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僕の麗しき箱庭  作者: まくのゆうき


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僕専用のナイフ

森に行く術を身につけた僕は、一人で森に行くようになった。

最初は森に入っても木の区別や場所の区別が付かず、どうなることかと思っていたが、何度も同じ道を歩いているうちに、木のひとつひとつの特徴や、歩いた距離などで何となく目的地にたどり着けるようになっていた。

それに遊びに行く時、僕たちは遊び道具を持って行くわけではない。

遊びに必要な道具はその場で作ったり入手したりしている。

子供たちと森へ遊びに行くうちに、どのような植物がどこに行けば手に入るのか、木の枝の拾いやすい場所はどこかなど、遊びながら色々なことを覚えていくことができたのだ。



先日父親が割れてしまった鏃を僕にくれた。

この住環境を少しでも良くするための材料の調達のことなども含め色々考えていたが、僕はこの鏃で自分の考案した武器と工具を作ってみる決心をした。

道具を作る時は一人の方がいい。

変に色々できるところを見られたら何を聞かれるか分からない。

僕は誰にも見つからないよう、朝早い時間に河原へ行き、父親にもらった鉄をまとわせた石を、固く平たい大きな石に擦りつけて形を整えることにした。

案の定というべきか、芯となっていた石がむき出しの部分はどんどん削れていく。

この石は、形だけで選ばれたものなのだろう。

家が買える値段で販売されていることを考えると、販売した人、鉄をまとわせる加工をした職人、石を卸した人は、この石の脆さに気がついていたに違いない。

そしてこれを買った父も、わかっていたのだ。

だからもったいないとは言っても、不良品とは言わなかった。

ただ、もう少し長く使えることを期待したのに、大物を狩ることになり、獲物と引き換えに早く壊れてしまった、それだけのことである。

この生活が妥協の上に成り立っているので仕方がないのかもしれないが、元引きこもりっぽい記憶しかない僕でも、もう少し上手く世の中を渡るべきだと言いたくなるレベルだ。

この世界、誰もが学べる場所はない。

だから這い上がるのに必要なのは知識なのだろう。



石を研ぐ作業は、残念ながら一日で終わらなかった。

そのため僕は数日かけて二つの欠片を持って河原で研ぎ続け、形を整えた。

大きい方の石は削ると大人の握りこぶしくらいのサイズになった。

これはもとの形を一回り小さくしたもので、槍のように先を尖らせてある。

違うのは、柄をつける部分を作らず、父親が柄を紐で縛るためにつけた窪みを広げ、そこに紐を落ちないようにくくりつけられるようにしたことだ。

これで紐をつけて振り回すことができれば、攻撃の際、紐の長さの分だけ動物との距離が取れるはずである。

それに柄につけるために棒の太さに合わせて細くしてしまうと、その部分だけもろくなる。

柄をつけたところで補強できるようなものではなく、力が加わったらそこから割れてしまうと僕は判断したのだ。

ただし、紐をつけて別の物体にぶつかって破損したり、動物に刺さったとしても回収できない可能性が高いため使い捨て覚悟で使う必要がある。

せめて必要なものにぶつけられるようにならなければもったいない。

あとで紐を探して別の石で振り回す練習をした方がいいだろう。

僕は大きい石をカバンにしまった。



次は小さい石だ。

小さい石は子供の僕の親指くらいのサイズだ。

僕がこの石にこだわったのには理由がある。

この欠片、大きい石の表面がきれいに取れたようなものである。

そのため片面がほぼ鉄なのだ。

上手くやれば使いやすいカッターナイフのようなものが作れると考えた。

さすがに肉を切るような大きなナイフにはできないが、それならば細かい細工ができるようなナイフにしてしまえばいい。

それに小さく切れ味のよい物の方が、大きいナイフよりもち運びにも便利だし重宝する。

