0099
「こんなに人が居ないのが普通なのか?」
「7層目だから、こんなものじゃないかい?」
「ん? どういう事?」
「簡単に言うと中途半端なんです。実力のある者はもっと先に進みますし、無い者はここまで来れません」
「この層では高く売れる素材も魔物も無さそうだものね」
「そういう意味でも中途半端なのか」
「まあ、ダンジョンって言ったところで殆どの奴は生活の為だからね」
「最前線の者達ぐらいですね、迷宮攻略の夢を持ってるのは」
「実力が無いと、夢を見る事も出来ないわ」
「どこまで行ければ実力者と判断されるんだ?」
「この迷宮なら、10層を越えれば実力者だろうね」
「そうですね。この迷宮は魔物がそこまで強くないですし」
「最高記録は18層だと言ってたが、それってこの迷宮?」
「最高記録は確か帝国の迷宮だったと思うわ。1番簡単な迷宮の筈よ」
「そうだよ。帝国の素材迷宮だね。魔物が強くなくて、数も少ない迷宮さ。それでも18層が限界だと言えるんだけど」
「ふ~ん。成る程なぁ……」
そろそろ休憩を終えて先へと進むか。俺達はこの場所から探索範囲を広げていったが、南の方に転移紋を見つけたので先へと進む事にした。
次の8層もまた海だ。再び探索範囲を広げつつ調査をしていくと、東に転移紋を見つけた。その転移紋の場所に着いた時、とある物を真南に発見したので取りに行く。
「ゴメン! ちょっとここで待っててくれ!」
「「「えっ!?」」」 「ニャ?」 「グル?」
俺は隠密系の技を使い、1人で走って行く。手に入ればいいな、という程度だったが本当にあるとはな。【空間把握】の探知範囲ギリギリだったんで助かった。
目の前には、大きめのバッグを背負ったオークと取り巻きが20体ほど居る。1番後ろに居るバッグを背負ったオークの首を落としてバッグを回収し、即座に離脱して皆の下に戻った。
「直ぐに転移紋を使う! 次の層へ進むぞ!」
俺は有無を言わせず転移紋を使い9層へと進む。9層は再び平原だったので、一旦深呼吸して落ちつこう。迷宮で物が手に入るパターンの1つである、所持する魔物を倒す形だった。
神様が良い物を迷宮に放り込んだりするんだが、それらは迷宮の魔物が手にして使っていたりする。強力な武器や防具でも魔物が使っている場合があって、危険な事もあるようだ。
「どうしたんです? 先程から急に1人で動いたりして」
「スマン、1人で行った方が早かったから。沢山オークが居たし」
「それ、もしかしてアイテムバッグかい?」
「そう、大型のアイテムバッグだよ。20体ぐらい取り巻きを連れたオークが持ってたんだ」
「つまり、隠密系の技を使って取ってきたんですね?」
「ああ。アイテムバッグを持ってるオークだけ倒して、奪って逃げてきた」
「そんな事をしてたんですか……。怪我が無いようで何よりです」
アイテムバッグには、ポシェット型の物から軍隊が使うバックパックのような物まで様々な種類がある。俺が奪ってきたのは、1番大きい軍隊のバックパック型の物だ。
3人に預けていた物を、手に入ったアイテムバッグに詰めていく。自分のアイテムバッグって良いね! しかし、こんな中途半端な所で手に入るとはなー。
平原を探索しながら進む。基本的には三角形の陣形で、円を描くように探索範囲を広げるという方法で調べている。どの方角に転移紋があるか分からないので、仕方がない。
「前方左からフォレストベア3、右からオーク3」
「「「了解」」」 「ニャー!」 「ガルッ!」
ダナとシュラはフォレストベアの方へ行き、メルはオークを抑えに行った。ダリアとカエデはオークを襲っていて中途半端な状態だ。仕方なくフォレストベアの首を飛ばすも、それで戦闘は終わった。
相変わらず出番が無いなと思いながら、浄化と処理をして収納する。その後、フォレストウルフ4頭を倒した時点で転移紋を発見し、次の層へと進んだ。安値の魔物は【浄炎】で燃やして行くか。
10層も平原だった。同じように探索して転移紋を探すも中々見つからない。この辺りから転移紋が層の端の方にある所為で、どうしても時間が掛かる。
1層の大きさは10キロ四方の四角形なんだが、その全てを探索するのは時間が掛かる。そのうえ10層からは、大きさが倍の20キロ四方になっている。
