出会い その1
暗い暗い森の奥深く
カラスが甲高い鳴き声をだし、空を飛び回る。
その場に一番似合わない者がいた。
暗い森の中を照らす月のように輝く金色の髪、淡く白い肌に宝石の様なルビー色の瞳。
そして、もっともこの森に相応しくない
煌びやかな金や宝石をあしらった赤いドレス姿の令嬢が原因なのだ。
カラスはその令嬢へ
「カエレ!カエレ!」
と鳴きながら上空を旋回した。
しかし、令嬢は怖がりもせずカラスを見つめていた。
カラスがふたたび鳴こうとした時
「ねぇ、あなたは魔王の手下??」
カラスは質問には答えず
「カエレ!カエレ!!」
と繰り返した。
そんなカラスの姿を見て令嬢は
はぁと小さくため息をついて
「カラス程度じゃ、ろくに言葉も理解できない、話せないわよねぇ。」
腕を組み、カラスを見上げながら嫌味を言った。
「なんだと!?俺を誰だと思っている!!俺ほど素晴らしい使い魔はいないんだぞ!!」
カラスは令嬢の元に降りていき、けたたましく鳴いていた。
そんな姿を見た令嬢は手で口元を隠しながら笑って
「あら、そうなの?そんな風には見えなくって。失礼したわね。私の質問が分からなかったと思ったのよ?」
嘲笑うような言い方をされたカラスは腹を立て
「貴様のような弱い人間がいていい場所ではない!早くカエレ!!」
先ほどよりもけたたましく鳴き、高く飛び上がり令嬢の上を旋回したが、令嬢はカラスを無視して森の中を歩き始めた。
「クソ!なんなんだ、この変なニンゲンは……」
カラスはブツブツと文句を言い、周りを飛んでいる仲間のカラスに
「俺は1度城に戻り、報告してくる!アイツを見張っててくれ!」
仲間のカラス達は
"カー、カー"と鳴いて返事をした。
そんなカラス達のやり取りを令嬢は冷静に観察していた。
とりあえず、見張り番を任されたカラス達は令嬢の上を飛び回っている。
令嬢は喋れるカラスが向かった方向を見つめ
「あそこに、魔王が…」
そして、令嬢は煌びやかなドレスを引きずりながら、カラスが向かった方向へ歩き出した。