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第22話 5大神の浄化

 砦の中から、これまでにはない大きな振動が走った。

「大丈夫か?」

 リリィのグリフォンに乗ったシンとリリィが、城門の入り口のフゥとミラーに合流した。

 その大振動に対して、兵士たちは、もはや統率の取れた集団とはいえなかった。そもそも、幹部のモンリーとヤマキン、そしてケンザンが倒されたのだから、指揮系統が生きているとは言い難い。

 烏合の衆とかした兵士たちが、あっちこっちに行き交う中、4人は、砦の入り口で待機する。


 コバヤーが降らせていた外の雨は、止まっていた。

 光の柱で、輝く聖地マークーシーに対して、大地の中から噴き上げてくる闇の瘴気。


「さて、ここからが本番だ」

 4人の背後から、大男の声が響く。コバヤーが大きな虎をつれて、やってきていた。

「ガウ」

 虎が懐くように、コバヤーの足元に構える。

「まさか、この子、、、」とミラー。

「そう、君らが"ユズポン"と呼んでいる神獣だ」

 コバヤーが答え、ミラーに振り返った。


 大量の瘴気が、一気に地面を吹き飛ばした。

「漆黒の翼、ここは、選ばれし者に任せるぞ。大丈夫、彼らは、”白虎”が守る」

 コバヤーがリリィに指示を出す。

 戸惑いを感じながらも、リリィは、コバヤーをグリフォンに乗せ、飛び立った。


 一本の闇の柱が、神殿を吹き飛ばした。


 そして、そこにいたのは、大きさ10メートルの闇の塊と生える8本の首。

 そう、例えていうなら、八岐大蛇。

 あれが、この聖地に棲む『悪魔』の正体。

 

 八岐大蛇を倒し、ゲートを取り戻せば、俺たちの使命が完了だ。

 が。


「ミラー、支援魔法を・・・」

「無理よ! 今、この聖地を取り囲む範囲は魔法を使うことができないわ!」

 ミラーが使った真実の光輪の影響だった。

「もちろん、魔笛も今は使えない」

 フゥが付け加える。「魔法のアイテムも一切が力を失っている」

「真実の光輪、、、とんでもない魔法だな」

 シンが呟く。「だとするとどうする?」

 


『大丈夫、君らは勝てる』

 意志の声が、3人の頭に響いた。

「?!」

『今から、一刻、君ら本来の力を解放する』

 神獣が、3人を見て話していた。

『真の名を名乗れ。さすれば、力が降りるだろう』


 魔術師であるミラーが一番最初に理解した。

 魔法の仕組みと同じだったからだ。

「兄さん、フゥ、私についてきて!」「おう」


「我が名は、『水のミラー』。今より、魔を滅する!」

 光の柱がミラーに降りた。

 周囲から、光が降りて、ミラーの力が神格化する。

「我が眷属よ!この地に集え!」

 空から、ぽつりぽつりと雨が落ちてくる。

 雨はすぐに、土砂降りに変わった。

 

「我が名は、『風のファラウス』。今より、魔を滅する!」

 光の柱が、今度はフゥを包み込む。

 フゥの存在が、神格化した。

「我が眷属よ!この地の瘴気を吹き飛ばせ!」

 周囲に、さやさやと風が流れたかと思うと、一気に暴風が吹いた。

 雨が風と相まって、周囲が台風のような嵐へと変貌する。

 

「我が名は、『光のパーシラ』。今より、魔を滅する!」

 光の柱が、俺を包み込む。

 俺の中で、自分の知覚する範囲が広がった。

「我が眷属よ!今、刃となりて、討て!」

 かざすトワイライト=ブレードに、今まで以上の光が集まった。

 光の強さは、魔法剣の比ではない。


 俺は、光のブレードを手にして、一気に城内に踏み込んだ。

 意識と共に、俺の体が宙を飛ぶ。

 一回踏み切れば、城内など、一息で十分だ。

 八岐大蛇が、8つの鎌首を、俺に向ける。

 闇の炎が、その口から、吐かれる。

 それをブレードで、切り裂き、さらに空中を踏み込む。

 首を水平になぐ。

 一気に生首が3つ飛んだ。

 

 しかし、八岐大蛇の首が瞬時に、2つ再生する。

 なかなか、しぶとい。

 光の刃にしろ、決定的に、八岐大蛇を倒すことができない。


「なるほどな。確かに、これは一人では倒せない」

 城内から、ルークとローザが出てくるのがわかった。

 二人が、状況を理解した。

 頼む、力を貸してくれ!


「我が名は、大地のマーノ。今より、魔を滅する!」

 光の柱が、ルークに降りる。

 今度は、ルークの存在が、神格化した。

「我が眷属よ!この敵の血脈を断ち、肉体の再生を絶て!」


 その呪文とともに、さらに光の刃を一閃。

 4つの生首が飛んだ。

 ・・・今度は、マーノの印で、再生ができない八岐大蛇。

 残る首は3つ。

 八岐大蛇を封じるには、その首をすべて絶たなくては!

 さらに、振りかぶる一閃。

 2つの首が、飛ぶ。

 

 最後の一つになったとき、八岐大蛇が咆哮した。

 その口から、業火が吹き荒れる。

 距離をとり、最後の首を落とそうと構える。

 しかし、最後の業火のせいで、周囲は近づくことさえ叶わなかった。


 最後にローザが魔術に参加した。

「我が名は、闇のローザ。今より、魔を封じる!

 光の柱が、ローザを包んだあと、彼女は空中を飛翔した。

 ローザの神格化。

「我が眷属は、やさしき闇。

 悪魔よ。愛に包まれて、永遠の眠りを受諾せよ!」


 神格化した五体神による秘術。

 のちに、語られるマークーシーの最大破邪奥義。

 「5大神の浄化」だった。


 聖地マークーシーから、瘴気が散って、八岐大蛇が眠りについた。

 最後の首が飛び、神格化した5人の足元に落ちた。


 最後の生首が、一本の剣に変わる。

 伝説にある、神剣『天叢雲剣(あまのむらくもの剣)』。


「詰めが甘い!」

 球体のアンデットが、煙を吐きながら、浮遊する。「ここで開いたゲートから、再度、神を召喚する!」


 すっかり油断していた。闇の預言者ケンザンだった。

 首だけになりながら、まだ、動けたのだ。


『それはさせない』

 力強い声が背後から、飛んだ。

 神獣ユズポンの声だった。


『神が、私に教えてくれた方法で、お前を、そして、ゲートを破壊する!』


『聖なる業火』が、ユズポンの口から吐き出され、空中を焼いた。

 途端に、まばゆい光と爆風が四散した。


 空が・・・割れ、周囲が爆風に包まれていた。

はじめまして。はるのぱせりです。放課後の異世界旅行第1章を読んでいただきありがとうございます。

この物語の発端は中学1年生の頃、執筆した作品。それを4年ほど前に加筆したものになります。もともとがTRPGのゲームシナリオとして、宿題の合間をぬって書いたものです。

日の目をみるきっかけになったのは、先ごろのステイホーム。安価で楽しい娯楽を、と家族にこの物語を読みきかせしたところ、なかなかの好評。ならば、と調子に乗って、友人に公開して、ホームページを作り、と発展していきました。


大人になっての習作としての意味も強いので、みなさん、温かい目でみまもっていただいたら嬉しいです。

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