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目的よりも惹かれる品




 「……それ、いつになったら治るの?」


 それ、とは僕のニヤニヤのことだ。キモいとは言わないが、それは貸してもらってる分際でそんなことが言える立場にないことを知っているからで、ホントは心の底から思っているはずだ。


 ホントに申し訳ない。こればかりは。


 「男子ならみんなこうなるよ。流川さんと話すだけで1日生きていけるからね」


 「……流石にそれはキモい。あり得ないでしょ、私と話しただけで活力湧くとか」


 「んー、確かにキモくないことはないけど、違うこともないからなんとも言えないですね……」


 男子に聞かせたら喜ぶんじゃないか?ドMの塊である我ら1組男子。喜ばない男子なんて皆無だろうな。


 もう寒いことなんて何処か遠くへ消えていった今、進む足は止まることなくしっかり一歩ずつ前へ進んでいた。雲に隠れて陽光は射さない。だけど陽光と似た効果を発揮させてくれる天使が隣にいる。だから自然と消えていったのだろう。


 何から何まで感謝っす。


 「まぁ、いいや。今は早く教室に戻ることだけ考えよう」


 「めちゃくちゃ歩くスピード遅くしたら怒る?」


 「えっ、過去最高レベルにキレるよ。それか無視して先に買って帰る。最悪全部神代に任せて今から帰るね」


 全部、どの流川さんでも見たい。貴重だからこそ価値を感じる生き物としてはそう思ってしまうのも無理はない。が、怒らせては生きた心地がしないのと、関係性が崩れる危険性があるので絶対にしない。


 怒るって言っても冗談の領域だろうから、それなら幾らでも見たい。


 「それなら早く向かうしかないですね」


 「当たり前でしょ」


 「ですね、行きますか」


 雪が降っても可笑しくない天気。流石に降らないが、ある人がその人にとって意外なことをしたら言うように、今は流川さん意外なことばかり起きてるので降っていても面白かったのにな。


 ――寒さによって始められ、盛り上がった会話は店内に入るまで、いや、入っても終わることはなく僕には幸せで楽しい時間が過ぎていった。


 来たのは100円均一ショップ。簡単な小道具を作る材料を見つけるには持ってこいの場所だ。


 とはいえ必要なのは紙皿や箸、絵の具や飾りに使えるボンボンのようなキラキラしたやつなので買うものは多くない。それにしても飾りの名称を正確には分からないので曖昧だ。


 そんな中で、コーナーに足を運んではカゴの中に詰め込む。


 そんな時ふと、今の僕たちはカップルに見えたりするのかな、なんてことを考える。無いことはないだろうが、釣り合い云々で見られると絶望的。


 人生顔の印象めちゃくちゃ大事だもんな……。


 落ち込む暇もなく、早く帰りたい流川さんにあっちこっちと荷物を持ちながら案内される。先程の元気は健在だ。


 平日の午後、学生服を着た男女が買い物なんてグレてるとか思われてそうだ。こればかりは学校行事の為なんです、分かってください。


 ――「これぐらいで足りるかな」


 一通り集め終えた僕たちは品物を確認していた。


 「足りないことはないでしょ。最悪また明日買いに行けばいいから大丈夫」


 「明日もってなったら嫌なんだけど……」


 「あぁー、それは僕が1人で行くからお気になさらず」


 面倒事担当は僕だ。やれと言われてやってるんじゃなく、自らやると決めてやっていることなのでイジメではない。


 ただ、面倒事を僕が受け持つことで、他の人が楽になるならそれでいい。


 「……そうなったら多分私も付いていくかな」


 「ははっ、どっち」


 「――――ならそっちがいいじゃん」


 小声で聞こえなかった。分かるのはモジモジするようなことを言ったってこと。


 「なんて言ったの?」


 「サボれるならそっちがいいじゃんって言った」


 「あーそういうことか。それもそうだね」


 これが答えなんだとは正直しっくりきてない。違和感がある。そんな短い単語では無かったし、もっと言いにくそうなことだったんだが……。まっ、いいか。


 結局諦める。掘っても辿り着くのは真実か嘘か分からないんだから。それに知らなくてもいつか似たようなことがあれば分かる。そんな日が来るだろう。


 「それじゃ、僕はこれをレジに通して来るから適当なとこで待ってて」


 「うん。ありがと」


 重くもないカゴを下げ、レジに並ぶ。人も居なかったのでスムーズに通してレジ袋に代わった商品を持つ。


 「さぁ、流川さんはどこに……」


 2分も経過してないので遠くまでは行っていない。流川さんの目を惹く可愛いものだって無いことはさっき把握済みなんだが……見つけられないぞ。


 迷子の子供を探す親の気持ちが何となく分かるぞ。不安にはならないが、どうしようとあたふたしてしまうのは同じだ。


 「流川さん流川さん…………あっ」


 身長も高く、オーラのある流川さんは見つけやすかった。そして見つけた場所は秋の食べ物と言ったらこれ、という食べ物が売られた店の前。


 そっと後ろから忍びよる。


 「食べたいの?」


 「!?……神代……」


 肩をビクッとさせ、驚く表情をそのままに振り向く完璧なリアクションに僕は満足だった。


 「食べたいけどまだ学校終わってないし……」


 珍しく素直に答えた。ってか初めてじゃないかと思う。


 「良いんじゃない?どうせ誰にも見つからないし。こういうのも学生らしくていいじゃん」


 「それじゃ責任は神代が取ってね」


 「ははっ、いいよ」


 そんなの蚊に刺されるより何ともない。流川さんとならバレたとこでそれも1つの思い出になるんだ。どの道を選択してもメリットしかないならどうなったって構わない。


 そしてその店で焼き芋を1つ購入。半分に割って2人でシェアする。


 めちゃくちゃ甘くて、でも熱くて良く味わえないのはならではのこと。キレイな黄色で味も最高。隣に居る人も最高なら文句はない。


 それから教室に戻るまで30分ほど使ったのは買い物が長引いたから、そういうことにしておいた。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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