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美少女は取扱説明書が必要です




 全員が引いた時、僕は自分の右手に持つ紙に目を落とした。緊張の瞬間、書かれた数字を確認する。


 『2』


 「あっ、当たりだ」


 つい口に出してしまった。が、それほど安堵したということでもある。4でないことが今の僕にどれだけの心のゆとりを作ってくれているのか、それは計り知れないものだ。


 各々確認する。女子もそれに合わせて紙を見ては喜ぶこともせずただ僕たちの結果を待つ。


 誰がハズレを引いたか、それは3人に目を向ければ一瞬でわかった。


 「よっしゃぁ!」


 と叫ぶのは彼方くん。


 「あぶねぇ!当たりだわ」


 と僕と同じく安堵するのは森くん。


 つまりハズレくじを引いたのは言うまでもなく、あの下ネタ大好きくんだった。


 「嘘だろぉぉぉ!!」


 信じられない現実に膝から崩れ落ちる。綺麗すぎてその道のプロかと思った。


 両手を地面につけて嘆く。これが二次元の世界なら強すぎる敵に対して絶望するキャラクターのように見えるが、現実ではとても見るに堪えない変態の終着点だった。


 「どんまぁぁぁい智。変態は1人がお似合いらしいぞぉぉ」


 追い打ちをかける森くん。先程の髪を下ネタでいじられたことを根に持っているのか、邪悪なものが言葉に載せられ鞍馬くんの胸を刺していた。


 楽しそうなのでなによりだ。


 「盛り上がってるとこ悪いんだけど結果はどうだったの?」


 雫が僕たちの番号を聞きに近づく。


 「あー見ての通り鞍馬智くんがハズレを引いてですね、俺は1を引きました」


 森くんの機嫌はここに来て最高潮まできていた。分からないこともないけど血も涙もないない友人だこと。


 「じゃ、森くんは陽菜ちゃんとだね」


 「了解!」


 テンション高めに承諾してすぐ鞍馬くんを煽りに行った。相当溜まってたのだろう。いい機会を見つけたものだな。


 「彼方くんは?」


 「俺は3を引いたけど」


 「それなら私だ!よろしく!」


 「おぉ!よろしくな!」


 彼方くんもご機嫌だ。


 こうなれば自然と僕と流川さんがペアということになる。運がいいのか悪いのか、これは圧倒的に良い方だろう。


 「じゃ、僕は流川さんだね。よろしく」


 朝のテンションで挨拶をする。きっと僕との距離が少しでも縮まってるだろうから傷つく準備もない。


 「うん。よろしく」


 あれ?なんかツンツンしてない?


 腕を組んで目も合わせてくれない。そんな流川さんは思ったよりツンツンしていたが、まぁすぐに朝のようになるとそこまで気にしていなかった。


 「ペアも決まったことだし始めようか。あ、1人決まってないけどぉぉ」


 森くんは止まらない止まらない。今日の夜、刺されでもしないか心配だ。一応起きとくのもありかもしれない。


 「制限時間ってどれくらい?」


 そんな森くんを当たり前と思い始めた陽菜さんはおかしな森くんをそのままにいい事を聞いてくれた。


 「今から2時間半にしようかな。多分それでも全部は探しきれないと思うけど」


 そこまでこの土地が広いのかと改めて森家の財力には驚かされる。それにしてもこんな広大な土地を僕たちが自由に歩き回れるなんて信じられないな。


 近所迷惑なんて気にせず遊べるのだからこれ以上のアウトドアの楽しみ方はないのでは。


 「おっけー」


 「それじゃ今から2時間半後にここに集まるってことで――よーいスタート!」


 と言うことで僕は流川さんとペアになりシールを探すことになった。これは最大のチャンス。誰に見られようとペアなのでどれだけ話しても怪しまれない。


 この2時間半が距離を縮める重要な時間だ。無駄にはしたくない。


 と、いつも流川さんと会うときに考えていることをルーティンのように考え流川さんの隣を歩く。


 ちなみに僕たちはすでに流川さんの力によって2pt取得しているのでスタート時から一歩リードしている状態だ。流川さん感謝します。と同時に楯突くのはやめておきます。


 そして始まって僕たちペアは2ペアと鞍馬くんとは別の方向に向かって歩き出した。行き先が被っていて得することは何もない。


 森の中で日差しが遮られているからと言って決して涼しいわけではない。半袖半ズボンでなければ汗が無限に出てくる。今はまだ滲み出ることもないが、そろそろ蒸し暑さにやられるころだろう。


 「勝ちに行こうね」


 そんな暑さから逃れるためには流川さんに集中するしかない。なので無理にでも話す。ってか話したい。


 「勝ちには行くけどそんな近寄らないでよ」


 「え、あ、ごめん」


 うん、めちゃくちゃツンツンしてた。朝見たのは絶対に夢だ。多分寝てるときにタイミング良く痛覚が同調しただけだ。それ以外考えられない。


 僕は少し離れた。


 「ねぇ、朝のこと覚えてる?」


 聞いてはいけなさそうだが、どうせ早かれ遅かれ聞いてただろうから刺されるのは早いほうがいいので今聞いておく。


 「朝?水切りしたこと?それなら覚えてるけど」


 えぇー???覚えてるんですかぁ?


 もう意味が分からなかった。なぜ覚えているのにその朝の対応と今の対応が180度違うことに気づかないのだろうか。いや、気づいてるけど知らないふりをしている?いや、それはない。それなら水切りしたことも知らないふりをするはずだ。


 これはまた流川さんに振り回されそうな2時間半の始まりなのか。なんであれ確信できることは流川さんは謎が多い人だということ。


 よく陽菜さんと雫は親友になれたものだ……。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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