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0009




 村に到着し解体所に行く。騒がれるだろうが仕方がない、覚悟を決めて声をかけよう。



 「すみません、買い取りをお願いします。これが俺の登録証です」


 「はい、お預かりします。査定お願いしまーす」



 あれ? ……普通だ。なんだか拍子抜けしたな。そう思っていたら、いつもの熊の獣人が来た。



 「おぉ! オークの邪生か。お客さん新人なんだろう? これで一人前だと証明されたな! いやぁ、良かった!」


 「一人前?」


 「この辺りじゃ、オークの邪生を狩れたら一人前だと認められるんだよ! 普通はチームでだけどね。心臓が無いが、切られた首と心臓近く以外あまり傷がついてない。……こっちのオーク3匹も綺麗に処理されてる」


 「普通はチームで狩るのか……」


 「オークの邪生は金貨1枚、普通のオークは1匹銀貨2枚でどうだい?」


 「金貨1枚!? ……そんなに?」


 「邪生の肉体は通常の物より優秀な素材になるんだ。それに邪生になると体も大きくなるから取れる量も増える。肉はかなり美味くて皮が防具などのいい材料になるから、それぐらいの値段になるんだよ。浄化が大変なんだけどね……いつもは」


 「その金額でお願いするよ」


 「まいど! 腕が鳴るよ、解体が楽しみだ」



 邪生だったからかテンションが高かったな。俺もテンションが高いとあんな感じかもしれない、気をつけよう。登録証を返して貰い、木札とお金を受け取る。


 この後ギルドへ行くんだが、どうなるか……今から気が重い。


 とにかく、【浄化】の権能は絶対に隠し通さないといけない。バレたら面倒な事になる。気を引き締めて行こう。


 ギルド前まで来た。荷車を横に置き中へ入ろうと扉の前まで来ると、何やら中からザワザワと声が聞こえる。中に入ると人が多く、隙間を抜けながらミュウさんの所へ進む。


 すると、横からガシッと肩を掴まれた。



 「アルド、無事だったんだね。ちょっと話しがあるからついてきな」


 「ダナさん、とりあえず木札を出させて下さい」


 「木札だって? ……ちょっと見せな!」


 「あっ……」



 ”見せる”というより”奪われる”が正しい表現だ。そう思える早さで引ったくられた。



 「アンタ、オークの邪生を討伐してるじゃないか!!」


 「え、えぇ……まぁ………」


 「……今ギルドが騒がしいのは、邪生が出たという報告があったからでね? それで邪生の居場所とか強さとか情報とか、色々やるべき事がいっぱいあってね?」


 「た……大変ですね……」


 「そうなんだよ! 大変なんだよ! ……誰かさんの御蔭でもう終わってるんだけども」


 「終わってるなら、もういいんじゃ?」


 「終わってるけど……倒したアンタは新人だろう! 報告の義務があるんだよ!! ついてきな!!」


 「は! ……はいっ! 分かりました!」



 チンピラの脅しの10倍は怖いな……。倒したのに怒られても……と思いながら、ダナさんの後をついて行く。ギルドの2階に上がるのは初めてだ。


 そういえばサブマスターに会ったことが無い、その事を今さらながらに思い出した。


 2階の一番奥がギルマスの部屋らしい。その部屋に通され入り口近くのソファーに座る。ソファーと言ってもスプリングも入っていない固い物だ。


 もう一つの、執務机の前のソファーにダナさんが腰掛ける。


 すると直ぐに問いかけられた。



 「どこで邪性に会ったんだい?」


 「村の南の川を遡って行った森の中です。いつもそこで狩りをしてて、今日もそこへ行きました」


 「あんな所へかい? よくもまあ行くもんだね。あそこは魔物の出没が非常に多いトコだよ。アタシやヴェルなら問題ないけど、新人の行く所じゃないよ? ちゃんと掲示板見てるかい?」


