ってたな」
「あらら……。アルドの威圧を受けたうえ、自分が捨て駒だったと聞かされれば心も折れるだろうさ。王族って言ったところでアタシ達と何ら変わらないんだ。自分の命ともなれば全力で助かろうとするさ」
「媚び諂ってでも生き延びなければ先は無いですから、当たり前と言えば当たり前の事です。王族だとそこまでせずとも生きられるので、あんなに楽天的なのでしょうかね?」
「そうかもしれないわね。自分の身に危機が迫っているという自覚すら無いのかもしれないけれど、よくそんなのが生きられるとも思えるわ。村なら簡単に死ぬ筆頭よ?」
「アレ等はそんなものさ。私も子供達を育てる時には苦労したものだよ。とにかく城で保護されてるのが当たり前だったからね。魔物を殺した現場に連れて行ったら全員が吐いたんだ。それぐらい縁遠いものだったんだよ」
「里の子供なら、いつの間にか卒業している事だな。皆5歳の時には、既に解体を手伝ったり運んだりしていた」
それはちょっと早い気がするんだが、この世界だとそんなもんか。
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1003終了時点
大白金貨17枚
白金貨72枚
大金貨771枚
金貨876枚
大銀貨931枚
銀貨1121枚
大銅貨1315枚
銅貨291枚
神木石の浄化槍
神石の浄化剣
神木の浄化棍棒
神木の浄化盾
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
神石の勾玉
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