安値でしか売れないゴブリンやコボルト等は【浄炎】で燃やし、邪気を少しでも減らしながら探索を続ける。転移紋を見つけたのは南西だった。ようやく11層か……。
光が止むと、そこは洞窟だった。厄介な事になった……。洞窟タイプは入り組んでいて、転移紋の場所が分かり辛い。更にショートカットは殆ど無理だ。地道に攻略するしかない。
「これは……面倒な事になったね。一旦帰るかい? それとも、もう少し探索するかい?」
「もう少し探索しよう。面倒でも次が楽になるだろうし」
「そうですね。結局、この面倒な洞窟を越える必要があります」
「もう11層なのよね……本当に早いわ」
洞窟に沿ってしか移動出来ない為、あっちに行ったり、こっちに行ったりと凄く面倒だ。おまけに出てくる魔物も、ポイズンバットという毒持ちのコウモリしか出てこない。
11層から急に殺しにきてる気がするのは俺だけか? 閉所で毒持ちに襲われるとか普通に死ぬと思うんだが。戦闘中も浄化しているので、毒で苦しむ事は無いが厄介だな。
とにかく毒コウモリの数が多く、何らかの傷を受けてしまう。今のところ傷を受けていないのは盾持ちのメルだけだ。頭上からの強襲は魔法をぶっ放せば防げるんだが……。
数頼みの一斉攻撃が捌けないんだよな。【念動】を使って叩き落としたり、ダナやシュラが魔法を使ったりしてるんだが、15匹や20匹に一斉に襲われると無理だ。そうい……!?。
「皆、ちょっとストップ!!」
「急にどうしたんだい?」
「ここにマナリアがある」
「「「えっ!?」」」
俺は【魔術】を使いマナリアを掘り出す。握り拳2つ分ほど手に入ったが、これでは何か1個作るぐらいが限界か……。これはメルの装備に使うとして、槍か盾か……。
「メルの装備に使うとして、槍か盾どっちが良い?」
「私ですか? 別に私でなくとも……」
「メルの装備に希少金属の装備は無いんだし、メルでいいんじゃない?」
「私達は希少金属の装備を持ってますし、これ以上あっても使うかどうか……」
「まぁ、今すぐ作れる訳じゃないし、王都に戻ってからだな。それよりマナリア銀にするか、マナリア金にするか……悩むなぁ」
「マナリア銀だと魔力寄り。マナリア金だと闘気寄りでしたか?」
「ああ。メルなら魔力寄りだと思うが、だからこそ闘気寄りを持つというのも悪くはないんだよ」
そんな話をしていると、遠くの方に転移紋を見つけた。更に多くの毒コウモリの相手をする羽目になったが、何とか転移紋まで辿り着き次の層へと進んだ。
12層もやっぱり洞窟だったが、さっきのマナリアの事があるので進んでみる事にした。相変わらず毒コウモリが鬱陶しいが、それでも倒しながら探索していく。
そうして進んでいると、銀の鉱脈を発見した。俺は【魔術】を使い可能な限り銀を採掘すると、マナリアと混ぜて少し余るぐらいの銀が手に入った。
「メル。槍か盾か、それとも忍刀かどれがいい?」
「槍でお願いします」
マナリアと銀を【融合】し【合成】してマナリア銀にする。マナリア銀で千鳥十文字の穂を作り、薄く銀を被覆しておく。メルの槍の穂を【分離】してマナリアの穂で組み立てる。
同じ大きさ、同じ形で作ったので直ぐに終わったが、重さが変わったので確かめてもらう。どうやら重さも問題ないようだ。余った穂は【粉砕】して捨てていく。
再び先へと進み始めて直ぐ、転移紋が見つかった。皆も閉所はストレスが溜まっていたんだろう、急ぎ足で次の層へと進んだ。
▽▽▽▽▽
0099終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
金貨30枚
大銀貨35枚
銀貨6枚
大銅貨20枚
銅貨5枚
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトの小烏丸
剣熊の爪のサバイバルナイフ
風鹿の角の十手
二角の角の戦斧
二角の革の帽子
剣熊と銅亀の革鎧
剣熊の骨の半篭手
剣熊の革の指貫グローブ
剣熊の革の剣帯
剣熊の骨の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
剣熊と銅亀のブーツ
大型のアイテムバッグ