表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

枯れる心

作者: 春風 月葉

 不機嫌な空を眺め、泣きたいのはこっちだと思った。次の瞬間、ピシャッと空がうるさく光る。どうやら反論を許す気はないらしい。こういう誰にも会えない日ほど、誰かに会いたくなる。

 誰かが隣にいてくれることが当然であった頃のことを思い出す。当たり前を失ってからどれだけの時間が経っただろう。今の暮らしには慣れることができても、孤独に慣れることはできないままだった。

 変わらない世の中を憂いて眺めた空は時間に合わせて姿を変えた。真っ暗な夜空、星の輝きは私には眩しすぎた。不意に一つの星が夜空を流れ落ちた。それを追うように、真似るように、私の頬を涙が流れ落ちた。

 冷たい肌に涙の通り道が微かな熱を残す。私の中にあったのは安心だった。他人の温度を忘れ、言葉の使い方を忘れてもなお、孤独な境遇に涙できるだけの人間らしさがあったことは救いだった。

 その瞬間、私の中から人間らしさが一粒流れ落ちたことに気が付いた。私の表情は青ざめた。涙に人間らしさを感じたのであれば、私の中にはあと何滴の人間らしさが残っているのだろうか。考えるほどに恐ろしくなった。

 嫌だ。人間でいたい。私でありたい。そう思うほどに涙は勢いを増して次々と流れた。

 ついに涙は枯れた。渇いた心では孤独を潤せない。夜空に星の姿は見えない。ぽつり、ぽつりと降り出した雨は街明かりに照らされ、まるで星のようだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