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僕の麗しき箱庭  作者: まくのゆうき


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パーツ工房見学の報告

パーツ工房に出向いた翌日。

親方に真っ先に声をかけようと僕は家を早く出て工房に向かった。

両親にはあまりにも早く出かけようとしたので驚かれたが、それだけ伝えたいことがたくさんあるんだと言うと納得して送り出してくれた。

僕が工房につくと、早い時間にもかかわらず、親方はすでに仕事を始めていた。

本当は工房が開いていなかったら外で待っているつもりだったけど、その必要はなかった。

幸い他の職人はいない。

僕は工房の入口から声をかけて親方の元に向かった。


「おはようございます!親方!昨日行ってきました」

「おう、そうか。……それにしてもずいぶん早いな」


親方は僕が来たので、もういい時間なのかと思って外に目をやって、正確な時間を把握し、僕が早く来ただけだと察したようだ。

でも僕は早く親方とパーツ工房の話をしたかったし、この話を聞かれないよう兄弟子たちに配慮したつもりだ。

残って話してもいいけれど、僕が残っている時点で兄弟子たちは不審がるだろうから、早く来て話をするのが一番という結論に至った。

僕は親方にそう説明すると、親方は唸り声を上げた。

僕の配慮がちょっと複雑なのだろう。

僕は親方が唸っているのに構わず、まずは工房からの伝言を親方に伝えることにした。

雑談より伝言。

僕がこの話を伝えているところに兄弟子たちが来ると、僕が自分の家のためのパーツを工房の名義で見に行った事がばれてしまうし、パーツの話を初めて伝え忘れるのもよくない。

これさえ伝えてしまえば、僕は役割を終え、満足いくまで親方と話をすることができるし、兄弟子たちが来て途中で話を終えても問題なくなる。


「あの、工房の方が、親方にくれぐれもよろしく、思ってたより早く立ち直ってくれてよかったって伝えてくださいってことでした」

「ああ……。心配掛けちまったからな。わかった。……ってか、お前最初に言うのがそれか」


僕のテンションの高さから、早速感想とか家の構想の話が出てくると構えていた親方は驚いてそう言った。


「パーツ工房で色々見せてもらって、パーツまで触らせてもらって楽しかったです。ちょっといいかなって思う組み合わせとかもあったし。だから、この話を始めたらきっと止まらなくなっちゃって、伝言を伝えるのを忘れそうだから、先に伝えてすっきりしようと思いました」


僕が素直にそう言うと、親方は大声で笑う。


「はっはっはっ。なるほどな。伝言は確かに受け取ったぞ。で、いいと思うものがあったんだな」

「はい」


それで、僕がいいと思うものを伝えて、親方と話して相談して、と、意気込んで話始めようとした僕に親方が言ったのは一言だけだった。


「んじゃあ、それを覚えておいて、お前の家に入れればいい」


家の配置が決まったら教えてくれと言われていた僕は拍子抜けした。

家の一部を決めるということは、当然配置に関係することだ。

常に報告した方がいいだろうし、よりよいものを作るためには相談も必要だと思っていたからだ。

けれど親方は好きにしていいという。


「どんなものか聞かないんですか?」


聞かれない事に不安を覚えた僕が親方に尋ねると、親方は意味が分からない様子で眉間にしわを寄せた。


「自分がいいと思ったものを使うのが一番だ。ああ、ドアの位置と向きで家の配置は変わるけどな、パーツの組み合わせまでやって考えたってんなら、それは内装の話だろう?そのトイレにしたいなら、その配置のトイレを置けるように家を合わせりゃいいだけだ。そもそも、大きさは変わらねぇし、変なもんを選ばせる工房なんざ紹介しねぇ。安心して好きなもん選べるとこだから一人で行かせたんだ」


子供である僕にですらいい対応をしてくれる工房だなとは思っていたけれど、最初から親方は僕が一人で行っても問題ないところだから紹介してくれたらしい。

確かに子ども一人で行けば、冷やかしだろうとあしらわれたり、大人に強要されて高い商品の購入を強要されるようなこともあるだろう。

親方があの工房がそういうところではないし、ちゃんと要望を聞いてもらえるだろうと判断して僕に勧めたのだという。



「わかりました。あの、ひとつ質問なんですけど……」


僕は親方の配慮に感謝しながら、どうしても気になっていたことを聞いてみることにした。家のトイレについては正式に依頼する時に最終確認をすればいい。

たぶん内装ではなくトイレのドアの位置の確認になるだろうから、それは親方がさっき言った通り、家のどこに配置するかを決めてからドアを考えるか、ドアに合わせてトイレを配置すれば解決する。

でも僕の頭に浮かんでいたのはそこではない。


「何だ?」


親方に促された僕は、工房で見せられた床の話をすることにした。


「工房で床のパーツを見せてもらったんですけど、子どもやお年寄りが使うのに段差をどうにかしたいって悩んでいました」


僕がそう切り出すと、親方は工房の人と同じように期待の目を向けてきた。


「で、お前にはアイデアがあると?」


親方にそう聞かれたが、残念ながら僕も、あの中で解決する方法が浮かんだ訳ではなかった。

むしろ親方にアイデアがあるなら教えてほしいと思っているくらいなのだ。


「いえ、あるようなないようなって感じなんですが、もしそうできるなら、そうした方がいいのかどうか悩んでいます」

「中途半端な答えだな。どうしたいんだ?」


歯切れの悪い言い方をする僕を珍しそうに見ながら親方は言った。


「そういうものが必要になるかもしれないのなら、家全体をそういうものにしたいなって思ったんです」


実はトイレの中だけでは解決できなくても、家の一部もしくは全体をそういう構造にすればいいのではないかという考えが浮かんだのだ。


「家全体?」

「はい。ただ、トイレに合わせて、家の造りを今までにないものにするというのはどうなのかなって思ったりもして……」


今までにない家の造りと言ったが、この世界での僕の行動範囲は狭い。

だから、もしからしたら、すでに僕が思い描いているものを考えて、形にしている人がいるかもしれない。

僕よりも知見の広い親方なら、もしそういう家が既に存在しているのなら、僕の希望を取り入れて形にするためのヒントをくれるのではないか。

そう考えた僕は、思い切って自分のアイデアを親方に話すことにしたのだった。

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