ちょろいのは君にだけ
天使なりに思うとこはあるらしい。僕も納得いかないことがあるし。
こういう時、多数決は最強だ。少数派の意見なんてあっても3人4人程度で聞き入れてもらえないこと。それをわざわざ時間使ってやりたくないと駄々をこねる時間が無駄なことを誰もが理解しているので抵抗ができない。
少数派にも何かしらの権利が欲しいものだ。
「流川さんって自分を見られるのが嫌なの?」
「うん。見る側は得するだろうけど、見られる側は何も得しないし、なんならデメリットが大きいぐらいじゃん。それで嫌がらない人なんて承認欲求が強い人以外居ないよ」
「あー言われてみれば」
その立場になってみないと分からないが、実際そういうこともあるのだと理解はできる。僕もエサにされた側としては共感できる部分もある。
「でも、流川さんを見てバカにする人はいないし、むしろ高評価貰えるから僕はいいと思うけどな」
「だとしても恥ずかしいでしょ。自分がメイドの衣装着て接客してるの想像してみなよ。私は恥ずかしくてもう想像もしたくない」
頭の中で着替えさせる。
「あーうん。めちゃくちゃ恥ずかしいかも」
森くんのようにはっちゃけながら周りを笑わせれる僕ではないのでおとなしく、忠実にメイドをやってる自分を安易に想像する。
「そういうこと。他人が良くても自分が良くないの。多少合わせたりはするけど、無理なものは無理」
「相変わらずだね。こればかりは可愛いものじゃ釣られない?」
「……どうだろう。その時の気分次第かな」
「可能性はあるんだね……」
可愛いものには打たれ弱い、めちゃくちゃ可愛い流川さんって面白いな。なんでこんなにも可愛いのか説明してほしい。取扱説明書でも可。
「神代はどうなの?メイドするの?」
「んー、させられると思う」
やるやらないの僕の気持ちなんてどこかへ行ってしまった。誰かに決められるという権利しかなく、もともとの権利は剥奪されているのだ。
僕ってそういうバフ持ちですか?
「ふーん。まぁ、神代のメイドは私も気になるからあり」
「ホントに?」
「うん。似合いそうじゃん」
「流川さんに言われるとやっても良いかなって思うよ」
頬が緩む。あー、美少女からのお褒めの言葉は幸せに響く。
「ちょっろ。こうやって煽てれば私の分もやってくれるでしょ」
「……心の声にしとけよ……」
上げて落とす天才。美少女ならそんなことお茶の子さいさいらしい。引っかかる男子は今後何人に増えるかな。二桁は余裕でいくと見た。
「嘘嘘。でも似合いそうとは思うよ」
「え、そんなに僕って童顔?」
「いや、童顔じゃないし、可愛いとも思わないけど、ホワホワした雰囲気とかが似合いそうって思うかな」
「ホワホワした雰囲気……」
分かりにくい。アホってことをオブラートに包んでいるのだろうか。悪意は無いだろうが、何か響くものはある。
「優しいって言ったら分かりやすいかな。接客とかそれだけで集めれそうだし、メイドとして人気出る気がする」
「そうかな?」
今日の流川さんは機嫌が良いのかよく褒めてくれる。逆に怖くも思えるが、理由を知りたい。
「うん。顔もカッコいい方だと私は思うし」
えぇぇぇー!なんでこんなに褒めるの?!明日雪降るよこれ。
「流川さんに言われると嬉しいです」
「ちょっっっろー。これでこの先メイドしなくていいようになった。ありがとう神代」
そう上手いとこ気分良くさせてくれないか。
「……最低だな。もうこの先何があっても助けません。お願いされても聞きません」
「いや、神代は優しいから絶対にお願いは聞くよ。無視できないタイプでしょ」
「さぁ、それはやってみないと分からないよ」
強がっているが、正直断れる自信はない。優しい優しくないは関係なく、人が助けを求めるなら役に立てなくても行動しようと思う。
ってか人の良心をなんだと思っているのか。この流川という女、その道で食べていけるほどやり手だ。
「今度忘れた頃に試してみようかな」
「今日から流川さんは無視するので無理です」
「できないことは口にするもんじゃないよ」
「できます」
「今の無視できないならこの先無理でしょ。ドンマイ」
「…………」
確かにそうだと思ってしまった。強敵過ぎるだろ。
「よく喋るようになったよね。僕は嫌いじゃなくなったってこと?」
あまりにも会話が続くことに違和感を覚えた。夏休みですらこんなに話して冗談言い合って、バカにされたことはない。
変化があったみたいだ。どんなものかはこれから知るだろう。
「……そうなんじゃない?私は少なくとも神代は嫌いじゃないよ」
「え?」
自分で聞いといてなんだが、予想外の返答に思わず声に出して驚いた。あの流川さんが僕のことを嫌いではない。そう言ったのだ。信じられない状況を理解しろと言われて今までできたことないんだ。そりゃ無理だろう。
「今信じたでしょ?神代ってホントにちょろいよね」
「……ホント、僕ってバカなんだって分かった気がする」
何でもかんでも信じてしまう僕は将来ツボを買わされるんだろうな。
上手いようになぜ話すようになったのかは答えなかったが、きっと答えれないほど恥ずかしいことが理由なんだと僕はこっそり思っていた。
「ほら、着いたからさっさと取って帰ろ」
「取るか取らないかは僕が決めるから。帰り遅くなるかもね」
これからやり返しもありだ。帰る時間が遅くなればその分一緒にいられるのだから、僕は良かった。
「長居するならその分取ってもらうよ」
「めちゃくちゃ大変じゃん」
「お願いね」
この1言でもう何でも取ってあげると思う僕はやはり単純だった。
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