この生活において、切れ味の良い刃物は貴重品なのだ。

買えなくても代用品を作ることができれば、この先、様々な加工の役に立つだろう。

握るための軸も、きっとこれで作ることになるに違いない。

完成品を思い浮かべながら、僕は思わずにんまりとしてしまった。

水面に自分の顔が写ったのを見て、すぐに外だということを思い出したが、周りに人がいなくて本当に良かったと思う。

こうして小さいかけらは薄く磨かれていき、一辺だけが鋭利なカッターの刃のような仕上がりになった。

僕はこの鋭利な部分の完成度に満足し、この作業を終えると次はこの刃に相応しい軸の材料を探すことにするのだった。



石の加工が終わると、河原から今度は木の多い森の方に僕は足を進めることにした。

河原と違って、奥に行けばいくほど森は迷いやすい。

大人もいないので大きい通りから遠くに外れることはできないが、僕はできるだけ手に馴染む硬めの小枝を探して歩くことにした。

これは本当に運しかない。

僕はひたすら落ちている小枝を拾っては握ったり、実際に刃を使って思い通りの形に加工できるのかを確認したりしながら、よりよいものを探して歩いた。

加工は家に帰ってからやるつもりだ。

森で作業して失敗したら次を探すなど効率の悪いことはできない。

僕は自分が加工できそうな小枝は全てストックして持ち帰ることにした。

選んでいるのは少し太い鉛筆くらいのサイズの枝だ。

十本や二十本持ったところで鞄にさえ入れば邪魔にはならないし重いものではない。

僕はこうして枝を拾い集めると、誰にも見つからないよう気をつけながら暗くなる前に家に戻るようにするのだった。



部屋の隅で刃の部分と軸の候補となる枝を広げると、僕の創作意欲がものすごく掻き立てられた。

早速一つ目の枝を試しに加工してみようと、完成した刃の部分で木を削ってみる。

そうするとやはり、非常に危なく、持ちにくく、使いにくい。

怪我だけはしないようにと注意されていることもあり、僕は手を切らないように丁寧に一つ目の枝の表面をできるだけなだらかになるよう削り始めた。

この作業は何となく昔、小刀で鉛筆を削る練習をした時の感じに似ている。

表面にささくれや、鋭利な部分がなくなったことを確認した僕は、今度は軸に刃を取りつける部分を作ることにした。

刃を取りつけるために中央に切り込みを入れて挟むようにした後、挟んだ枝の部分に紐を巻きつけて固定するのだ。

例え枝の表面がきれいに加工できてもこの作業の時に枝が完全に縦に裂けてしまったり、うまくはめこめない状態になってしまっては意味がない。

一階ではうまくいかないかもしれないと思って予備の枝は調達してきているものの、手間を考えたら一発で決めたい。

まずは早くこの小さい刃をカッターナイフのような形にしたかった。

もし不安定でも軸があるもので加工すればもう少し安全に早く作業が進められるに違いない。

僕は一つ目の枝に慎重に縦の切れ目を入れ始めた。

幸い、この枝は裂けることなく思い通りに削れていった。

そして僕は何度も刃を当てては細かく切り込みのサイズを調整し、自分でも驚くくらい、この刃にぴったりのサイズの切り込みを入れることに成功した。

紐を巻いていないのに試にとはめこんでみた結果、くいこんで抜けなくなってしまったくらいだ。

それでも抜けてしまっては困るし補強の意味も込めて、僕は切り込みの周辺に紐を巻きつけて固定した。

試しに予備の木を軽く削ってみると、なかなか作業がはかどりそうな感じである。

それに握った感じも悪くない。

今度は紐を切ってみた。

こちらも何度もこすりつけなくても刃の方向に力をかければサクッと切れる。

自分が想定していた以上に良いものができたかもしれない。

僕は思わずガッツポーズをした。

そしてこれは人がいるところではできるだけ使わない、僕専用のナイフとして大事に持って歩くことに決めたのだった。


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