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倒れるのは嘘




 「おっ、なんか可愛い格好してるね、少年」


 「……鳳凰院さん」


 先程からざわつきが強くなったのは、流川さんの効果だけでなく鳳凰院さんの美も関わっていたらしい。そりゃまだ高校1年生の美少女と大学1年生の美人ならギャップにやられて声も出る。


 「お、お前この人と知り合いなのか?」


 額に汗が出ても可笑しくないほど目の前にいる人の美にやられている彼方くん。メイド姿とは掛け離れている。


 「うん。緑生の去年の卒業生で、名前を鳳凰院美奈さん」


 「そ、そうなのか……こ、こんにちは」


 「こんにちは」


 あまりの挙動不審ぶりに思わず笑いそうになる鳳凰院を僕は見逃さない。


 「鳳凰院さんはなぜここに?」


 僕がメイド姿になるとは聞いてないだろうし、来る理由も見つからない。イジる必要もなければわざわざ来ないだろうに。


 「私の記録を抜かされないか見る序に偶然ここに寄っただけだよ」


 「鳳凰院さんってプライド高いんですね」


 「だって記録に残るんだよ?私の名前がずーっと。それほどのことを成し得たんだし、記録を抜く人も見てみたいじゃん」


 記録。それは伝説のミスコンのことだ。9割の票を持っていった美人が今目の前で、知ってる人として存在している。


 相変わらずキレイで明るい。


 「誰も抜けませんよ」


 「だと嬉しいけど。――それじゃお話はここまで、ゆっくりさせてもらうよー」


 「はい」


 珍しく自分から話を切り上げる。周りの人を気にしてだろうが、それなら毎度ゲーセン行ったらその気を使ってほしいものだ。


 「お前を羨ましいと思うのこれで何度目だろうな」


 鳳凰院さんを眺め、口を開けたまま言うものだからバカ面してるようで笑みが溢れる。


 「日頃から彼方くんの才能を羨んでるからこれで五分五分だね」


 女性関係なら僕が上でも、学力運動は圧倒的に下だ。この世界の人間はバランス良く生まれてくるんだな。


 ――レジは忙しくなることはまずない。だから視線が右往左往出来るほど暇なのだが、やはり接客をする人は大変そうだ。


 顔の良い女子がやってくれるので、見ていて癒やされるのはもちろんだ。しかしレジ打ちという超絶簡単な仕事をしてる身からすると女子に重労働させてる気持ちになり申し訳ない気持ちも芽生えている。


 ってか顔整いすぎだろ、うちのクラス。やっぱり変だって。


 学校の面接で顔も選んでるなら、この学校は最高で最悪だな。


 「彼方、私と代わって」


 見ていた方向と逆。振り向くと入口側から流川さんが看板を突き付けていた。


 「え、俺?なんで……」


 「もう十分でしょ。だから後は任せた」


 「で、でも俺レジ……」


 「()()()()


 「……了解いたしました……」


 圧に屈してしまった。あれには慣れてると思ったが相当ダメージは高いようで、慣れに慢心していた男の胸を酷く貫いた。


 まだまだだな彼方くん。


 こうして何故か流川さんが僕の隣でレジ打ちをすることになったのだが、理解はもちろん出来ていない。


 「なんでレジに?」


 「飽きたの。それに見られると具合も悪くなるから」


 「なるほどね。具合悪くなるのは流石に避けないとだね」


 大人数の中に居たり、視線に敏感な人は気分が優れなくなると聞いたことがある。流川さんもそういうことなのだろう。確かに美少女として目を集めるから、気疲れを起こしてもおかしくはない。


 「お疲れ様。レジは1人でも大丈夫だからゆっくり奥で休んだらどう?」


 我ながら冴えた提案だった。


 「ううん。そこまで疲れてないからここでいい。もしかしたら神代が困ること出てくるかもしれないし」


 「そっか、でも少しでも違和感覚えたらすぐ言ってね。倒れたら僕に運ばれることになるから大丈夫だとは思うけど」


 男子に触れられたくない流川さんに、こう脅しのように言えばきっと倒れる寸前じゃなく、余裕を持って伝えてくれるだろう。


 「なら……倒れるのも……良いかな……」


 「……え?」


 しっかりとその意味を理解する。


 誰だ?今言葉を発したのは。いや、探さずとも横に居る。しかしホントに隣からなのか?信じられないことを言われた気がするのだが……。


 僕は意外過ぎる発言にしどろもどろになる。流川さんが僕に運ばれることを良いなんて言うわけが……。


 と思ってもホントのことなので信じるしかない。


 あの流川さんが……流川さんが?!


 「嘘だよ。何を考えてたか知らないけど倒れるなんて嘘に決まってるでしょ」


 「……今まで僕に何度最低と言われてきましたか?もちろんその分の罪を償ってくれますよね?」


 「無理無理。騙される方が悪いんだから。ちょろい神代が全部悪いんだー」


 「はぁぁ、変わらないね。その調子だと倒れることもなさそうでなにより」


 なぜ僕はこんなに騙される?まだ流川さんの生体を掴めてないのも確かなのだが、それ以上に僕がアホなのが原因か……。


 そこで思う。これまでのことを思い出して。


 治さなくていいかな……。


 騙されても気分は絶好調。流川さんの満足した顔も見れるなら別に気にしない。


 行動原理が何もかも流川さんになっているのが気になるが、怪我をする訳でも、不運が訪れることもないのでそのままでも大丈夫だろう。


 まさに流川依存症だな。


 「次はもう騙されないか…………ら……」


 後半語気が弱まる。理由は流川さんではない、流川さんの方向、その後ろに見える人によってだ。


 今日の僕は美少女に囲まれる1日になるらしい。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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