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僕の麗しき箱庭  作者: まくのゆうき


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屋根と簾

はっきり言っておこう。

この家の屋根は腐っている。

長年雨ざらしにされたのだから当然かもしれないが、支えている木のいたるところが水によって浸食されていた。

それは乾かせば再利用できるというレベルではない。

屋根の大部分を占める板のようなものは、所々空いている穴に向かって水が流れる際、そこに水が集まり少し重くなっただけで、その部分が大きくヘコむレベルである。

いつか屋根ごと落ちてくるかもしれないし、雨の後、掃除をしていたら落ちてる木くずのように、少しずつ削れることで、下敷きになることは免れることができるのかもしれないが、補強で耐えられるとは思えない。

辛うじて家を支えている柱や梁となっている木は、太いからもう少し頑張ってくれるかもしれないが、どちらにせよ劣化していることに変わりない。

少し触っただけでその表面が木目に沿って裂けそうになるのだ。

子供の僕が力を入れて握っただけで細く削れるので、何かをぶつけたり、金具を打ち込んだりすれば、もっと大きくえぐれてしまうかもしれない。

少ない材料で部分的に補強しようとすれば、家の土台ごとダメにする可能性もあるということだ。

そしてそれは壁も同じ。

だから僕は大きい木に関しても隙間を埋める際、立て掛けることを選択せざるを得なかったのだ。

しかしこれでは雨ざらしの生活を改善することはできない。

僕は頭を悩ませながら、ひとまず拾った枝をツタで結び、縦長の不格好な簾の長さを伸ばすことしかできないのだった。



「なあ、こんなもん作って何に使うんだ?柵にでもするのか?使わないなら薪にしたいんだが……」


父親がそう言って端に寄せてある枝の塊の一部を掴んで持ち上げた。

しっかり縛ってあるものの、真ん中を雑に持ち上げたら縛った部分がほどけたり、ゆるんだりしてしまう。

材料は落ちている枝と採集したツタだ。

ツタだって長さが足りない部分は途中をつないでひも状にしているし、落ちていた枝だってそんなに太いものは残っていない。

太さや面積のあるものはすでに壁の隙間を補強するために立てかけたりして利用しているのだ。


「ちょっと、雑に扱わないでよ。壊れるから」


僕がむっとしたように言うと父親は呆れたように言った。


「だけどな、うちは狭いから、こんな使い道の分からないものを部屋にずっと置かれても困るんだよ。しかもこんなに積み上げて……」

「家の中で使うつもりだからいいんだよ」


当初、この簾を長く伸ばして屋根の木材部分を覆ってしまえないかと考えていた。

それを外ではなく中の梁や柱を使って行い、その簾のかかった部分を藁のようなもので補強したりすることで当面の雨漏りを防ぎたいと思っていた。

簡単にいえば、この家の床面積の一辺を超える長さの簾を作り、屋根の上からかけるイメージだ。

だがこの簾、その長さまで作ったらかなりの重さになる。

子供の僕の体重を上回る可能性だってあるのだ。

そんなものどうやって一人で持ち上げて作業に使うつもりだったのかというと、梁に引っ掛けて井戸の水をくみ上げるのと同じように引き上げるつもりだったのだ。

引き上げてしまえば、後は少しずつ柱や梁を支えに使いながら広げるだけだからそんなに難しい作業ではない。

しかし、僕が乗っただけで軋むような状態で考えたように簾を引き上げれば、梁をダメにしてしまうかもしれないし、仮に簾をうまく広げられたとしても、その上に藁などを乗せて重みが増えたら、柱や梁がその重さに耐えられないかもしれない

そもそもこの簾だってそこまで丈夫なのかと言われたら疑わしいものだ。

だが、ないよりはいいだろうと考えていた。

ところがその予定は大幅にくるってしまっている。

材料を集めてただひたすらに長さの伸びているこの簾は、本当のところ使い道がなくなってしまっていた。

だから今では、ただ何となく意地になって作り続けているだけである。


「まあ、そこまで言うならもう少し待つけど、何を作るのかちゃんと説明できるようにするか、早く完成させてくれ」

「わかったよ……」


僕があいまいにしているため、父親には何となく作っているものと認識されているらしい。

図星だが、少し悔しいので絶対に無駄にはしないと僕は密かに誓った。



父親から柵と言われ、この無駄に長く積み上がったいくつかの簾の中でも一番横幅のあるものを縦にして使用した場合、どうなるのかを考えた。

そもそも簾というものとして作っていた僕に、その発想はなかった。

違う視点から見れば、そういう風に使うように見えるのかとむしろ感心してしまったが、それを表に出してしまうと、本当は使い道がないということが父親に知れて薪として火にくべられてしまうかもしれない。

火にくべるなら使う分の枝を取り出すためにはツルの部分を切ればいい。

まとめられているので運びやすいし、縛って束ねられた状態の枝も、縛ってしばらく経って完全に乾いたツルも、さぞよく燃えることだろう。

一度そう使われるようになってしまったら、今後同じようなものを作った時に、やはり燃やされてしまう可能性が高い、できればそんな前例は作りたくない。

僕は頭から簾が燃やされてしまうかもしれないという不安を追いやって、改めて柵について考えることにした。

数か所を縛ってある簾は確かに縦にしても崩れることなく立っていてくれそうである。

多少の横のでこぼこなら、立てた時に下にした部分に合わせてうまくずれてくれるだろうから、立たないことを心配する必要はなさそうだ。

そして立てた時の高さだが、一番横幅のあるもので一メートル弱くらいだろうか。

おそらく僕が小さくうずくまったら隠れられるくらいの高さしかない。

広さは簾の長さの分なので、いくらでも広くすることができそうである。

僕はこれから一番横幅の広い簾につなぐ予定の枝を縦にしたり横にしたりしながら、色々と使い方に関して構想を練っていった。

しばらくそうして考えているうちに僕は一つの結論に達した。

父親に言った通り、室内で使い、自分たちができるだけ雨に濡れないようにする方法だ。

せっかくなので試してみたいとは思うものの、結構大がかりな準備が必要である。

ぶっつけ本番になってしまうのは仕方がない。

せめてそれまでにもっと広いスペースを守れるようにした方がいい。

僕はいずれやってくるであろうその日に備えて、一番横幅のある簾の長さを伸ばそうと、作業を始めるのだった。

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