表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/60

運命は味方か敵か




 「じゃ、ゲームについて説明するよ。まずこの森の中にネコとイヌとライオンの3種類のシールが適当に貼られた木があるんだけど、その木を探して見つけたら写真で撮って最後にその写真を見せ合ってポイントが高いペアの勝ちってゲーム。簡単に説明するとこんな感じ」


 ざっくりだったが分からないほどバカはここにはいない。


 「ペアって言った?それって2人ペア?3人ペア?それとも男女で別れてのペア?」


 雫の気になるとこはやはりそこだった。男子からしたら誰でもフェルカムなのだが、女子からすればそんなことはないらしいので男女2人1組は否定されるだろうな。


 「もちろん男女に決まってる!」


 「えぇ……」


 案の定3人全員が嫌そうだった。特に流川さんは目立ちまくってた。目での威圧がハンパない。ライオンに睨まれるネコだ。ポイント総取りされるぞこれ。


 「せっかくだからここは目を瞑って協力してくれよ。悪いことはしないから!」


 誘拐犯の口癖だな。悪いことはしないから、が無かったらまだ良かったものの、余計な1言だけは得意な鞍馬くんだからこそさらにキモさが増していた。


 やはりいいのは顔面だけのようだ。


 「私は別にいいけどね。そこまで嫌じゃないし」


 「ホントか香月!お前ってやつは!」


 陽菜さんは日頃から3人とよくいるので慣れているのだろう。男勝りとまでは行かずとも近しい性格をしているからもし何かされるのなら倍になって返されそうだ。


 「じゃ私も賛成する。仕方ないから付き合ってあげる」


 「蓮水さんまでありがとう!」


 森くんの言い方はずるかった。蓮水さんまで、と言うことで残る流川さんを絶対に参加させる流れに自然と持っていった。テクニックだけは冴えてる勉強のできない森くんらしい戦法だ。


 「分かった。私もするよ」


 「おぉ!ありがとうございます流川さん!」


 男子陣湧きまくる。流川さんには敬語を使うほど威圧されていたもののなんとか視線で動けなくなることはなかった。良かったな3人とも。


 しかし実は流川さんは分かったと言う前に舌打ちをしていた。聞こえていたのは雫と陽菜さんと僕だけで、そのオーラが凄かった。嫌だけど雫と陽菜さんのためにと葛藤をしていたようで選択に時間も要していた。


 舌打ちされたの知らないなんてみんなからしたらドンマイだな。


 ドM集団にこのことを話すとなんで言わなかったんだと責められそうなので隠しておく。


 「みんな参加ってことで話し続けるよ。次にポイントについてなんだけどネコが1ptイヌが2ptライオンが3ptになるからそこは覚えておいてくれ。ポイント高くなるにつれて数も少ないから頑張って」


 「それならどこかのペアに隠れてついていけば最悪同点にできるんじゃないか?」


 彼方くんの指摘はその通りだった。もしライオンを見つけたときに違うペアに見つかれば3ptあげるようなものだ。


 「あー、それは大丈夫。これからペア決めるけど、そのペアに1人10本ずつこの色のついた棒を持ってもらうから、それをそのシールの貼ってある木の下に置いてここはもう写真撮りましたって知らせるんだ。だからその棒のあるとこで写真を撮ることはダメってこと。これならいいだろ?」


 「なるほどな」


 森くんにしては考えたほうだ。


 「それで、1から4まで順位を決めて高いペアから美味しい晩ごはんを食べれるってわけだ」


 これが1番の問題点。キャンプまで来て晩ごはんは質素なものだったらガッカリする。それも夏の思い出、キャンプの思い出としてはいいのかもしれないが。


 「そういうことだから。早速くじ引きしますか」


 「待って、7人で2人1組ってなったら1人男子余るけどそれ大丈夫なの?」


 ごもっとも。


 「香月、心配するなよ。俺たちはもう覚悟決めてるんだ。もう勝負は始まってるんだよ」


 「…………」


 顔はカッコいいからまぁ名言っぽく聞こえるけど、内容はめちゃくちゃ恥ずかしいものだ。覚悟決めてるんだとか誰かのために死ぬわけでもあるまいし。


 でも1人なのはデメリットしかない。1人になることは晩ごはんを諦めることと同じであり、孤独を意味する。せっかく美少女たちとキャンプに来てるのに男1人寂しく可愛いシールを探す絵面なんて見るに耐えられない。


 なんとしてでも回避しなければ。


 「女子から引いてくれ。順番は好きに決めていいから」


 「おっけー」


 そして簡単に順番は決まって陽菜さん、流川さん、雫の順番に引いていった。そんな女子を男子は目に全てを懸けて見る。変態の目だ。何番を誰が取ったか必死に知ろうとしているのだが、誰も分かるはずがなく、鞍馬くんに関しては視力悪いくせにやっているのだから大したものだ。


 夜頃には僕も洗脳をされているのだろうか。そうなるのなら部屋を変えさせてもらいたい。


 「よし、俺たちも引くぞ……」


 森くんの掛け声で各々手に全てを込める。変態は運悪そうだから何やっても無駄だろう。しかし、この中の3人は必ず美少女とパートナーになれる。そう思えば女子側の気持ちも自然と分かる気がする。


 「順番はどうする?」


 「俺は残り物に福があるという言葉を信じる。だから最後でいいぞ」


 ここで森くんの順番が決まる。まじで残り物に福がありそうだ。


 「それなら俺は2番目に引かせてもらう。1番はハズレそうな予感がするからな」


 「俺は3番目でいい。お前の予感を信じるからな」


 「じゃ僕が1番ってことだね」


 予感なんて当てにならないと思うので別に1番でも気にせず引く。好きな紙を引けるんだ。悪いことはないだろう。


 そして僕、鞍馬くん、彼方くん、森くんの順番に決まり引くことになった。


 当たりは3つ。誰でもいい。1人じゃなければ。


 躊躇いもなく手を突っ込み勢いよく紙を取る。番号はまだ見ない。ちなみにハズレ番号は4だ。


 それから3人がそれぞれ個性あふれる取り方をしてくじ引きが終了となった。ここからが本番だ。くじ引きでこの先の思い出が決まる。濃くなるか寂しく塗られるか。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