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天使の初めてを何個も奪った




 流川さんに追いかけられながらも僕は笑って逃げる。傍から見るとカップルだが、実際はボコボコにされないよう逃げているドMの図だ。


 この時間がとても楽しいのは僕だけじゃないと良いんだけど。いや、僕だけだな。今の流川さんに楽しいなんて微塵も感じてないだろうから。


 流川さんは堅いな……。


 そして逃げ続けること1分、僕は自然と足を止められた。


 「あっ、ライオンのシール」


 ポイントにして最高である3ptのシールを見つけた。どっしりと根付いた木の枝に貼ってあるが、どうやってここに貼ったのか普通に気になる。


 足を伸ばすだけじゃ届かないことなんて分かりきったことだが。脚立でも使ったのだろうか。なんにせよここまでしてこのゲームを企画してくれたことに感謝と、楽しませてくれることにも感謝をする。


 森パパしか勝たんってやつ。


 「流川さん、シール見つけたよ!」


 流川さんを見てすぐ伝える。しかし止まることを知らないようで、勢いは多少減らされたもののそのまま僕にタックルしてきた。


 勢いのまま僕と流川さんは同時に倒れる。


 「いててて、なんで止まらないの」


 「1回痛い目見ないとまたするかなって」


 仰向けの僕に馬乗りをしながら睨んできた。全体重載せているだろうが、あまりにも軽すぎるので疑わざるを得ない。ホントに160cmの重さなのかと。


 「ごめんごめん。好奇心に勝てなくて」


 この態勢になってからどんなことをされてもいい覚悟はできている。顔面を殴られても腹を殴られても怒ることはない。ただ欲を言うなら力加減は考えてもらいたい。


 「次したら……とにかく許さないから」


 「分かった」


 おそらく僕はもう1度、いや何度もやるだろう。あれほど笑えるんだ、1回だけじゃもったいないだろう。


 それに許されないだけだから、別にボコボコにされることもないんだ。気楽にイタズラしようかな。


 楽しさのあまり浮かれた気分になっているが、思い通りにいかないことが何度もあったのにも関わらず反省していない僕は相変わらずバカだった。


 「ほら、あれ。やっと1つ目見つけたよ」


 枝を指差し見てと促す。


 すると視認した流川さんは顔を戻して僕の右頬に右手で軽くパンチしてきた。


 「ナイス」


 これがもうやばいんです。普段は見せない表情を予想外の時に見せるんだからいつだって心拍数は跳ね上がる。


 そんな今は流川さんが馬乗りになっている。もしかしたらドキドキしているのがバレるかもしれない。これぐらいいいかな……いや、良くないか!


 「そろそろ立ち上がってもいいですか?」


 「あーごめん。そのまま地面と背中をくっつけててもいいけどやっぱり立ちたい?」


 「立たないと色々と大変なんで立ちたいです」


 「なら仕方ない」


 スゥーと軽くなった感じもあまりしなかったものの、しっかりと退けてくれた。あの態勢のままでも良かったけどバレてはいけないことをバラしてまで保つのも違うと思った。


 流川さんに馬乗りされた唯一無二の存在だ。


 やばい、こう思うだけでドMになってきてるのを感じる。


 背中に貼り付いた葉や土を払う。流川さんも僕の手の届かないとこを払ってくれた。それだけで幸せだったのは内緒。


 そして払い終えるとスマホを取り出しカシャッと1枚写真を撮る。正直、流川さんも画角に収めて一緒に撮りたかったが贅沢は言えない。


 「よし、これで3ptゲットだね」


 どこのペアも鞍馬くんも見てないので分からないが、多分僕たちが1番遅くシールを見つけたペアだろう。開始して15分過ぎ、まだ時間があるとはいえ他のことに時間を使ってしまえば晩御飯が質素になるので、それを避けるべく他を探しに行く。


 今の合計は5ptだ。最下位でなければいいのだが。


 「次行こう」


 「ねぇ神代、神代の高さからものを見てみたいから私を背負ってくれない?」


 「え?いきなりだね」


 「いいから、早く屈んで」


 「う、うん」


 言われるがまま屈んで背中に人が乗れる空間を作る。


 なぜこうなったのかは不明。答えはどうせ教えてくれないんだ。気にしないでいよう。


 背中に流川さんを乗せる。僕はもちろん落ち着いてはいなかった。だってあの流川さんが背負ってなんて言う世界線があるとは思えない。それも僕にだ。


 「乗るよー」


 背中にドシッではなくフワッと乗る。やはり軽くて何時間でも背負えそうなほどだった。そしてなにより柔らかいものが伝わってくる。流川さんは聞くところ平均ほどの胸らしいが、今はそれ以上に伝わってくるものがあり、人は簡単に信じるものではないと学ぶことができた。


 ここは天国ですか?違うなら僕はなんて至高なことをしているのだろうか。幸せ続きでホントに倒れそうだ。


 しかし踏ん張る。意識を違うとこに追いやって。


 「あー、やっぱり楽だね」


 「もしかして疲れたから僕に背負ってって頼んだの?」


 「おー、やっぱり高いとこから見る景色は違うね」


 はぐらかされた。ということは自然とそういうことだったと言うことを証明していた。人力車ってわけですか……。


 まぁ、重くもないし、いい匂いもするし、柔らかいものは伝わるしハグされてる気分を味わえてお釣りが出るほどなので、何があっても降ろさないが。


 ここで1つ良いことを思いつく。良いことなのはもちろん僕にだけ。人力車にするならその分の報酬はいただかないとやっていけないよな。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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