起床と友情
それから部屋に戻ると3人とも二度寝をかましていた。せっかくのキャンプなのにもったないと思うのは僕だけだろうか。みんなこういう大人数で遊んだりすることは良くあったりするので僕とは価値観とか感覚が違うのかもしれないな。
とはいえ予定は午前中にはない。女子はしっかりしてるメンバーばかりなので今は起きて何かしている頃だろう。さっきも流川さんとは思えない流川さんと朝から散歩をしたぐらいだ、雫と陽菜さんも何かしらルーティンをしているだろう。
はぁぁ、とりあえず僕も寝ようかな。
3人にあれこれいって自分も寝るのはおかしな話だ。でもすることがないし体力も午後にはなくなっていくだろうから今のうちから温存するのも大事だろう。寝ることで逆に体力を使うかもしれないがその時はその時だ。
動画でも見ようと思ったがイヤホンを忘れたのでやめておく。起こすのも悪い。なによりどんな動画を見てるか知られたくない。決してエッチぃやつではないことだけは確かだ。
そして蝉の鳴き声よりエアコンの音が聞こえるようになった頃、僕は目覚ましをかけて眠りについた。
――今日2度目のおはよう。そう言える時間帯に起きた僕は目覚ましを止めることもなく気持ちのいい目覚めを迎えていた。
3人はまだ寝ている。おいおいもう11時半だぞ。
どれだけ休日起きるのに手こずっているのか分かるものだ。これが怠惰というやつか。
さすがにこれ以上は迷惑をかけそうなので早めに起こすことにする。スマホを持ち、音量をマックスにする。そして適当な音楽を探して――再生。
♫〜〜
20秒経ち、最初に反応したのは鞍馬くん。
「うるさいうるさいうるさいうるさい。止めろ止めろ」
「全員起きるまで止まらないよ」
「んぁ?神代か。お前サイコ野郎かよぉ!」
なんと言われても止めない。これやる側は楽しいがやられる側はうざくて仕方がない。ブチ切れられることも可能性としてはある。
爆音で音楽は流れ続ける。鞍馬くんは枕で耳を塞ぐ。
次に起きたのはその10秒後、彼方くんだ。
「うるせぇぇぇ!」
「楓斗いい目覚めだな。俺もこれで起こされたぜ」
「なんだ神代かよ、このサイコめ」
「鞍馬くんにも言われたよ」
自覚してやってるからサイコではない。
そして5秒後、森くん。
「同じ人間が疑うぞ神代」
そこで音楽を止める。なかなかうるさかったな。
「おはよう森くん」
「おはようじゃねーよ。智たちの聞いてたけどお前サイコだって絶対」
「ごめんね、無理矢理起こして」
機嫌悪そうだが実際は悪くない。でも悪いことはしたと思うので謝る。むしろここまでして謝らないのは人としてやばい。
こうしてなんだかんだ4人全員起床となった。13時前に外に集まって昨日の話の続きをしてゲームを開始する。面白そうなゲームを考えてくれた森くんには感謝だ。
それから各々準備を始める。洗顔だったり歯磨きだったり日々当たり前にしてることを当たり前にこなしていく。ここを見るとしっかりしてる男子たちに見えるんだが言葉を発するだけでそのイメージがガラリと変わる。まぁ3人のしっかりしてるとこなんて見る女子はいないだろうけど。
そして13時前、くじを持って部屋を出る。今の時代アナログなことをするものだ。せっかくスマホがあるのにわざわざ紙で作るなんて。
外に出れば先程よりも蒸し暑さが増していることに夏の力強さを知らされる。汗が出てくるまで1分もかからないんじゃないか。
女子はもちろん僕たちより先。男子が勝てる日はこないだろうな。
「おはよう」
「おはようの時間帯じゃないけど?」
「俺たちからしたらおはようなんだよ」
「……何時起き?」
「神代以外11時半起き」
「はぁぁ……」
ほら、早起きしないと印象マイナスだぞ。雫のため息に陽菜さんと流川さんの呆れたため息も含まれていた。僕も思う。あれだけ女子と距離を縮めるって言ってるくせに空回りばかりしてるのはバカだって。
「でも理由はあるよ。徹夜でこれ作ってたから」
と、さっき急ぎで作ったくじ引き道具を見せる。見たところ5分もかからず作れそうなので徹夜なんて嘘だと分かる。
「嘘つくなよ光輝、お前昨日女子の話ばっかして夜遅くまで起きてただろ」
バレバレな嘘にさらに鞍馬くんの裏切りも混ざる。もうここに友情はないな。昨日の味方は今日の敵。いい案を聞いたとき親友のようだったのに、今ではライバルだ。なんとしてでも蹴り落としてやると顔に書いてある。やはり男子だ。
「俺はお前を許さん」
「自業自得だ」
森くんの評価はただ下がり中。これは仕方ないな。因果応報。
そんな中僕が気になるのはなによりも流川さん。森くんが評価を上げようと嘘をついたとき軽く睨んでいたように見えた。朝なら1回もなかったのに。
今は誰も睨んではないし陽菜さんと何かを話しているので笑顔もたまに見える。謎だな。
ここに来て流川さんとの距離が縮まったと思っていたが逆に広がった気もする。知れば知るほど分からなくなる。まるで迷路のように。
流川さんと友達になる人はみんな通る道か。
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