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笑った?笑ったよね?




 言いたくないことを言わされてしまった流川さんはというと、顔は多少赤くなっていたものの見間違えの可能性もあるので触れないでおく。ってか触れたらだめだ。


 「それじゃ私は仕事に戻ろうかな」


 「はい。そうしてください」


 「ははっ、嫌そー」


 最後の言葉は僕が鳳凰院さんに向けた気持ちを鳳凰院さんが感じたままに発したこと。まんま正解だったのが怖いぐらいだ。


 迷惑客の真逆、店員側が迷惑をかけてくるタイプにはめちゃくちゃ疲れる。


 「……帰る」


 ポツリと1言。まぁ、そうなりますよねと心の中で共感しておく。このまま前回のように一緒に帰ることは無理だな。また噂がたつとめんどくさいので後で帰るとする。


 「何してるの?帰らないの?」


 「え?」


 「残るつもりだった?それならなんでもない。それじゃ」


 「あっ、待って僕も帰る」


 「ん?分かった」


 こんなこともあるんだな。まさかのまさか、流川さんから誘われて帰ることになるなんて。いや、これは誘ったには入らないかな?流川さんの中では帰ることは決まっていたみたいだった。


 走って流川さんのもとに行く。エサを待ちに待ったペットのように。


 隣にいることが許されたのは大きな進歩。普通隣にいることが進歩と思うほどの人なんて存在しないから日本語としておかしく思える。でもそれぐらい流川さんの隣にいるのはすごいこと。


 「あの、流川さん――」


 「あーもう正直に言うわ。どうせまた聞かれるだろうし」


 覚悟を決めたようだ。僕が何を聞いてくるか分かっているから先に答えてやるというせめてもの恥らいしのぎ。


 「もう知ってると思うけど私は可愛ものが好きなの。だからあーやって閉じ込められてるぬいぐるみを見ると取りたくなっちゃうのよ」


 今度はしっかり赤かった。でも恥ずかしがってるんだなんて思うことはなく、ただただ共感していた。


 「分かる。僕もこの身長と高校1年って年齢だけど好きだもん。だからすごく分かるよ」


 「……ホントに?」


 「じゃないとゲームセンターなんて行かないよ。それに僕部屋を見たらきっとびっくりすると思うし」


 さまざなぬいぐるみが置いてある。音を吸収してくれるのでたまに騒いでしまう僕にはメリットだ。1番は柔らかくて気持ちいいから。高反発低反発を気分で分けてその時の落ち着ける最善のぬいぐるみを選んでだきまくらにすると最高なのだ。


 「神代がそういうの好きなの意外。どこかで頭にぶつけたの?」


 相変わらず辛辣。


 「ぶつけてないよ」


 「ふっ」


 「え?」


 「ん?」


 僕の耳は微かな笑い声を捉えた……気がしたが聞き間違いのようだ。流川さんが笑った?と思ったが本人は知らない顔。たまに幻聴がするのはやばい、病院に行かなければならないかもしれないな……。


 「絶対に誰にも言わないでね」


 「可愛ものが好きってことでしょ?言わないよ」


 「助かる」


 秘密をバラしたら強烈往復ビンタと分かっていてバラす人はいるだろうか、いや言い方を変えよう、美少女の秘密を知ってる唯一の男としてバラす人はいるだろうか。いるかもしれないが少数派で僕は絶対にバラさない。だってメリットないでしょ。


 「それよりまた一緒に帰ってよかったの?」


 「なんで?」


 「ほら、いくら誤魔化せるとはいえ噂になるとなかなか収まらないじゃん」


 「その時は友達ですとか適当言っとけばいいんだよ」


 まだ友達として認めてもらえてないのは悲しいがもうここまできたら逆にすれば吹っ切れて友達になってやると燃える。


 ってか友達って言ったらそれはそれで問題になる。僕が男子に拷問されるだろうし、流川さんの周りも荒れるだろうな。なんであんな冴えない男となかよくなったの?もしかして弱み握られてるの?なんてありえないことを言われる未来が見える。


 「そういえば流川さんに男子友達っているの?」


 今までずっと唯一無二の存在と思っていたが、本当はそんなことなく裏でいたりするかもしれない。公表してないだけとかね。


 「いるよ」


 ほらねぇ!なんでこんなことだけ勘は当たるんだよ!


 「まじ?!めっちゃ意外」


 「うん。普通に嘘だけど」


 いや、嘘かい!え、なんで冗談言ったの?もう冗談言える仲なら僕が友達でいいじゃんか!なんて思っても顔には出さないから内と外でギャップがすごいことになっている。


 ギャップ萌えする女子またはギャップが激しい人がタイプな女子の皆さん、今の僕はギャップすごいので交際のお申込み待ってます。いや、僕のクラスにはそんな人いないか。


 ツッコミボケが交差するのは僕の頭の中だけ、現実ではニヤニヤしていた僕を冷たい目で見る流川さんだけが視界にいた。


 「たまにキモいよね。やめたほうがいいよそれ」


 「……はい、すみません」


 これも含めてのコントをしてたんだと思えばなんともない……こともなく少し恥ずかしい。


 それから歩くこと10分?感覚では10分もなかったが。僕と流川さんの分岐点についた。その間の辛辣な流川さんといったら僕の心を抉る抉る。まじですごかった。


 「じゃここで」


 「うん。今日は……なんていうか……濃かったね。誘ってくれてありがとう」


 「こちらこそ。このお礼はいつかするから」


 「待ってるよ」


 「うん。じゃまたね神代」


 「また、流川さん」


 やっぱり名前を呼ばれるのは嬉しい。心臓の鼓動が高鳴るのを感じる。言う側が流川さんじゃなければこうはならないだろうに。


 そうして帰路につきながら先程までの1日を振り返りながら笑みを浮かべては、キモいと言われたのを思い出し、それでまたニヤッとする。傍からみたら気持ち悪いが人に見られることはなかったのでまだよかった。


 次流川さんと会うときまでに何とかしないとな。いや、それ明日までにってことやないかい。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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