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しりとり




 休憩とはこの暑さともなると至福の時間でしかなく、冷気が体に触れるたびあぁーっとため息のようなものをつく。おじさんみたいだ。


 7人全員同じ場所で涼む。ここはリビングと言ったらいいのだろうか、詳しくは分からないが7人全員入っても暑苦しくない快適な部屋だ。それにエアコンもついてるのだから最高だ。みんなここで寝ればいいのに。


 「とりあえず18時までは好きなことするかー」


 この中で1番だらけている森くんが言う。薪集めをどれだけ頑張ったらこんなに疲れることができるだろう。椅子に体を吸い込まれてるみたいだ。


 結局流川さんのイヌシールは回収されることはなかった。森くんがそれ明日使うから返してとこの上なく丁寧に頼んだら嫌だと返され、そのダメージは見た感じなさそうに見えたのに森くんには深い傷を残したらしい。


 ここに来るまでに何度も助けてと頼まれた。助け舟はもちろんださない。いつも流川さんに出してもらってるくせにと思われるかもしれないが僕の立場になると分かる、森くんに助け舟を出していいことは1つもない。なんならこっちの立場が悪くなりそうまであるし。


 それから今に至るが、ここでただ涼んでいても面白いことはないので部屋に戻りスマホとにらめっこでもしようかと思う。


 「僕、部屋に戻ってていいかな?18時前には出てくるから」


 「それじゃ私も戻る」


 良きタイミングと思ったのか流川さんも部屋に戻りたいと言い始めた。分かる、男子のいる空間よりなるべく1人が女子がいる部屋の方がいいよな。


 全員の了承を経て僕は四人部屋、流川さんは三人部屋に戻る。他は動きたくないとか別にここでもいということで誰も戻らなかった。きっとみんなお尻がソファを離してくれなかっただけだろうな。


 そうして部屋に戻ってきた。冷房はつけてもいいとのことなのでつけさせてもらう。1人で使うともったいない気もするが熱中症になるよりかはましなので微かな遠慮とともに起動させる。


 戻ってきたのは自分の時間ができるということだが、ここに来て残り1時間ほど何をすればいいのか思いつかない。動画はいつでも見れるし……。


 帰ってきたばかりなのに戻ってみんなと楽しく話すればいいかなと思い始めていた。部屋で1人、体を大の字にして寝そべる。見えるのは天井だけ、スマホをその姿勢で見ればスマホが顔面に落ちてくる未来が見えて痛いのでやらない。


 しかしピコンという通知音に反応してすぐスマホを見る。天井は6割ほどスマホに隠れる。


 相手は流川さんだった。意外だけど流川さん以外に今メッセージを送ってくる人はいないので驚きはしない。


 『暇』


 これだけのメッセージなのになぜか僕にはどういう意味か理解できた。きっと『暇だから何か面白いことを探して』か『暇だからこの時間をなんとかしなさい』のどっちかだろう。どっちにせよ僕が何か見つけて教えなければ返信はできないだろう。


 森くんたちトリオに洗脳された下心ありの僕はどこかへ行っており、今の僕はいつもの神代閃だった。


 『流川さんなら自分で思いつくでしょ。僕は何も思いつかないし今楽しんでるから暇じゃないんだー』


 いじわるを込めて返信する。思いつかないのは本当のことでも暇じゃないのは嘘。暇じゃないならこんなに早く返信したりしないし。


 思わぬ返信がきたことに戸惑っているのか、返信がくることはない。5分経過しても。え、これ既読無視?そんなことあるの?と思い始めていた。既読はついてるのに一向に返ってくる気配はなし。


 いじわるしなければ良かったな……。


 と思っていたらピコンと一件。


 『しりとりしよ』


 これを流川さんが送っている。想像してくれ、あの流川さんがしりとりしよなんて言ってる姿を。想像だけでドキがムネムネしてしまう。これは一種の病気かもな……。


 もちろん断ることはない。しりとりなんて久しぶりだろうか、最近ではやる機会ないから覚えてはいないな。


 『いいよ』と返信して『私からいくね、しりとり』とシュールなしりとりが始まった。僕の頭の中では今、可愛いすぎる流川さんが『私からいくね、しりとり』と言っているとこが脳内再生されている。変態の域だと自分でも分かってるからやるならこれの1度きりだ。


 『りんご』

 『ゴリラ』

 『ラッパ』

 『パイナップル』

 『ルーマニア』


 定番のしりとりが続く。3文字以上で繋げると決めているのでそこは忘れない。これ決着つかないやつだとお互い思いながらも今を楽しめればそれでいいので触れないでおく。


 『飽きた』


 ときた時、しりとりの続きなのか、本当にしりとりに飽きたのかどっちか分からなくなった。だが飽きたなら秋田と返信してきそうな流川さんだから多分本当に飽きたのだろうと分かった。


 『早くない?意外と飽き性?』


 『分かんない。でも飽きた』


 子供じみたことを言うものだと、流川さんから想像できないことを聞いた。たった3往復で飽きるならなぜ始めたのか……。多分飽き性だな。


 『他に何か面白いことを探せと?』


 『暇じゃないんでしょ?なら大丈夫』


 『それ嘘って分かってるでしょ?』


 『うん。嘘ついたのはキモかったけど、暇じゃないって嘘ついてしりとりに賛成するアホらしさは面白かった』


 『ならよし』


 まぁそうですよね。暇じゃないやつが返信を爆速でするわけがない。流川さんだから爆速でしたって言えばなんとなく分かってもらえそうだけど、メンタル抉られるのは避けたいから言わない。


 言わなくてもキモいとか言われてるけど。


 直接キモいって言われたら泣いてたな。これがスマホでのやり取りで良かった。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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