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嫌いだけど好き、それは矛盾じゃない




 流川さんの好感度はどうやったら上げれるのか。それから調べる必要があることに気づいた。この前に雫に聞いておくんだったと後悔する。


 なにも策がないのにどうやって好感度を上げるか、僕に残された選択肢は1つ。成るように成れだった。


 バカげているがこれ以外に道はない。あっても知らない。それにもう歩きだしているから戻ろうにも戻れない。


 隣、先程離れた距離を自然と詰める。流川さんはそれに対して気づいているのか判断できない。でも気づいて何も言わないなら許されたということで、気づいてなければそれでいい。


 微風が運ぶ流川さんの匂いは甘美な匂いだ。


 変態臭のする感想だが、ホントにそうなのだから仕方ない。オブラートに包もうとしてもそれが逆に気持ち悪くて僕には無理だ。そんな語彙力もないし。


 「見つからないね」


 探し始めて15分といったところ。まだ見つけられていないのだ。そんなに見えにくいとこに貼られてあるものでもないのに。選択をミスったのかもしれない。


 「神代って会話途切れたらすぐ新しい話振ってくるよね」


 毎回毎回無言がやってくればその度に話されることに嫌気が差したのだろうか。流川さんは落ち着いた雰囲気で言ってきた。


 「え?うん、静かよりはそっちの方がいいかなって」


 「私と話すの楽しい?」


 ここで偽りを言えばきっと流川さんはいい思いをしない。そう悟った僕は足を止める。


 「それはもちろんだよ。楽しいから話を振ってるし、流川さんと話す機会なんて滅多にないから仲良くなるチャンスでもあるからね」


 一文字も偽りはない。「た」から「ね」まで全てに気持ちを込めた。しっかりと伝わるように。


 「……神代はお人好しってやつだよね。自分のことよりも誰かのことを気にしてる気がする」


 「そうかな?」


 自覚はない。やりたいようにやってるだけで、たまに手伝おうとか良いようにしようと思って行動するぐらいで常に意識してるわけではない。


 そんな僕の中身を覗いたかのように流川さんは続ける。


 「私、お人好しは嫌い。神代みたいな誰にでも優しくして、困ってたらどうにかしないとって衝動から行動する人は特に。そんな後先考えない人は嫌い」


 2度嫌いと繰り返す。


 それは本人の口から聞かずとも過去になにかあったのだと理解するには十分すぎる内容だった。


 「でもね、同時に好きでもあるの」


 何かを思い出すように声色を変えた。普段より可愛げのある、幼気さをも感じさせる声色に。


 「矛盾してるって思うかもしれないけど、それだけは変わらない」


 そう言い終えた流川さんは満足したような表情を見せる。


 「あっ、好きって言っても神代のことは微塵も思ってないから気にしないでね」


 「……分かりました……」


 余計な1言とはまさにこのことだ。今日は良くも悪くも心臓に棘が刺さる。やめてくれ。


 「なんでいきなりそんなことを言い出したの?」


 「んー、神代が重なった気がしたからかな」


 重なった?


 何に重なったなんて分かるわけがない。流川さんしか知らない領域に足を踏み入れるわけにもいかないからこれ以上の詮索はやめておく。


 「よく分からないけど良かったよ」


 良かったと言えるのは満足気な流川さんが不意に無意識に笑顔を作ったから。それを見逃さないのは運がいい。しっかりとニコっとしたとこを捉えることができた。そんな笑顔からはマイナスなものは感じられなかった。


 そしてなにより今言ったことが男子と距離を置く理由なのだと理解することもできた。


 2人同時に止まっていた足も動き出す。


 その前に靴紐を結ぶ――フリをして枯れ葉を1つ手に取る。


 「よし、そろそろポイント取らないと夜ご飯が生野菜だけになるから頑張ろうか」


 「私は生野菜だけでいいから戻っててもいい?」


 「ダメだよ。流川さんも協力しないとみんなに色々とバラすからね?」


 「……それは仕方ないなぁ。あっ、神代が私と探したくて探したくてどうしようもないぐらいなら協力してあげてもいいよ」


 脅されても強気に出るのは僕がバラさないと確信しているからだ。ここにきて逆を取られるとは。


 「流川さんと探したいです。流川さん以外にパートナーにしたくないぐらい流川さんがいいのでどうかお手伝いをお願いします」


 気持ちはこもってなかったけど、一応は本心である。嘘っぽく見せるために気持ちを込めてなかっただけ。


 「そ、それなら仕方ないから手伝ってあげるよ」


 ホントに言うと思ってなかったのか、少し動揺したように見えた。僕の知識ではこんな女の子をツンデレと言うのだが、そう言えるのは距離が縮まったことによる錯覚だと秘めておく。


 「うん。ありがとう」


 「それじゃ今度こそ探すぞー」


 スピードアップする。それほど見つける意欲が湧いたということだ。これならいけるだろう。


 流川さんとの距離をグンっと縮める。そして流川さんの後ろから手を伸ばし、先程持った枯れ葉を顔の前に落とす。


 「うわぁ!蝉!蝉が!!」


 「ぎゃぁぁ!!!」


 まさに濁音がついた叫び声。100点満点の驚きだった。後ろに大きくジャンプしてあたふたしている。それを見て僕は笑う。めちゃくちゃ笑う。声も今までで1番出して笑う。


 「あっはははは!」


 僕が笑うことで全ての企みを理解された。


 「神代ぉぉ!!!!」


 驚かされたことにプンプンの流川さん。怒ると怖いと思っていたがそんなに怖くない。感覚が鈍っているからではなく、普通の感性からしてそう思う。


 まだゲームが始まってポイントは獲得できていないのにこんなに楽しいのはきっと僕たちだけだろう。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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