第23話 召喚曲
その日、俺たちは、王都トルリラの街で、第14代アーサー・マクシリア・サラマンドへの謁見をしていた。公の場での謁見はこれが初めてだ。王妃の席には、ルピア=ラ=フルタク妃の姿も見える。こうしてみると、ただの美しいお妃様なんだけど。と俺は思わず思っていた。
「貴公らに、『勇者』の称号を授ける」
国王陛下から、授かる勲章。
5人は粛々と、それを受け取り、周囲を見に来た大観衆の歓声を受けた。
あれから1週間後、俺たちは聖地マークーシーから、リリィのロック鳥で凱旋していた。
悪魔を倒し、3人の魔術師を滅し、聖戦も終わらせた。
俺たちの使命は、終わったのだ。
「そして、ゲート、壊れちゃったな」
フゥの顔は、そういった割には、晴れやかだ。
この世界のことが好きになっていたからだ。
こうやって、無事、聖戦を終わらせ、使命も果たしたし、これからしばらくは、この平和の時代が続くだろう。最後にユズポンが『ふぁいやー』で、ゲートを壊してしまった事実は変わらない。つまり、帰りたくても、もう俺たちは、元の世界には帰れない。
「あら、しんみりとした顔しちゃって、どうしたのよ?」
そこにいたのは、さっさとドレスを脱いで、巫女の姿に戻ったルピア。
「あ、ロリババア」とルークがいうと。
「その言葉、今度行ったら殺すよ♡」
笑顔で、神をも恐れぬ 残虐な言葉を返された。
ため息をついて、俺がみんなの気持ちを代弁する。
「俺たち、悪魔を退治をしたものの、マークーシーのゲートを壊したじゃないですか。もう、元の世界に帰れないなぁ、と思って」
「ああ、そのこと、気にしなくていいわよ」
「気にしますよ、そりゃあ」
「あなたたちに、この国に残ってもらっちゃ、こっちとしても困るのよ。きちんと、帰還してもらうわよ」
また、始まった。ロリババアの無理ゲーである。
「ルピアの言ったことは本当だ。お前たちは、元の世界に帰れる」
俺たちの謁見に同行していたフルタクがこたえた。
「ルピア、例の楽譜をもってきなさい」
フルタクの言葉に、一冊の楽譜を持ってくるルピア。
そこに書かれたのは、
「アヒルのワルツ?」
5人が一斉に吹いた。「これ、、、なんだ?」
「神獣がうちょの召喚曲。バロバッサのゲートを守る神獣よ」
「?」
「あなたたちが、持って帰った天叢雲剣の力を使って、一方通行だったバロバッサの森のゲートを拡張したの。そのゲートで、あなたたちの世界と私たちのこの世界をつなげたのよ」
「つまり・・・帰れる?」
俺たちは顔を見合わせた。
少しずつ、感動が戻ってきた。
「ふっふっふ」
不敵な笑みを浮かべる、一同。嬉しさのあまり、にやにやが止まらない。
「どうしたのよ。あなたたち。えっ、まさか?」
悩むこともなく行動を移した。我慢していた欲求に打って出る。
5分後、ルピアは簀巻きにされて、天井にぶら下がっていた。
ひといきついたところで、フゥが、ミスリルの笛で曲を奏でる。
神獣がうちょの召喚曲。
軽快なメロディが流れて、空間に大きなゲートが開き、大きな白い神獣が現れた。
「さて、戻ろうか。放課後の異世界へ」
俺たちは、魔曲を鳴らすフゥとともに、神獣の背に乗ったのだった。
はじめまして。はるのぱせりです。放課後の異世界旅行第1章を読んでいただきありがとうございます。
この物語の発端は中学1年生の頃、執筆した作品。それを4年ほど前に加筆したものになります。もともとがTRPGのゲームシナリオとして、宿題の合間をぬって書いたものです。
日の目をみるきっかけになったのは、先ごろのステイホーム。安価で楽しい娯楽を、と家族にこの物語を読みきかせしたところ、なかなかの好評。ならば、と調子に乗って、友人に公開して、ホームページを作り、と発展していきました。
大人になっての習作としての意味も強いので、みなさん、温かい目でみまもっていただいたら嬉しいです。




