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なんだかんだ親友は助け舟を出す




 「俺、1人のやつが不正しなように父さんに頼んで全部のシールを動物だけ同じにして、色とデザインは変えるように頼んでたんだよ」


 不正対策を前もってしていたと言う森くん。徐々に鞍馬くんの顔が焦りに変わっていくように見えて、ワクワクしてきた。最低かもしれないがスカッとすることなら誰でも同じだろう。


 成敗されるのか鞍馬くん……。


 「だからほら、俺の写真にあるネコは4つとも全部違うしイヌもライオンも全部な」


 スマホの画面を見せて堂々と説明を続ける。それを黙って聞いている。言い訳を考えているのか、暑さでやられてるのか、じわじわと汗が滲むのが見える。


 「それでさ、このネコとお前のネコ一緒じゃないか?それにほら、これもこれも。おいおい、俺だけで5つも同じのあったぞ。これからみんなのと見合わせていけば全部同じやつになるんじゃないか??」


 不敵な笑みを浮かべ始めた。逆転とはまさにこのこと。さっきまでの威勢は何処へ、鞍馬くんは黙って再び腰を下ろした。


 「……不正を働きました、ホントに申し訳ありません」


 うん、正直でよろしい。


 地面に頭をこすりつけ、罪を認めた。言い逃れができないと判断できたのは一歩成長した証拠かもしれない。まぁ不正した時点で後退してたようなものだからプラマイゼロだな。


 謝罪をする鞍馬くんに、森くんは耳元で煽り、彼方くんは腹を抱えて笑い、雫は苦笑いをし、陽菜さんは呆れ果てていた。僕は、ついに行くとこまで行ったかと逆にクズの頂点まで登ったことを褒めていた。


 そして流川さんは、鞍馬くんを腐った魚を見るような目と、ありえないキモいクズ以下という罵詈雑言を並べていた。誰も止めない。止めれるわけがないし、止めたら鞍馬くんが反省しないままというのが分かっているから。


 クズの権化ここに誕生。


 「一応の策として考えてたことがこんなにも使えるなんて、やっぱ智は親友だな!!」


 追い打ちをかけまくる。鞍馬くんはホントに申し訳なさそうだった。


 散々な結末を迎えたがこれでこのゲームは終了となった。結果はなんと僕たちが1位という好成績。これで誰よりも豪華なご飯を食べられると、目の前で行われてる煽り大会よりワクワクしていた。


 「そんじゃ少し休憩するか」


 「そうだね」


 煽り終え満足気の森くんはそのままの流れで休憩を取ることにした。良かった、このままだと疲れて倒れそうだったからナイスタイミング。


 部屋に戻ると変わらず脱力鞍馬くんが膝を抱えて隅っこに落ち込みオーラを纏って座った。


 「おい智、自業自得だろ?そんな落ち込んで被害者ぶるなよ」


 森くんだけでなく彼方くんも今は敵だ。


 「……しゃーねーな」


 さっきまで煽りに全振りしていたのにいきなり頭を掻きながら助け舟を出してきた。


 「智、吊り橋効果って知ってるだろ?」


 「…………」


 返事はなくそれでも続ける。


 「今日の夜、肝試し行く予定なんだが、もちろん二人一組で」


 「……?!」


 間はあったものの、ピンと来た瞬間だろう、顔を上げた。


 「お前まさか肝試しでもチャンスがあるのか?!」


 やはりこの男に反省という文字はなかった。


 「楓斗、今の撮ってたか?」


 「バッチリな」


 と、森くんは前もって彼方くんにこの瞬間を撮影するように頼まれていたようで、動画を撮っていたことを教える。


 この2人もなかなかえげつないことをするものだ。


 「光輝てめぇ!」


 久しぶりの下の名前。下ネタで呼ぶほど余裕はなかったのか森くんに襲いかかる。


 「おい!そんなことしたら……まじで肝試し無くすぞ!」


 1言言ってやれば襲うのをすぐにやめる。きっと今、行動原理が肝試しなのは世界で鞍馬智だけ。


 「つってもくじ引きだからな。それは変わらないからハズれたら運が悪い自分を恨めよ」


 「んなのは知ってるわ!次こそは絶対にお前らを嘲笑ってやる!」


 「まぁ、頑張れや」


 温度差が赤道と南極ほどある。鞍馬くんはさすがに2回連続とは思ってないだろうし、2人も四分の一にはならないだろうとどちらも思っているだろう。


 余裕をかましてると良くないことが起きるので僕は当たらない可能性もあると思っておく。肝試しというか怖いのは得意ではない。


 深夜トイレに行く際、電気を消した瞬間に猛ダッシュするのは当たり前で、明かりがないと家の中ですら歩きたくないと思うほどビビりだ。


 一応見た目は耐性ありそうに見えるがそれは見た目だけで中身は幼稚園児とほぼ同じだ。我ながら恥ずかしい。


 「そろそろ外行くか!」


 「よし、勝負の時だな」


 「お前ら、負けても泣くんじゃねーぞ」


 バカ三銃士しっかりと揃いました。僕以外誰も見てないからそれぞれカッコつけて決め台詞を1言。ダサいダサくないの前に、合コンじゃあるまいし、気合いを入れるタイミングをミスっている。


 そんな3人に僕は何も言わずついていく。見てるだけで楽しい。


 今から晩御飯ということで、順位で決められた食べ物だけを食べることができる。


 1位はすべての食材。2位は肉とトウモロコシだけ、3位は肉7枚以内と野菜だけ。そして4位、鞍馬くんは肉3枚と野菜だけ。ホントは肉5枚だったが減らされた理由は言うまでもない。


 2日目の晩御飯、昨日からの時間経過を考えると早く過ぎていくことに寂しさを感じる。明日で帰宅となることが、どれだけこの時間までに思い出を作れたのか分からせてくれる。


 きっとこれも忘れられない日になること間違いない。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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