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第20話 決戦(下)

 聖地マークーシーの上空に、暗黒の雲が垂れ込めた。

 ぽつりぽつりと、雨粒が落ち始める。


「・・・とうとう、来たか」

 俺は、気候の変化に意識を向ける。

 それが、合図だった。

 コバヤーの準備が整った、ということだ。

 あとは、分散攻撃をしている3者のうち、誰かがゲートに辿り着いたときに、神獣がやってくる。

 空は十分に暗くなっている。

 上空にいるリリィとドラゴン2匹も、そろそろ、空中戦が厳しくなる時間だろう。

「ここからは、一騎打ちだ」

 俺は、力を集めた。

 モンリーが急降下して、間合いを詰める。

 光の魔法剣を展開する。トワイライト=ブレードに、光の刃が宿った。

「させるか!」

 いつもなら真正面からの戦いを避けているモンリーが、間合いを詰めてくる。

「7宝具《破邪の剣》を、とくと味わえ!」

 剣と剣が刃を正面から、ぶつかった。

「・・・!」

 何度も、つば迫り合いをしながら、切り結ぶ。

 剣戟のスピードでは、魔法は放てない。

 それ判断しての魔術師の判断なのだろう。

 しかし、おかしい、と思った。モンリーは、魔術師だと名乗る割には、ほとんど魔法を使わない。何か隠している?

 次の瞬間、それが明らかになった。

 モンリーの不自然な剣線は、彼自身が空中に魔法陣を描くためだったのだ。

 魔法陣の印は、、、。その剣線が描いた文字に、記憶の何かがひっかかった。

 まるで象形文字のような・・・?

 魔法陣が解放された。

 電撃がトワイライト=ブレードを伝って、俺の手元を襲った。

「くっ・・・」

 思わず、剣から手が離れる。

 剣を取り落とした瞬間を、モンリーは狙っていた。

 

 

 ヤマキンがあけ、ゴーレムの作成により、かなり深いクレーターになってしまった、その穴のの底でフゥとミラーは、体勢を崩していた。

 ヤマキンが、穴の淵で、勝どきの声をあげていた。

 淵には弓兵が数十名並び、2人を狙っている。

 さすがに、結界を貼ったとしても、この近距離で効果があるかどうか。

 その矢先、雨が空からおちてきた。

 コバヤーの合図だ。

 誰かが、ゲートに近づいたか?

 神獣が転移される準備ができたようだ。


 こんな不利な状況下でも使える魔術を探すミラー。

 基本術の48術のうち、こんな特殊な状況で使えるものは存在しない。

 ああ、そういえば。

 一つだけ、心当たりがあった。この状況で、起死回生を狙う大技が。

 ・・・果たして、発動できるだろうか?

 一抹の不安がよぎる。 しかし、試すしかない。

 ミラーは、困惑した。

「これで最後だ」

 弓兵が一斉に、矢を放つ。

 とっさに、フゥがミラーを庇った。

「!」

 フゥの背中に数本の矢が刺さる。

 あたかもハリネズミのような姿で、フゥは立ち往生した。

 早く勝負を決着させて。治療をしないと!

 一か八か、これにかける!

 ミラーは、魔法に全集中する。

 使う魔術は。

 聖典シルベスタスの最高魔術、、、、、「真実の光輪」



「まぁ、先生の方が、俺たちよりも厨二病だったってことだな。でも、そんな風にうまくいくかな?」

 ルークが、ぼそりとつぶやいた。

「なに?」ケンザンの表情が雲った。

 見計らって、ローザが、不可視の刃を放つ。「とりあえず、この男を倒せば、この状況は打開できるということだな」

 同時に、ローザのサーベルでの鋭い突きの連続攻撃を展開する。

 剣戟は、ケンザンの急所を見事、貫いていた。

 しかし、その攻撃にしても、ケンザンの表情は変わらない。

「その攻撃では、既に死んでいる私は倒せない」

「何?!」

「・・・つまり、今の私はアンデットだ」

 渾身の拳が、ローザを狙う。

 間合いを取り直す。

 どうする?

 緊迫した空気が辺りを漂った。


 ミラーは、「真実の光輪」を唱え始めた。 

 初夏にしては、冷たい雨が、髪を濡らし、頬を伝う。


 祈りを捧げる先は、光の創造神パーシラ。

 加護を求め、自らの真名を告げる。

 シルベスタスの聖典にある5英雄として、

 すべての魔法効果を打ち消し、

 すべての波動を打ち破る真言を告げる

 自ら、この魔術を使うのは、

 愛おしい者を守り、愛を育み、

 目の前の災厄から守るため

 力を貸してほしい、パーシラよ


 呪言にて、パーシラを説得するが、それでも術は発動しない

「真実の光輪」そうその実態は、パーシラ神の説得。


「驚いた。確かにその魔術を使われると、私たちには、打つ手もなかったぞ。

 成功していればの話だが」

 ヤマキンが、フゥに庇われたミラーを見ながら、溜飲を下げた。

「だが、これで終わりだ」

 ミラーがそれでも必死で願う。

 弓兵が、もう一度、弓を引いた。


 世界を救うなんて、大それたことは言わない。

 手の届く、愛する人たちを守りたい!

 絶望の中でも、みんなが希望の光を見るために 力を貸して パーシラ!


 まだ、何も起きない。ミラーの中で、本音と焦りが言葉になった。


 お願い、兄さん!

 私、まだ、フゥを死なせたくないの

 みんなで元の世界へ帰るんでしょ?

 だから、お願い!私に力を貸して!



 内なる声が届いた。 必死の声をあげる妹の声だ。

 切実な願いだった。

 わかった。お前に、我が力の権限を、貸そう。

 俺は、意識のどこかで、その呪言に承諾を返す。

 体の底から、力が湧き上がってきて、光が引き出された。f

はじめまして。はるのぱせりです。放課後の異世界旅行第1章を読んでいただきありがとうございます。

この物語の発端は中学1年生の頃、執筆した作品。それを4年ほど前に加筆したものになります。もともとがTRPGのゲームシナリオとして、宿題の合間をぬって書いたものです。

日の目をみるきっかけになったのは、先ごろのステイホーム。安価で楽しい娯楽を、と家族にこの物語を読みきかせしたところ、なかなかの好評。ならば、と調子に乗って、友人に公開して、ホームページを作り、と発展していきました。


大人になっての習作としての意味も強いので、みなさん、温かい目でみまもっていただいたら嬉しいです。

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