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少しも見れないし落ち着けない




 夏は本格的に来てしまえば嫌われるもので、森くんの家に向かうまでの徒歩が苦に感じて仕方なかった。暑さはもっと軽減されないものだろうか。


 アスファルトには陽炎が立ち、肌には紫外線が刺さる。なるべくそんな空間から逃れたいがために前に進める足を加速させる。それぐらいしか手段がないのがつらい。


 親に連れてきてもらうこともできたのだろうが、あいにくどちらも仕事。それは蓮水家も同じだったようで今隣には暑い暑いと小型扇風機をつけて言う雫の姿がある。


 「そんな荷物、何に使うんだ?」


 背中にリュックと片手にも何かを持っている。僕はリュックだけなのでこういうときは片手の荷物だけでも持ってあげるのが優しい男だと思い奪い取る形で手にした。


 「あ、ありがとう。――これはなんとなくだよ。これいるかなあれいるかなって思ってたらこうなったの」


 「ふーん。変わんないね」


 「もちろん」


 用意周到な雫らしい。忘れ物は中学からしたことがないらしく、怒られることもなかったという。だから俺の忘れ物にも敏感で嫌と言わずに持ってきてくれるのだろう。


 迷惑をかけている。それと同時に雫と僕の忘れ物まで管理してるとなるとどれだけ優しくいい人なのかが伝わってくる。


 今は森くんの家に行っている。集合場所が森くんの家で、森パパが車で連れて行ってくれるそう。何から何までありがとうございます。


 まだ10時だからいいものの正午か午後に入ったばかりの時間帯ならもう暑さを前に敗北していただろう。真夏日、猛暑日とニュースを見れば耳にする単語がこんなにも肌にて実感するなんて。もう汗が吹き出そうだ。


 無駄な体力は使わない。だから雫ともあまり話をしないであるいている。いや、もう体力が無くなりかけているから喋らないだけなのかもしれない。


 そうして歩くこと20分、森家についた。そこにはなんだか盛り上がりを見せる人が多くいるように見えた。


 「いやー、君があの流川さんかい?ホントに可愛い子だね」


 と言うのはなんと森パパ。お父さんのほうから血を引き継いでいるらしい。なら容姿はお母さんかな。なかなか美人なお母さんだと予想ができる。


 流川さんは困りながらも「可愛くないです」と返し、顔では助けを求めていた。ごめん、僕にはどうすることもできないや。


 「おっ、最後の2人が来たぞ」


 鞍馬くんが気づいてくれて、真っ先に手招きをしてくれる。早足だったのを今度は駆け足に変更する。


 「やっほー、みんな久しぶり。いきなり参加することになったけどよろしくね。森パパもよろしくお願いします」


 丁寧に一礼する。森パパもさらにテンションが上がったのかガッツポーズしてこちらこそと1言。なぜか今1番楽しそうなのが森パパということに正直苦笑いしていた。


 まぁ美少女3人にイケメン3人いれば自然と上がるか。と、僕以外の容姿の良さに悲しくなるが現実を受け止める。


 「神代、よくやったな。お前のおかげで蓮水さんまで来ることになるなんて」


 肩を組んできたのは森くん。森くんは相変わらずこの女子が好きらしい。まあ美少女って言われるぐらいだから男子のほとんどはそうなのかも。


 「僕は何もしてないけどね」


 「そんなことないぞ。お前は意外といい役割を担ってくれた」


 「どういうこと?」


 「いつか分かるさ」


 それならいいのだが、なんかいつまでも分からない気がするのは気のせいなのか。


 「それじゃみんな来たから早速行こうか」


 「はい」


 こうして森家の8人乗りの車に乗って別荘に向かうことになった。キャンプとはいってもテントを立てたりするこたはなく、バーベキューをしたり夏らしいことをしたりするだけという。


 手間が省けるのは楽で嬉しい。簡単な作業はしないといけないだろうが、それを含めて夏のキャンプとは楽しいもの。


 車には助手席に森くん、真ん中に女子3人、後ろに残りの男子が3人座っている。女子は雫、男子は彼方くんを真ん中にして。


 冷風とともにいい匂いもするのはきっと僕の前の席が流川さんだから。美少女3人ともなれば誰が誰でもいい匂いなんだろうが、流川さんは飛び抜けていい匂いがする。


 「羨ましいな、後ろから3人の美少女を眺めれるなんて」


 変態の思考になりつつある僕を止めたのは助手席の森くんだった。後ろを向かないと話すことも顔を見ることもできない森くんだからこその嫉妬。


 「変わろうか?」


 この場所だと匂いだけで惹かれそうなので提案をしてみる。


 「無理でしょ、今運転中なんだし。そこで我慢しなよ森くん」


 「蓮水さんに言われたら仕方ない。ここにいるよ」


 雫がなぜ止めたかは分からないけど言われてみれば運転中に移動なんて危ないことはできない。でも森パパならどこかに止まってくれそうだが。


 森くんは駄々っ子ではなく意外とすんなり衝動が収まるタイプだから楽だ。いやだいやだと子供のように言われては見てるこっちが耐えられない。


 別荘まではまだ時間がかかるらしい。女子は女子で楽しく話をしている。ときどき森くんにも構ってあげてるみたい。僕たちも僕たちで楽しく話をしている。


 流川さんの笑う顔を見れるかとちらっと見てもなぜか気づかれて睨まれるのでもう車の中で見るのはやめておく。と見せかけて忘れた頃に見てもやはりだめだった。


 彼方くんも鞍馬くんも3人の方をちらちら見てはため息をつくように肩を落とす。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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