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アメェのはオメェだよ




 2日目のバーベキューは初日より早く終わった気がした。体感だから正確なことは分からないけど、きっとここにいるみんな同じ気持ちなんじゃないだろうか。


 お腹いっぱいで満足する人が6人、肉食べたかったと顔にも声にも出してる人が1人。鞍馬くんは今日を絶対に忘れられないだろう。


 「少ししたら肝試しやろーぜ」


 全員太い丸太に腰を下ろしている中、森くんが提案をする。丸太に座るなんてキャンプらしくて良い。


 「肝試し?そんなスポット的なのあるの?」


 「スポットではないけど良さ気なとこはある」


 僕たちもどこにあるかまでは聞かされてない。なんなら今の女子と同じく肝試しをするしか聞かされてないから、へぇーと共感するしかない。


 「全員参加するだろ?」


 誰もしないとは言わなかった。そういう流れとか関係なくみんな乗り気だったのだ。流川さんもイメージ通りなら肝試しに耐性があってパートナーを支えるタイプなので、僕の中では今頃ウキウキしてるのではないかと推測している。


 あっ、やべ、見てるのバレた。


 こっそり見ることも効かない。もう視線に敏感すぎて生きにくいレベルに到達してるだろう。あの速さ。


 「そんじゃ!!もちろん今回も男女での肝試しを――」


 「それならパスで」


 森くんのハイテンションを遮って流川さんがやっぱり参加しないと表明。そりゃ2回も男子と2人きりなんて耐えられないだろうし、もうすでにキモいやつらを目にしてきたので余計に無理と感じてるはずだ。


 「えぇ!ダメなんですか?!」


 「なんでまた男子と一緒に参加しないといけないの?」


 「それはせっかくのキャンプですし!流川さんと一緒になれたら嬉しいからです!」


 「森キモい」


 「あっはぁ!ごめんなさい」


 誰が見てもキモい。鞍馬くん以外声に出してないが、きっとキモいと思ってる。ドMの頂点はここまで見るに堪えないのか。


 「いいじゃん蘭、せっかくだからやろうよ。私も男子とは嫌だけど森を引かなければまぁまぁ大丈夫なんだし」


 陽菜さんも森くんをぶっ刺す。快感を与えないでほしいものだ。喜ぶ姿を目にしただけでゾワゾワ背中に嫌なものが来る感じがする。


 「そうだよ。もしかして蘭ちゃん怖いの無理な女の子?」


 「ち、違うけど。怖いのより男子が嫌なだけだし」


 「えぇー、それなら私たちが参加するなら参加すると思うけどー?」


 雫は何かを探るように流川さんを見上げる。身長差は5cmほど。雫の言う通りいつも流川さんは2人が良いなら私も良い主義なので引っかかることはある。


 「わ、分かった!参加するから」


 「だってよ」


 「ありがとう蓮水さん」


 なんとか女子の説得で流川さんも参加してくれることになった。また流川さんをくじで引ければいいが、逆にそれが負担になるかもしれないから今回は雫か陽菜さんのどちらかがいい。


 1人は無理。途中で攫われる気がして落ち着けないし、常に叫びながら前に進まない状況が続くだろうから無理。


 「じゃ今度こそ!くじ引きを始めたいと思いまーす!」


 ノリは先程と変わらず響くこともない森の中、声を大にしてテンションの高さを知らせてくる。


 「説明はしないよ。さっきと同じ手順でやってくれればいいから」


 そして森くんは切り替える。


 「っしゃ、お前ら勝負だ。負けたらここに来た意味無いからな?このためだけに3日という夏休みの貴重な時間を使ったんだから」


 「光輝、お前はまだアメぇな。世界で1番アメぇ食べ物よりアメぇ。貴重な3日って言ったか?バカだな。俺にとっては美少女3人とキャンプに来れることを貴重な3日を使ってとは思わねぇ。俺はな、有意義な3日、そして幸せを勝ち取る3日と思ってる。だからな、アメぇお前には負けねぇんだよ」


 え、やっぱり合コンに来てる?


 鞍馬くんはきっとここを人生の分岐点だと勘違いしているのだろう。分岐もなにも相手にその気がないのだから勝手にハンドルを操作して事故ってくれれば嬉しいんだが。


 「おいおい智、お前も十分アメぇぞ?何が幸せを勝ち取る3日とか言ってんだよ。もう俺はすでに幸せは勝ち取ってるんだよ。だからな、次目指すのはこれからの未来(付き合うこと)だろ。先も見据えてないお前らに俺が負けるわけねぇなぁ!」


 どんどんと先に言った人の揚げ足を取るように勝つことを確信し始めた男子陣。こういうとこを見るとバカでどうしようもないやつらだとはいつも思う。でも同時にいい友達だとも思う。


 仲が悪くならない。いい関係だ。


 こうなれば――。


 「どいつもこいつもアマいねぇ。何が貴重な3日、勝ち取る3日、未来を勝ち取るためだよ。僕はなぁ、余裕があるんだよ。3人とも勝つことに必死になってるなんて醜い醜い。僕ともなれば勝つことが当たり前すぎて余裕が出てくるよ。だから必死で焦ってる君たちには負けねぇなぁ!!」


 「なに?!か、神代が!?」


 「ノッてきた!?」


 「しかも、俺らを超えてるだと!?」


 僕がノリに合わせたことに驚きながらもすぐさま合わせてくれる。ちょっとやってみたかったことをこうやって支えてくれるもらえると、助かるし嬉しい。


 さぁ、誰がこの場で勝利し唯一の敗北者となるか。きっとそれが誰になろうと楽しいことには変わりない。


 僕が最後、森くんが1番、彼方くんが2番、鞍馬くんが3番で引くことになり、各々運を手に込め唸る。僕が紙を手にすることで引き終わる。同時に緊張感が張り詰める。


 やはり合コンで間違いない。


 「3.2.1.0ォォ!!」


 森くんの掛け声で開く。書かれた番号に目を落とす。今回も4がハズレ、ボッチの紙となるが僕の番号は……。


 4人声を上げる。絶望の声が喜びの声3人に勝っていたのは当然かもしれないな。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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