 「掲示板で魔物の生態とか、色々確認しましたよ?」


 「アンタは~~……。掲示板には、ランクに合わせた狩場が張り出してあったろう!」


 「えっ!? ………ウッソだぁ~」


 「嘘なわけないだろう! 低ランクに危険な事をさせる訳がないって、考えたら分かるだろうに!」


 「あー……。ごめんなさい」



 掲示板のドコにそんな情報が張ってあったんだろう……後で確認しとこう。しっかし、他の傭兵に会わない筈だ。


 俺は結構な危険地帯に行ってたらしい。それなりに儲かってるのはそういう事だった様だ。


 低ランクの傭兵は生活するだけで精一杯だと知ってた筈なのに、ちゃんと”理解”は出来てなかった様だ。



 「まぁ文句言っても始まらないから、それはもういいよ。それで、森の中で会ったんだね?」


 「えぇ……他の生き物を追い掛け回していた様で、その後こっちに来ました」


 「ふーん……。で、どうやってソロで倒したんだい?」



 その瞬間、猛烈な殺気がぶつけられた。普通の人なら失神するかお漏らしするんじゃないかと思えるほどに濃密で強烈な殺気だ。だが俺にとっては、そよ風よりも優しいモノだ。


 闘神の所為で、こういうものには高い耐性がある。そもそも神界は精神と魂が剥き出しの場所で、精神と魂の防御力は紙以下になる。


 そんな中での修行だったんだ、この程度大した事じゃない。


 逆にこちらから【魔力】と【闘気】と【念力】を込めて殺気を返してもいいが、それをやったら死ぬかもしれない。


 闘神が言うには殺気や殺意だけで人を殺せるらしい。肉体ではなく精神の死らしいが。



 「どうやっても何も、浄化魔法で浄化して動きが鈍ったところを倒しただけです」


 「…………はぁ、まぁいいさ。ところで、なんでアンタみたいなバケモノがこんな田舎に来たんだい?」


 「バケモノ?」


 「そういうのは、もういいんだよ! 真面目に答えな!!」


 「なぜ俺の事をバケモノと呼ぶんです?」


 「アンタのその肉体! 精神! そして魂まで! 明らかに普通じゃない! アタシは非常に特殊な種族で、【神眼族】と言うんだ。嘘かホントか、始祖は闘神様と鬼人の女との間に生まれたらしいんだよ。アタシは先祖返りでね、不老長寿なうえ”色々”見えるのさ!」


 「あのクソ爺の!?」


 「だからアン……なんだって?」



 ……どうやらダナさんはあのクソ爺の子孫らしい。不老長寿だと言っていたし、本当の事を言っておいた方が協力してもらえそうなので説明する事にした。最悪、逃げればいいやと思いながら。



 「はーーーっ………。つまり何かい? アンタはアタシと同じ不老長寿で、浄神様から【権能】の一部を御借りしたうえ、魔神様や闘神様や念神様から稽古をつけてもらった異世界人って事かい?」


 「まぁ要約すればそうですね」


 「なんだい、その無茶苦茶の大盛りは。普通そんなの信じないよ。まぁ実際に【浄化】の権能を見せてもらって理解できた以上は、事実だと分かるけど。……分かるけど!」



 何か俺には分からない葛藤があるらしい。【浄化】の権能を使って浄化した室内で、ソファーに座ってゆっくりする。


 ダナさんは両手で顔を覆い下を向きながらブツブツと呟いていたが、突然顔を上げて、とんでもない事を言い出した。



 「アルド……。アタシをアンタの”女”にしてくれないかい?」


 「はぁっ!? 急に何言い出してるんですか!? 意味が全く分からないんですけど!?」


 「そう難しい事じゃない。アタシもアンタも不老長寿だからだよ。アタシは色々あって250年ほど前に里を出たんだけど、子供を持った事は無いし一夜の関係ばかりなんだ。理由は不老長寿さ、死に別れってのが嫌でね」


 「死に別れ……ですか」


 「ああ、アタシは既に両親や兄弟を看取ってるんだ。ああやって別れるのは辛くてねぇ……。ただ、アンタとなら一緒に生きられるからね……ずっと」


 「う~ん……いきなり言われても難しいですね。でも真剣に考えます」


 「ありがとう。真剣に考えてくれるだけでも嬉しいよ。一人寝は寂しいからね」


 「あ……、俺は浄神から”下界を浄化しろ”と言われてて、旅をしなきゃならないんです。どうしましょうか?」


 「あぁ……そうだね………うん、アタシもついて行くよ。今すぐじゃないんだろ?」


 「そうですね。そもそも旅の資金を稼ぐ為に傭兵になりましたが、まだ充分とは言えませんし。何より下界に来てまだ4日しか経ってないんですよ」


 「<下界>……。そういう人なんだねぇ。10日ぐらいで傭兵に戻るよ、無理矢理にでも。元々サブマスのヴェルに譲る事は決まってたからさ」


 「ダナさん。断られる事を考えてないでしょう?」


 「心配はしてないよ、真剣に考えてくれるって言ったしね。それに400年の夜の技を駆使して、アタシの事を”俺の女”と言わせてみせるさ!」


 「強引ですねー」


 「不老長寿の男なんて今は居ないんだ。絶対に逃がさないよ!」


 どうやらダナさんにロックオンされたらしい。サブマスには会った事が無いが、これからの仕事のしわ寄せを思い心の中で合掌した。



 ▽▽▽▽▽


 0009終了時点


 金貨4枚

 大銀貨8枚

 銀貨12枚

 大銅貨10枚

 銅貨1枚


 鋼の短刀

 鋼の鉈

 鋼の槍


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