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僕の麗しき箱庭  作者: まくのゆうき


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妥協と衛生面

親方から細かい説明を受けた僕の頭の中は興奮していた。

奇声を上げたり奇怪な行動をとったりはしていないはずなので、外からは見えていないと思う。

でも僕は帰りながら家の事を考え、頭の中を必死に整理していた。

実は親方に相談する前から、僕の中に全くアイデアがなかったわけではない。

だけどどうしたら実現できるかわからなかったのだ。

けれどすでにこのアイデアの中で採用できないものがいくつかできてしまった。

このアイデアは僕の頭の中にだけしかなかったので、両親もまだ知らない。

だからなかったことにすれが問題ないだろう。

期待させて実現できなければがっかりさせてしまうだけなので、僕の家のイメージはあまり二人に伝えていなかったのだ。

今回はそれで正解だったと思っている。



そんなわけで排水の仕組みと、この世界での家の構造を少し理解した僕は、とりあえず諦めるものとそうではない物を頭の中で仕分けすることにした。

まず、屋上に庭園と水タンクを設置するのは諦めることにした。

本当は屋上に家庭菜園も作りたいとも思ったのだが、親方から聞いた家の建築事情を考えたら厳しそうだ。

僕が可能ならばやってみたかったのは、屋上に花壇のように区切った場所を作り、土を入れておいて、そこでちょっとした野菜なんかを栽培することだった。

残念なことに、家庭菜園のための種などは近くの市場で手に入らないのだが、森の果実を食べれば種が手に入るし、芋などは土壌を選ばない強いものなので、半分に切って埋めておけば勝手に育ってくれる可能性がある。

農家ではないので基本放置だが、季節さえ間違えなければ、きっと何かしらの物を育てる事ができるし、育ったものを収穫できるようになれば食費の助けになる。

森で採集したり市場に行かなくても、家の屋上で収穫したものを食べることができると考えただけで気持ちは随分と楽になるはずだ。

上手くいく保証はないけれどやってみる価値はある。

僕はそう考えていた。

でも、親方に教えてもらった造りにしなければならないのなら、重量を軽くする必要がある。

家庭菜園をするとしても、家の屋上というのは無謀だ。



そしてもう一つ、作りたかったのは水のタンクのようなものだ。

これも重さの問題が出てくる。

土もそうだが、たくさんの水も重たい。

まず、菜園と同じように、家が重さに耐えられるのかという点も大事なのだが、それだけではない。

僕は屋上に菜園と水を貯めるタンクの役割をするものを、屋上のスペースを半分に区切って造るつもりだった。

そしてわざわざ水のタンクを屋上に作ろうと思ったのには理由があり、一つは屋上ならば雨水が容易に貯められるので、生活用水を井戸まで汲みに行く回数を減らせると考えたこと、もう一つは水は上から下に流れるのだから、タンクから水場に水が流れてくるようにできれば水道のような設備ができるのではないかと思ったからだ。

だが、雨水に頼ってタンクに水を貯めるということは、タンクに入っている水の量は一定にならない。

だから屋上を半分に区切って、その半分にだけ水を保管するタンクをつけたら、水の量によってバランスが崩れて家が傾くかもしれないのだ。

それに土だけでも重たいのだから、導入するにしても慎重にやらねばならない。

水と土が天井から突如落ちてくるなんて家の中で土砂災害に合うのと同じだ。

常に土と水の重さのバランスを気にして生活するなど、疲れるだけで休まらない。

新しい家にそんな気苦労は不要だ。

それに基礎や土台のようなものが付けられないことは親方が教えてくれた。

この世界の家は板の上に乗せて浮く状態でなければならず、それが覆る事はないのだから、これは諦めなければならないだろう。



今までは水にはたくさん悩まされてきた。

井戸から汲み上げて甕に貯めるのも、雨漏りで風邪を引いたり眠れない夜を過ごしたりするのも、全て水に関係している。

だから僕は新築の家に貯水システムを導入しようと決めていた。

同時にやりたいのは濾過だ。

しかし、石や炭などを重ねた濾過装置をつけると家が重みに耐えられなくなる可能性がある。

新築で家が潰れては意味がない。

僕は建築の勉強をしたことはないけれど、水が重たいことくらいはわかるし、貯めた水を一気に浴びる方が大惨事になることくらいはわかる。

水の濾過や流し方、貯め方はよく考えたほうがいいのかもしれない。




その他、僕が力を入れたいのは衛生環境だ。

過去、当たり前のようにあったものがない、そんな生活に慣れてしまっているけれども、それがいいとは言えない。

不便なのは仕方がないが、衛生環境に関してはあまり妥協したくない。

僕個人のこだわりというのもあるが、一番怖いのは病気の類だと思っていて、今のところ何とかなっているけれども、感染症などがいつどこで起こるか分からないのが不安なのだ。

僕の知る限り、ここの医療は充分ではない。

それに加えて、僕たち貧困層は医者に払うお金を工面できず、診療を受けるのが難しいと考えていい。

正確に言えば、僕も両親もしっかりと倹約しているので、本当に大変な時、医者を呼ぶくらいはできると思う。

そのお金が工面できる器量がなければ、借金をして新築の家なんて建てることができない。

返せる見込みがあると判断されているからこそ借金ができるのだ。

けれど、医者にかかるにも限度はある。

何度もというわけにはいかない。

それに採集日に参加している僕と父親は特に森で怪我をするリスクを背負っている。

もちろん注意をして行っているし、今まで大きな事故や怪我をした事はない。

けれど相手は獰猛な動物だ。

いつどうなるか分からないし、気を付けたからといって防ぎきれるとは限らないのだ。

でも感染症は違う。

確かに完全に防ぐのは困難だ。

けれど予防の効果は過去の生でしっかりと学んだし、実際自分は大きな感染症にかかった記憶がない。

そして、ここがどんなに違う世界でも、感染症のようなものが存在しているのだから、同じように対策をすることは可能のはず。

だったら予防ができる感染症対策だけは、できる限りしておきたい。

衛生環境の向上はその一環なのだ。

両親にその習慣はないかもしれないが、せめて僕だけでも元気なままでいられるのなら、両親が病気になった時にサポートすることくらいはできるだろう。

それに元々両親、特に母親は汚れたらすぐに手を洗うような習慣を持っている。

だから場所を増やして環境を先に整えてしまえば使ってくれるに違いないと僕は思っている。

それならば家を作る時にそれを作ってしまえばいい。

最悪使われずただのお飾りになってしまっても仕方がない。

少なくとも僕が生きている間は使うのだから両親が使わなくても問題ないだろう。


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