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2度目のマフラー




 外に向かい、ちょっとした広場にあるベンチに腰を下ろす。その際多くの生徒に視線を向けられたが、それにはもう慣れているので気にしない。流川さんがどれほどの人かしっかり分かった上で隣にいるんだ。


 人通りはそこまで多くない。今ごろステージの出し物や、室内での出し物にみんな必死なのだろう。楽しみながら競えるって青春してるみたいで自然と笑みが溢れる。


 これも思い出かな。


 冬の訪れをヒシヒシと肌で感じる。冬服の制服だが、それでも首元は冷える。次からは厚着をしよう。


 「ここ寒い?」


 僕が気にするならきっと女の子はもっと気にするだろう。流川さんは繊細っぽそうだし、あの日マフラーを巻いてから寒いと言うことが無くなったってことは、マフラー巻かないと寒いってことだ。当たり前だが、口に出さないと分からないことが多い世の中、ツンツンした流川さんは素直じゃないので聞かないと答えてくれない。


 「んー、そこまで。冷えるなって感じるだけ」


 「ならマフラー巻かないでいいね」


 僕は今マフラーを巻いている。僕だけだからもし寒がってたら流川さんに貸してあげようとは思っていた。別にこの冷え込みでマフラーを巻かないのは何か思うとこがあるのかもしれない。


 「優しさがあるなら寒くなくても巻いてあげるのが男子ってもんじゃない?」


 「僕は寒い、流川さんは寒くない。これで何で僕が僕のマフラーを流川さんに巻かないといけないんですか」


 「義務」


 「なんじゃそりゃ」


 「あー、寒っ」


 「……はいはい、取りますよ」


 首に巻かれた温もりを持ったマフラーは僕の首を名残惜しそうに離れる。何でこんなこたつから無理矢理出るような覚悟を決めてまで取らないと言えないのだろう。ホント、理不尽だ。


 迷惑そうに思いながらも、実はそうでもなかったりする。


 「はい、どうぞ」


 2度目のマフラー渡し。今度は拒否られることはない。もしやっぱり要らないと言ったら膝上のたこ焼きを全部食べてやる。


 「話聞いてた?」


 「え?うん、聞いてたからマフラーを渡してるんですけど……」


 「私はマフラーを巻いてって頼んだんだけど。渡してとは頼んでないよ」


 「えー、それぐらい自分でしてよ……」


 口では文句を言っても心の中では下心満載の笑みを浮かべている。流川さんに触れることが許されたということは、それほどの距離に僕は今いるということ。最高です。


 横から不器用ながらも巻いていく。なんでマフラーってこんな長いんだろう、と思うと同時にもっと長く伸びろとこの距離感を堪能したかった。


 「これでよろしいですか?」


 「うん、文句なし。ありがとう神代」


 「いえいえ、あー寒い」


 「我慢我慢」


 「分かってるよ……」


 贅沢なお嬢様だ。今思ったが、今の僕は尻に敷かれる状況と大差ないのでは?きっと世の男性なら分かってくれるのではないだろうか。賛成求む。


 マフラーが無くとも不思議と寒さは感じない。このお嬢様は隣りにいる男子に暖房器具として働き掛けているらしい。まじで助かります。やっぱり流川さんの隣が至高です。


 「そろそろ食べないと冷えるんじゃない?」


 フランクフルトはまだしも、たこ焼きは冷えるとめちゃくちゃ味が落ちる。なので温かいうちに食べた方が絶対にいい。僕なら朱雀さんが作ったという理由だけで買った瞬間に食べれるが。


 「そうだね、それじゃいただきます」


 両手にズレなし。キレイな合掌だ。食べられるたこ焼きもさぞ満足しているだろう。そりゃ流川さんだからそれだけでも満足だろうけど。


 端っこのたこ焼きを爪楊枝で優しく刺しては口に運ぶ。キレイな動作だ。


 思えばこの人のキレイじゃないとこって何処だろう。美化されてるわけじゃなくて、普通に何もかもキレイに見える。これが美少女ですか?


 「なに?」


 「あー、いや、何から何までキレイだなって思っただけです」


 「何それ。普通に食べてるだけでキレイって、神代の人を見る目はやっぱり変だね」


 「僕だけじゃないと思うけどね」


 「うん、そうかも」


 最低でも僕が知る中では三銃士は僕側の見方をする人だ。多分だが、確定でもある。あの3人は絶対に何もかもキレイに見えて、いつの間にか見惚れているはず。


 それにしても、マフラーに首を包むと顔の三分の一は隠れるって相当な小顔を持っている。たこ焼きが口に運ばれると毎回マフラーが丁寧に下げられる。そしてニンマリ。これがセットなのだが、小動物のぬいぐるみよりも全然可愛い。


 何頭身だろうか、8ぐらいかな?160にこの小顔はもう人生勝ち組だ。顔だけは。性格はドM男子じゃないと勝ち組とは思えないかもしれないが。


 いや、僕みたいな例外もいるかな。


 春夏秋冬関係なく、美少女は可愛くてキレイでカッコいいままなんだと改めて感じさせられる。特に流川さんは全て兼ね備えているので文句の付け所がないほど。出来るならカッコいいとこを分けてもらいたいものだ。


 「ねぇ神代、さっきの神代の幼馴染何だけど、好きなの?」


 「えぇ?」


 いきなりの話題が流川さんが聞きそうになかったことだから慌てて説明を求める。


 「僕が渚を好きかって?」


 「久しぶりだったんでしょ?それに珍しく神代が目を輝かせてたから相当嬉しかったんだろうなって。そこでもしかしたら好きなのかなって」


 「なるほど」


 何故こんなことを聞くのか理解出来ないものの、正直に答えるのが1番だ。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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